Y!ニュース「…木を燃やして脱炭素という虚構と欺瞞」を書いた裏事情
Yahoo!ニュースに「ありえない!木を燃やして脱炭素という虚構と欺瞞」を書きました。
これ、以前から書いたり発言していることなのだが、その場合は「伐採搬出に使う化石燃料」「輸送に使う化石燃料」、あるいは燃料調達によって破壊される森林の生態系……などに焦点を当てがちだった。しかし、根本的にバイオマス発電は二酸化炭素削減に役立たないんじゃないの、という点にクローズアップしてみたものだ。
ここには記事に書ききれなかった分を補足したい。
現在指摘されているのは、ホットハウス・アース理論である。地球上の平均気温が1・5度以上上がると、連鎖的に気候変動が起きて、もはや後戻りできないティッピング・ポイント(臨界点)を超えてしまう、というものだ。そうなると、いくら二酸化炭素の排出を減らしても、もう温暖化は止まらないし、気候危機が拡大する一方になってしまう。北極や南極の氷も、シベリアなどの永久凍土も溶ける。メタンが発生するので、温暖化はもっと進む。海流のルートも変わってしまい、深層流が消えて季節のバランスが崩れる。気候もガラリと変わる。アマゾンに雨が降らずに草原か砂漠になるかもしれない。
もし平均記憶がプラス4度になったら、地球上は灼熱地獄になるらしい。人は住めるだろうか。。。。
科学者たちがこうした指摘をしたことから、世界中の政治家もさすがに焦って、2050年までにカーボンニュートラル、つまり二酸化炭素の排出を実質ゼロにしなくてはならない……と訴えてCOP26で協定が定められた。しかし、信じない政治家も多いし,守る気のない国も多そう。
が、肝心の二酸化炭素の排出をプラスマイナスゼロにする方法として、バイオマス発電(世界中の再生可能エネルギーの約7割を占める)を推進しても、全然ニュートラルにならないじゃん、と思うのだ。(なぜか東京弁)
2030年まで9年、2050年までとしてもあと30年ないんだよ? 木をどんどん伐採してどんどん燃やせば、二酸化炭素の排出量は増え、森林が光合成で吸収していた二酸化炭素の分も減らない。理論的に回復するのも30年どころか60年以上先。つまり見せ掛けの削減は成功しても、大気中の炭素量は全然減っていない、ことになりかねない。その前にティッピング・ポイントを超えたらどうするのよ、とグレタさんなみに心配しているのだ。
もはや神頼み。魔界の森に行って拝んでこよう。
今どき世界中で増えている火山の噴火に頼るしかないかも。噴煙の微粒子が地球のオゾン層まで達して地球を覆い尽くせば、太陽光を遮って温室効果ガスを相殺してくれるかも。そして寒冷化が始まるよ……。まあ、その時は別の気象災害が頻発するだろうけど。
魔界の森の王。
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炭素の塊である木材を建築等に使用することによって炭素は個体として固定される。だから木材利用で気体のCo2を削減する。という理屈もあるはずなのに、どうして燃やしてしまうのか…間伐にしたって、利用間伐で木材として固定するのならCo2削減も大嘘ではないはずなのに、面倒だし利益が出ないから切り捨て...なんだかなぁという感じです
投稿: 0 | 2021/12/11 09:55
建築だって、最低100年ぐらい維持してくれないと、炭素の固定にならないのだけど、日本の住宅の平均寿命は30年ぐらいというからなあ。
あくまで燃やすのは廃材利用であり、熱利用が鉄則ですよ。
投稿: 田中淳夫 | 2021/12/11 14:34
他国で伐採した木を自国のバイオマス発電で燃やすというのは炭素収支計算上は「おいしい」方法のようです。
UNFCCCのレギュレーションでは炭素は伐採された瞬間に放出されるとみなされるので、輸入原料でバイオマス発電/熱利用をしたとしても自国の炭素排出はゼロです(輸送や発電所の操業に関わる排出は除く)。どんなにめちゃくちゃなやり方で東南アジアの森林を伐採したとしても、それを日本で燃やして発電すれば日本は「ゼロカーボン」な国に近づいていくということになります。
自分が知る限りでは世界最大のバイオマス発電ネットワークは恐らく米国南部のロブローリーパインを原料とした英国での発電です。以前Drax社の副社長の話を聞いたことがありますが、彼はInternational Paperなど米国南部の林業会社で働いていたForesterで米国での原料調達を担っていました。米国南部の人工林は製紙用材の割合が高かったのでウッドペレット生産には好都合だったという事情と「再生可能資源による発電」の割合を高めたい英国の事情が合わさり、この環大西洋ネットワークが形成されたそうです。
投稿: 小幡進午 | 2021/12/12 05:13
世界の事情を教えていただきありがとうございます。
元フォレスターがバイオマス発電ネットワークを推進していますか……。
そもそも森林吸収分の算定方法がいい加減すぎます。とくに日本は「管理された森林」を「間伐した森林」と勝手に定義して、ばんばん木を伐っていますから。それも補助金で。
投稿: 田中淳夫 | 2021/12/12 10:35