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2022/02/15

書評「ノーコスト林業のすすめ」

『ノーコスト林業のすすめ』(荻大陸著 日本林業調査会刊)を読んだ。

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注目は、著者である。荻大陸氏は、林業経済学が専門の成美大学教授だった人で、現在は森林・林業問題リサーチャー……という肩書になっている。が、私的には村尾行一(愛媛大学客員教授)氏の一番弟子、と言ったイメージが強い。村尾氏は、昨夏みまかられたが、その思想・理論をもっとも強く受け継ぐ人と私は思っている。

実際、東大時代は村尾氏のゼミに属して、一緒に各地の調査に出かけていた。村尾氏の著作は多数あるが、そのデータなどの多くは荻氏とともに集めて研究したものなのである。実際、本書も読んでいいると、文体が村尾節に酷似しているとなつかしく感じたほどだ。
私も、取材では幾度もお世話になってきている。焼畑から始まって中国への木材輸出まで。

目次を紹介するが、詳しいものはJ-FICのサイトへ。こちらでは「はじめに」も読める。

はじめに 
第1章 日本の林業はコストをかけなかった
  〈コラム〉切り札は国民を“休ませる”こと
第2章 もともと間伐はしていなかった 
  〈コラム〉芯持柱と芯去柱 
第3章 生産目標にとらわれない林業へ 
  〈コラム〉製材乾燥から丸太乾燥へ 
第4章 焼畑に対する誤解と偏見を解く 
  〈コラム〉農業と人口増 
第5章 売れる国産材製品とは?─東濃檜が残した成果と教訓─ 
  〈コラム〉ノーコスト林業を阻むカベ 
終章──現役の製品銘柄 
おわりに 

 

さて、ここでいうノーコストとは、近年流行りの低コストとか植えない林業ではない。むしろ日本伝統の林業、戦前までは当たり前にやっていた林業だ。つまり補助金なんかなくても経営できており、十分な利益を出していた状況を指す。それは無駄な切り捨て間伐などはせず、すべての伐採は収入につなげており、常に売れる商品づくりをしていた林業と言ってもよい。

この点は、戦後の日本の林業史をなぞるようなもので、著者の前著『国産材はなぜ売れなかったのか』でも書かれているし、村尾氏の本でも繰り返し登場する。
私もそうした本を何冊も書いている(『だれが日本の「森」を殺すのか』、『森林異変』とか『森と日本人の1500年』など)が、私の場合は一般向きにかみ砕いており、その分説明を端折ったり細かなデータは抜いて書いたりしている。もし、林業および木材産業により詳しく接している、もしくは自身が関わっている人なら、プロ向きの本書をお勧めする。業界誌紙の能天気な記事しか読んでいなかった人には耳の痛い人も多いだろう(^^;)が、きっと目が覚めるだろう。

たとえば間伐材とは何か、という点では、間伐はそもそも収穫なのであって、保育になったのは戦後だという。2章冒頭で建築家の隈研吾氏の言葉を引用して、間伐に関する世間の誤解を指摘しているが、それは先日Yahoo!ニュースに私が記したのと同じ趣旨だ。
さらに芯持ち材も同じ。本来は芯去材だったものが、戦後は芯持にしないと柱が取れなかった事情を知らずに論じてもむなしい。含水率25%ぐらいで乾燥材扱いすることの不合理さもよくわかる。集成材では13%以下にしないと使えないのに、25%で出荷されても困る。また阪神大震災前は集成材を二流扱いしていたのに、今や集成材の方が強度が高いと人気になり、無垢材は半製品扱い……。

そのうえで最新事情にも触れている。一つは広葉樹材の需要増。そして「売り物にならない樹種はない」。これこそ恒続林の思想にもつながると言えるだろう。(あ、ここは月末のフォレスターアカデミーの講義で話そうかな……。)

最後に、東濃檜のブランド化を通じて「当たり前のこと」をするだけで優秀とされる日本の林業の現実を見つめて、それを絶望するかチャンスとするかを自分に問い掛けてほしい。もちろん私は「絶望」だけどね(笑)。

 

 

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コメント

拝読しています徳島県の林業製材所です。
先日、森林組合から切り捨て間伐しませんか?
とお声かけ頂きました。
該当する山林に行ってみたところ、2haの面積
に、ざっと3500〜4000本位で桧が多い。
胸高平均は22センチ位でまっすぐできれいな
林でした。
早速80歳過ぎの母の処に行き、聞き取りしたら
50年前に木を植えて山の麓からのかつぎが大変
だった。20年程前に枝打ちもしたとの事でした。
早速、森林組合に間伐をお断りしました。
林業は回収サイクルが長く間伐は段階的な投資
の回収手段だったと考えています。
それを日が差し込んで、残った木が太るなんて
解釈が一般的ですが、私はまやかしだと思います。
木はキャップを被せるように、側に肉を巻き太り
ますが30年を過ぎた林に間伐と言って間引きして
急に年輪幅が広がって、直径が大きくなった丸太
はお目にかかった事がありません。


50年生ヒノキを切り捨て間伐ですか。おそらく補助金目当てでしょうね(-_-;)。ちゃんと出して商品に換えるノウハウがない森林組合なのでしょう。
昔は間伐補助金なんてなかったから、金にできなければ伐らなかった。だからノーコスト林業なんです。

間伐後に残した木の年輪が開くのは確認できますが、「木を太らせる」のが目的ではないでしょう。

岡山県立図書館にもはいっていました。6月7月の企画展示で表に出されていました。

企画展なら、私の著作と並べていただけたら嬉しいんですが(笑)。

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