北欧林業は見かけ倒れ?
スウェーデン、フィンランド……北欧諸国の林業というと、なぜか憧れを抱く人(林業関係者)が多い。
面積は日本とさして変わらず、森林率も同様。そこで林業大国として知られるからだ。フィンランドにはケスラという大手林業機械会社がある。日本にはホワイトウッドなど北欧材が入ってきて、北欧住宅、スウェーデンハウスなんて名前の住宅メーカーもある。ログハウスも北欧式がわりと人気だ。森と湖の国……というイメージは強い。
もちろん気候や地形などの条件が違うので、スウェーデン式をそのまま日本に持ち込もうとする動きはさほどないかと思うが、研究者や業界関係者の視察団などが多く北欧を訪れる。何を参考にしようというのだろう。日本の皆伐林業を批判すると「北欧だってやっている。それでも北欧は豊かな森があり、健全な林業が営まれている」という“反論”が出る。
本当に北欧の林業は優れているのだろうか。疑問に思った一つは、林地施肥だ。つまりスウェーデンなどでは林業地で肥料を撒いて木を育てていることだ。飛行機で大量に肥料を撒き、樹々を急激に太らせハーベスターで伐採するのだそうだ。
日本でも戦後の一時期、少しでも早く木を育てて伐期を縮めようと施肥が行われたことがあった。わざわざ急斜面の林地にまで肥料を……ときには人糞を撒いたのだそうだ。当時はヘリやドローンもないから人力である。
結果は散々なもので、肥料をやったところだけ徒長成長をして、無駄に枝が伸びたり、幹の強度が弱くなったり、虫害が発生したり……労多くして益少なし、いやマイナスだとされ施肥林業は消えてしまった。
スウェーデンの林地施肥で面白いのは、林地の生産力が高いところに施すこと。とくに伐採予定の10年くらい前にリン酸,窒素などの肥料を与えるというもの。あえて伐採前に急激に成長させ、立木の材積を増やして(経済的価値を高める)から伐採するのだ。貧栄養の泥炭地ではやらないという。日本的感覚だと反対のような気がするが……。
ちなみにフィンランドでは、湿地に水路を縦横無尽に掘って灌漑し、乾燥させてから植林し、肥料を撒くそうだ。当然、湿地の生態系は破壊されてしまう。
亜寒帯で寒いだけに木々の成長は遅いはず。伐期も100~120年と聞いた覚えがある。それでも持続的で生長量より伐採量は少ないというが、それは肥料で太らせているから可能なのかもしれない。
また皆伐施業には、地元でも反対運動が起きているそうである。決して、みんなが納得しているわけではなかった。
そんな育て方をした木々は木材としてどうなんだろう。軟弱な材質になるに違いない。用途の多くが製紙用だから、さほど材質にこだわることはないのかもしれないが。あるいは徹底的に乾燥させ、含水率9%まで下げたら、ブヨブヨに育った材を引き締めるのか。
最高級の木材は、立ち枯れ木なんだそうだ。立ち枯れてから100年200年もそのままの木をシルバーパインと読んで建材としては重宝するらしい。銘木級の扱いで、もはや「幻の木」と呼ぶ。日本に輸出しているのは、どちらの木材だろう。
フィンランドの森。ケスラからいただいたデータに入っていた。
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