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森と林業の本

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2021/12/08

「回復不可能な炭素」に入れるべき“林業”

ネイチャー系論文誌「Nature Sustainability 」に、

地球の生態系における回復不可能な炭素のマッピング

という記事が載った。難しいので機械翻訳に頼ったけど(^^;)。それでも難しい。

失われた場合、最悪の気候への影響を回避するために正味ゼロの排出量に到達する必要があるときまでに回復できなかった生態系炭素

なんて言葉が並ぶ。日本語になってないけど、なんとなくわかる。それに悪戦苦闘していたら、朝日新聞に要約記事が載った。

生態系破壊で回復が不可能な炭素1391億トン 熱帯林や泥炭湿地

こちらの方がわかるわ(笑)。ようするに2050年までに回復するかしないかを基準に調べた結果だ。

森林破壊や火災、乾燥化に伴って、森や土壌からも放出される。特に、原生林や泥炭湿地、マングローブは炭素が集中。ここを壊すと回収まで数世紀かかるという。
こうした「回復不可能な炭素」を推定。南米アマゾン(約315億トン)、東南アジア(約131億トン)のほか、アフリカのコンゴ盆地や、北米の北西部、西シベリアなどに多かった。CO2に換算すると、18年の世界の排出量の15倍以上にもなった。

まあ、詳しくは論文か朝日の記事を読んでほしいが、私はこれに加えてほしいのがある。

それは林業における間伐だ。

森林吸収分を削減目標に含めるため、「管理された森林」=「間伐した森林」と日本政府は定義つけたが、木を伐るのだから゛伐られた木が行う光合成はなくなり、吸収量は減る。さらに間伐した木はどうなる? 今は搬出されるものもあるが、バイオマス発電などで燃やすのだからCO2排出する。搬出せずに林地に眠らせたら腐ってCO2を排出する。
間伐したら、残された木々の成長がよくなって、たくさん吸収するようになる、と主張するのだが、なに最大限に回復しても、伐った分を回復するのが精一杯で、伐る前より増えることは有り得ない。林地の面積で吸収できる量は上限があるのだ。しかも回復するには数年、数十年かかる。こんなの森林生態学の常識だ。

加えてカーボンニュートラル理論も、ニュートラルになるまで数十年かかる。しかも植林もせずにほったらかしの伐採跡地では、回復はもっと遅れるだろう。

つまり2050年までに回復しない可能性が高い。これでは大気中のCO2を増やしこそすれ、減らすなんて有り得ない。

……詳しくは『虚構の森』には書いているのでよろしく(^o^)。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

虚構の森…楽しく読んでいます。
なぜ間伐を行うかと問われますと、利用計画や搬出経路を考えずに植えまくった植林山が気象災害の元凶にならない様に導く為に間伐を行なっているつもりです。間伐跡地は樹冠面積が減る訳ですから当然光合成によるCo2の吸収量も減ります。しかも皆伐だけでは無く、間伐跡地でも降雨により河川へ流入する水の量が20%程増える様な気がします。間伐も少しずつ行わないと災害を招くのです。大規模皆伐…考えるだけでも恐ろしいです。

間伐を否定しているわけじゃないですよ。間伐の目的は別にある。残した木の材質をよくする、林床に光を入れる、防災のため、細い木の収穫……ただ、少なくてもCO2吸収じゃない。

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