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森と林業の本

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2022/02/08

日本版「退耕環林」はどうなる?

中国には「退耕環林」という言葉がある。これは黄土高原などであまりに農地を広げてしまい黄砂発生など環境破壊になっている地域で、農地を森林にもどそうというものだ。

これと同じことを日本でも行うことになりそうだ。

農林水産省は新年度予算案に農山漁村振興交付金の「最適土地利用対策」に森林化を加えることを決めた模様だ。「最適土地利用対策」とは、市町村などが農地を活用・低コストで維持するための取り組みを国が交付金で支援する仕組み。

現在は、土地利用の計画策定費用のほか、家畜のレンタル代などを支援していた。家畜レンタルというのは、放棄農地への雑草対策をかねた放牧のことだろう。

ところが今度は、農地として維持しづらく将来も利用の見込みがない土地は、森林に還すのも有効利用の一つと考えるというのだ。そのための植林を支援するのも追加するという。

木の苗の購入費や草刈りなど管理費用を全額国費(事業開始年度は上限250万円)で、土地整備などの費用は事業費(1区当たり上限200万円)の2分の1を支援する。ただ採択されるには、市町村や地域協議会が最長5年間の土地利用計画を提出することが条件としている。また植林に当たって農地転用許可が必要らしい。このところはよくわからない(というか、まだ細かく決まっていないのではないか)。

おそらく、これは棚田や段々畑などの山間部の放棄農地を対象としていて、植えるのもセンダンなどの早生樹種を考えているのだろう。センダンなら20年ぐらいで幹直径が30センチぐらいに成長し、しかも材質はケヤキなどの代替になる。ただ施肥が必要だし、それなりの剪定なども行うので山の斜面ではなく、平坦な農地に植える方が向いているとされる。

農水省は、植林により農地に森林が接近すると、鳥獣の隠れ家になって被害の出る懸念が強まるため、間隔を空けて木を植えろとか、妙な注文を付けている。

まあ、早生樹なら早く成長するので、間隔を開けないといけないのはわかるが、獣害を持ち出すのはどうか。むしろ放棄してブッシュになっているところが鳥獣の隠れ家となり、木々を生やして、人も出入りするようになる方が被害防止につながるように思う。

農地で林業! という狙いどおりになるのか。 

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棚田の放棄地に植林されたセンダン。これは植えて1年目。(兵庫県)

 

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

かって水田造林と称して、山間部の棚田にスギを植えることが推奨され、今では立派?なスギ林になり、多くの山田が山林に戻っています。

センダン、これもかって流行ったキリ造林(テングス病とコウモリガに悩まされた)と似た構図。

施策もやっぱり循環型ですね^^

循環型施策。いいですねえ(笑)。

まあ、早生樹なんて、昔からいろいろ試して成功していないんだから、いまさらですね。コウヨウザンなどは江戸時代からやっているし、明治以降もテーダ松持っていたり、なんだかんだやって、行き詰まる。

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