世界かんがい施設遺産、日本がトップ!
佐渡島の金山跡を世界文化遺産への推薦が見送られたそうだ。だが、世界遺産はほかにもある。
世界かんがい施設遺産をご存じだろうか。昨年末に日本で2つ登録されて、私はこの時に初めて知った。
具体的には、大阪府河内長野市の寺ケ池・寺ケ池水路と、大分県宇佐市の宇佐のかんがい用水群である。
で、肝心の世界かんがい施設遺産とは、灌漑の歴史・発展を明らかにし理解醸成を図るとともに灌漑施設の適切な保全に資するため、国際かんがい排水委員会が歴史的な同施設を認定・登録する制度であり、2014年度に創設されたそうだ。この委員会はNPO、NGOであるようだが、国連とは関係ないみたい。約80カ国地域が加盟している。
条件は建設から100年以上経っていて、農業の発展に寄与したもの……など幾項目かあるが、いろいろな世界遺産があるものと感心した。
が、驚いたのは、この遺産に登録された施設は世界に110前後あるようだが、そのうち日本が44も占めていること。(その一覧は、こちら。)
おそらく日本の委員会に農林水産省が入っていて、積極的に登録申請をした・させたからだろう。こういうのは、申請されないと、勝手に登録できない。とくに、こんな特殊な世界遺産を知っている人は少ないから、教えてもらわないと該当しそうな施設関係者も気づかず申請さえしようとしないはず。私自身は、申請を待つのではなく、他薦とか認定機関が自ら見つけ出す遺産もあったらよいかと思うのだが。何らかの価値のある存在を勝手に認定するような遺産。
ちなみに寺ケ池は、河内長野市民からの提案だったとか。寺ケ池は、江戸時代初期の1649年に新田開発を目的として築造されたが、満水面積は約13ヘクタール、貯水量約60万トン、全周2197メートル、最大堤高は15メートル。当時の灌漑面積は約150ヘクタールだった記録がある。水路も8・2キロ、手掘りのトンネルも何カ所かあるらしい。
現在は公園緑地になっているが、このような概要を知ると、ちょっと興味がわく。また源流部は、河内林業地帯。林業がつくった山からの水が、この灌漑施設を潤している。どうせならセットで捉えてもよいのではないか。ほかには「日本遺産」とか「林業遺産」もあるから申請してもよいかもしれない。
ユネスコの世界遺産(自然、文化)はなかなか敷居が高いから、こうしたマイナー系?遺産を狙うのもアリではないか。
余談ながら世界かんがい施設遺産に関して、私はパプア.・ニューギニアのクック遺跡も加えたらと思う。ニューギニア島南部の高地には、1万年前とも言われる農業用灌漑施設跡が発見されていて、これは人類史上もっとも古い農業の証拠だからだ。メソポタミアより古い。人類の農業はニューギニアからスタートしているのだ。もっとも世界遺産に登録されているから、それで十分なのか。
それが発展せずに、ニューギニアの農業技術は、つい前世紀までほとんど変わらなかったことが人類の文明について考えるのに非常に示唆に富むのだが……。
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