林業商社と原野商法の森
リゾート地で有名な北海道ニセコ町が、2022年度に林業に特化した地域商社を設立するそうだ。
計画では、手入れが行き届いていない町有地の森林を適切に管理し、切り出した木材に価値を付けて販売することで、地域循環型の林業をめざすのだという。将来的には民有地の森林にも拡大したい考え……とのこと。
なんだか聞いたことのある構想だな、そうか、西粟倉村か……と思ったら、今回の地域商社の運営は、西粟倉の場合と同じく「トビムシ」が関わる予定とある。近隣の木材加工業者にも参加を呼びかるそうだが。
町によると、町内に木材の素材・製品加工を行う事業者がなく、原木で出すだけ。そこで、新会社が木材の製材や乾燥なども行う加工事業者となり、建物の内装材や床材、家具など木工製品へ加工する。そしてニセコブランドをつける。世界のリゾートを誇るだけあって、地名のバリューを利用できるのは強い。ただ、なんだか商社というよりはメーカー指向のように見える。
ところで、私が若干面白いと感じたのは、ニセコ町内には原野商法で売られた不在地主や所有者不明の「義務者不存在の土地」が結構あるという点。そのほとんどは放置されているうえ細分化されている。これを何とかしたいというのだ。この点に私は注目したい。
所有者がわかれば、わずかな金額でも町へ売るか寄付されるように誘導することができるだろう。問題は、不明の場合。
実は、手段はある。国が所有者不明森林への対策として、改正された森林法や森林経営管理法で特例措置を設けているからだ。具体的には、市町村が探索して「公告」し、一定期間内に異議を申し出ないと「同意みなし」によって自治体が森林の利用権を取得してしまえる。
ところが、全国的には適用例が少ない。おそらく、そもそもこの特例を知らないことと、手間がかかって面倒くさいという発想。さらに同意みなしをして後で申し出られて裁判にでもなったらイヤという行政心理もあるのではないか。
もしニセコがこれに挑むなら注目したい。法律や条例でいろいろ決めても、なかなか現実には適用しないが、成功例ができたら、各地で前向きに進むかもしれないから。
北海道の原野商法の土地って、こんな感じかな?(イメージです)
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