ウクライナ情勢で思い出すフィンランド冬戦争
ロシアが、ウクライナ東部の2地域に独立承認し派兵を決定した。これまで瀬戸際外交を展開しつつ、最後の落としどころを睨んでいるのではないかと思えていたが、その一線を越えた可能性がある。何やら不穏な空気が漂っている。
それで思い出したのが、フィンランドの冬戦争だ。日本ではほとんど知られていないし、表現もソ連-フィンランド戦争と呼ばれがちである。
これは第2次世界大戦勃発直後(1939年11月30日)にソ連軍45万人がフィンランドに攻め込んで始まった戦争だ。圧倒的な戦力差で3日で終わると思われたが、フィンランドは厳冬の中ゲリラ戦と焦土作戦で迎え撃った。結果として4ヶ月間でソ連軍の損害はフィンランド側の10倍以上となっても占領できなかった。フィンランド2万6000人、ソ連12万8000人の犠牲を出したが、だが、人口370万人のフィンランドにはこれが限界だった。講和条約が結ばれ、国土の1割、それも工業地帯が割譲され、莫大な賠償金が課される。
だが、このソ連の侵略にナチスドイツは不信感を覚え、ソ連との不可侵条約を破るきっかけとなったとされる。独ソ戦が始まると、フィンランドはドイツと手を結び、失地回復をめざして再び戦った。これは継続戦争と呼ばれる。そこで一時割譲した領土を取り戻したのだが、ドイツの崩壊を前に44年9月に停戦したら、今度はドイツ軍と戦うはめになる……。結果として、より多くの領土を奪われる結果となった。
このような戦いを繰り広げて独立を維持した国の外交を「フィンランド化」と揶揄すべきではない。むしろバルト3国と違ってソ連邦への編入を阻止したのである。ただ戦後も、フィンランドはソ連に、そしてロシアに領土を割譲したままだ。そして賠償金を支払わなくてはならなかった。
しかし国土を蹂躙されたフィンランドにとって、その経済力は残されていない。そこで全土の森林を皆伐して木材を売った収入を当てることになる。それが現在に続くフィンランドの林業構造を形作った。フィンランドの林業は戦後生まれといえるかもしれない、日本と同じく。
フィンランドの林業には、冬戦争の影響が色濃く残る。そして、それは森林全体を覆う影である。
フィンランドの林業は、皆伐一斉造林、そして拡大造林。大量生産型だ。
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シモヘイヘの活躍した戦争ですね。ライトノベルや架空戦記ものでスナイパーの髪はシモヘイヘ・ブルーがここ30年ほど定番になっています。
例 赤松中学「緋弾のアリア」6巻表紙など。
投稿: 岡本哲 | 2022/02/24 10:52
詳しいですねえ。意外やライトノベルの世界に冬戦争が紹介されているなんて。
投稿: 田中淳夫 | 2022/02/25 09:36