動物の「かわいい」を追求する
先日訪れた東京で、日比谷公園前ぐらいだったか、なんだか大きなのぼりと看板を立てて、チラシを配っている一団を見かけた。そして渡されるままにチラシ(というかカード)を受け取ったのだが……それがネコの保護運動のものだった(´_`)。
それもJFEスチールの敷地である東京湾の島にネコが多数閉じ込められているからちゃんと餌と水をやれ、冬なんだから暖かい寝床を……とかなんとか極めて局所的な運動。それも、今そこに虐待されて殺されているわけでもないネコなのである。こんな運動のために何十人も集結して、のぼりを立ててカラーのカードを印刷するお金もかけるのか。
2022年2月22日はネコの日だそうで、テレビも新聞もネコ特集ばかり組んでいる。私も便乗しようかなと思ったのだが、つい私が思い出すネコのエピソードはこんなことになってしまう。
私が『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』と『獣害列島』を執筆した際に、シカとともにネコと人間の関係を探る手がかりとして、各地のネコ島を訪ねる計画を立てた。ネコというか野生とペットの合間を見極めようという発想であった。ちなみにネコはペットになるが、遺伝子は野生のときとほとんど変化していない。つまり野生動物のままペットになったという希有な動物である。その点でも、ネコについて追求したのである。
だがコロナ禍で外に取材に出ることも諦めざるを得なくなったのだが……。それで文献としてかなりの動物の本を読んだのだが、その中にはネコの本も何冊か混じっている。たとえば、これ。
さすがアメリカ。こうした研究もしている。残念ながら日本ではネコの研究を探すと、「かわいい」ネコの生態ばかりなのである。こちらの分野に手を付けようという研究者はいないのか。そこで「かわいい」正体を探ろうとして、こんな本も読んだ。
……結局、人にとっての「かわいい」という感情の発生源はつきとめられなかった。その代わり「アニマルウェルフェア」についても勉強した。これを真正面からは取り上げたのは、かなり早いはずだ。さらにその奥にさらに広がる「ノンヒューマン・パーソンズ」の思想を紹介したのはも、その筋の運動家や専門家を抜きにしたら、私がかなり早いことを自負している。
害獣の駆除にもアニマルウェルフェア
ノンヒューマン・パーソンズ~動物に“人格”が認められる時代がやってきた
ほかにドミトリ・ベリャーエフのキツネの家畜化実験も示唆に富んでいる。人にはなつかないキツネを何世代もかけて人になつく性格に変えていく実験だ。結果として、「かわいい」キツネが誕生した。
調べると、最初は2017年だった。ここまで突き詰めて、ネコを論じられる。ネコ様ネコ様と騒ぐなら、これぐらい調べて理論武装してからにしたまえ(笑)。
ちなみに、我が家の庭にはネコが異常に出没しており、その数は10匹を超える。どんどん子どもを産んでいるのか、常に小ネコが混じり、似た顔のネコがうろちょろしている。そのうちネコイラズを撒いてやりたい……。
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