宇野峠の土倉庄三郎顕彰碑
ふと思いついて、奈良県五条市の宇野峠に出かけた。
土倉庄三郎は、奈良の五条から吉野までの東熊野街道の建設にも関わっている。奈良盆地の縁、吉野川沿いルートかと思いきや、山越えルートもあって、巨岩を打ち割って切り開いたとかで莫大な金がかかったそうだ。その顕彰碑が、宇野峠に建てられているのだ。
私は以前土倉庄三郎を取材していたときに、可能な限り庄三郎が関わった場所を訪ねたが、なぜか、この宇野峠だけが抜け落ちていた。正直、碑自体はさほど大きくも詳しいものではなくて、それを見なくても記事は書けるし、その気になればいつでも行ける……という気分があったのかもしれない。
が、昨夜の深夜なぜか思い出して、場所を調べると、すぐにわかった。片道1時間ちょっとだ。ならば行くべ。
というわけで飛び出したのである。宇野峠には渋滞は別としてあっさり着いた。が、碑の場所が意外や難航。標識が小さなこともあるが、車から探していると、なかなか目に止まらない。多少、峠を行き来してようやく発見。
が、これが,また……。
これはわからんやろ。標識の小ささに加えて、草ぼうぼうで見えない。しかも擁壁の向こう側。新たな自動車道が建設された際に、道筋から外れて、碑が追いやられたのか。
それでも碑をみようとしたのだが、この有様。幸い冬なので枯れているが、相当丈の高い草が繁っている。高さ3メートルはあるか。
そこで一念発起。顕彰碑を見る前に、草刈りと掃除だ。と車の荷台に積んである鎌などを取り出して草刈りをする。さらに埋もれていた碑の裾部分を掘る。徐々に土が流れ込んで埋もれてしまうとは想定外だった。
なんとか、ここまで回復。スコップがあれば周辺も均して、水があったら碑を磨くのに。それでも、ちゃんと碑文が読めるようになった。漢文だから、完全に文意をつかめなかったけど。ふいに100年以上前に心がもどる。(街道が完成したのは明治20年。)
何やら年末に良いことした、という気分になれる(^o^)。よい新年を迎えられそうだ。
せっかくの記念碑・顕彰碑も、メンテナンスをしないと忘れられてしまうなあ。そういや川上村大滝の「土倉翁造林頌徳記念」の巨大磨崖碑も、最近掃除をし直したそうだ。まだ終わってからの状態見ていないが、メンテも大切だよ。
« 『虚構の森』のランキング | トップページ | 産経に『虚構の森』書評 »
「土倉家の人々」カテゴリの記事
- 土倉家の家紋の植物を読む(2025.09.20)
- 龍次郎の写真に見る目黒界隈の今昔(2025.09.05)
- 林業遺産のクスノキ林(2025.08.30)
- 仏壇にカーネーション(2025.08.15)
- 台湾から北海道へ金山の夢(2025.06.29)

































下北山出身の化学者・中瀬古六郎について調べていて田中さんの「山林王」にたどりつきました。大滝の土倉邸は同志社の新島襄はもちろん、中瀬古とデントン女史が偶然出会った場所でもあります。
昨日、大淀町へ行く所用があり、帰りに宇野峠まで足を伸ばして、このページを頼りに「宇野嶺開鑿碑」を見てきました。いまは雑草がフェンスを覆い尽くしていて、外見からは完全に分かりません(笑)
ほんとうにあの場所は何とかならないのだろうか、と思いました。
投稿: 會田陽介 | 2025/08/17 10:20
中瀬古六郎ですか。同志社創設期の人物ですね。私は、土倉邸がそんな出会いの場となっていたとはしりませんでした。
庄三郎の息子の龍次郎が同じ頃同志社に入学しているので、中瀬古の記録に龍次郎が登場しないかと思って調べたことがあるのですが、わかりませんでした。
あの顕彰碑の場所に行くときは、草刈り鎌が欠かせませんね(笑)。スコップも必要かも。
投稿: 田中淳夫 | 2025/08/17 11:04
さっそくのレスをありがとうございます。
以下、同志社「同窓会会報1938」第67号(昭和13年12月24日発行)に中瀬古六郎が寄せた「デントン先生御来朝50周年に際して」と題された文の一部です。ご参考まで。
「私が先生と初めて相識るようになったのは、その翌明治22年の夏、先生が吉野郡大滝村に土倉庄三郎氏方に避暑に来られた時であって、私もまた土倉氏の客となって一夏を先生達と共に過ごすの光栄を有したのでありました」
先日、縁あって同志社大の関係者の方を下北山へお連れした際に、大滝の土倉邸跡もご案内したところです。とても喜んでいました。
「宇野嶺開鑿碑」に刻まれた明治24年の文字を見たとき、同じ頃の時代だなと感慨深かったです。
ありがとうございました。
投稿: 會田陽介 | 2025/08/17 22:19
中瀬古六郎も、同志社の出世組ですね。
今は龍次郎のことを調べていて、彼の同志社時代の生活はどんなものかと同級生を調べています。
もし、何か記述があったら教えてください。
投稿: 田中淳夫 | 2025/08/19 23:25