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森と林業と田舎の本

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2021/12/26

在りし日の林業『新山姥物語』

先月、栃木に行って世話になった帝國造林株式会社。実は山を案内してもらうだけでなく、1冊の本をいただいていた。

新山姥物語~林業経営ありのまま』。現社長・植竹雅弘氏の母親、植竹佳恵さん(故人)の本である。自費出版だろう。

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これが面白い。東京生まれの完全な町っ子だった佳恵さんは、学生ながら見合い結婚で植竹家に嫁ぐ。お相手は8歳年上の秀雄氏だ。もっとも義父は国会議員を務めていて家族は東京住まいだった。そして卒業後に栃木那須塩原黒羽町に移る。それが何年だったか正確には書いていないが、昭和30年代のよう。1957~8年ではないか。それから3人の子育てを続けるが、手が離れると、何かがしたい、でも会社の事務はごめんだ、それなら山仕事をする……となっていく。夫も大賛成。ここがすごい。そして山に通い始めるのは、おそらくアラフォーになってからだろう。昭和40年~50年代である。

それからのことが、この本に書いてあるのだが、日本の林業にとってはもっともよい時代だったのではないか。最初は、ひたすら番頭と山廻り。所有山林を見て歩き、標識を設置し、やがて間伐などの選木を覚え……と淡々と書いてあるのだが、それが軽妙な語り口で読ませる。山里の暮らしや従業員のこと、仕事をやらせる立場ながら、自ら枝打ちを手がけ、また立木取引に丸太の出荷にも立ち会う。夫は口出ししない。

そして平成元年に社長に就任するのである。夫は元気なのに、なぜ譲ったのか書いていないが、妻の実力を認めたのだろう。
その後、大雪害にあったり山火事に見舞われたり……と苦労もするが、山仕事の楽しさ・山林経営の醍醐味を感じさせる。

記憶に残る特殊な事情としては、戦後のどさくさに、沢沿いの土地に勝手に入植した家族が何軒もある話。農地も拓き、じわじわ山林も浸食していくのだが、農地解放と同じで、国も認めていたという。ようするに食えない国民を開拓に送り込む状態だ。民間の山なのだけど。結局、世代が代わって山の中に人は住まなくなり、放棄されていくのだが、それを買い戻すのも仕事だったという。

平成に入ると、林業もなかなか厳しい時代に入る(バブル景気もはじけた)が、それを乗り越えていく様子は何かと楽しそう。執筆時は林業にかかわって35年とある。70歳ぐらいだろう。

木を育てる仕事は「子育てにも通じ、案外、女性に向いている」とか「時はゆったりと廻っている」から「気を揉まずにじっくり構えていられる」とある。そしてこのごろは「大変ですねえ」と憐れみの眼差しでみられるようになったとか。

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あとがきが、また読ませる。森を放棄したらどうなるか。一方で「補助がなければ成り立たない事業など、とても業とは言えない」とある。

古きよき時代の林業とも言える。が、今に続く林業の一時代、一地方の記録として読んでもたくましい。

 

さて、今年はこれぐらいにしておきましょうか。

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書評・番組評・反響」カテゴリの記事

コメント

田中アッツオ!!!様

やはり、アッツオ様は苔ですね。それもデリケートでとても自由な。。。センサー部の事ですが。
中身は、、、複雑で、長けていて、情報収集もアンテナの咀嚼力も。見事です。まあ地にはついていない、やはり「苔」ですね。
今年一年も本当に感謝しています。これからも縛られず自由闊達に進化する洞察力を片手に拝読させて頂きます。 
よいお年を

TETU

田中アッツオ!!!様

やはり、アッツオ様は苔ですね。それもデリケートでとても自由な。。。センサー部の事ですが。
中身は、、、複雑で、長けていて、情報収集もアンテナの咀嚼力も。見事です。まあ地にはついていない、やはり「苔」ですね。
今年一年も本当に感謝しています。これからも縛られず自由闊達に進化する洞察力を片手に拝読させて頂きます。 
よいお年を

TETU

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TETU

田中アッツオ!!!様

やはり、アッツオ様は苔ですね。それもデリケートでとても自由な。。。センサー部の事ですが。
中身は、、、複雑で、長けていて、情報収集もアンテナの咀嚼力も。見事です。まあ地にはついていない、やはり「苔」ですね。
今年一年も本当に感謝しています。これからも縛られず自由闊達に進化する洞察力を片手に拝読させて頂きます。 
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