森の変遷と森づくりの技を考える
久しぶりに訪れたタナカ山林こと、生駒山にある私の山の土地。
なんだか倒木が増えている。風倒木もあるが、どうも寿命と虫害などで枯れた木が倒れたものも目につく。1本倒れたら、わりと周りの木々もなぎ倒しがちだから何本も倒れたり折れて光が入る。これも植生遷移の過程だろう。もとから雑木林だが、今後どんな林相になるのか考えてみる。
そんなときにたまたま目についた「人工林の多様性を高める森づくり事例ガイド」。思わず目を通してしまうのだが……。
まあ、そんなに私が知らないことが載っていた、というほどではなかったのだが……。ちょっと面白いな、と思ったところ。
針葉樹人工林を広葉樹の混じる森にしていくための道のり
「スギ・ヒノキの人工林は日本の本来の森林の姿を考えると、決して「不自然」な樹種ではない。人工林に広葉樹を混交させる考え方自体は妥当だが、スギやヒノキを排除する必要はないと思っている。」
「育ち盛りの若木(スギやヒノキで言うと概ね40~50年生くらいまで)ばかりの時は(若齢段階)、上木を多少取り除いてもすぐに枝が伸びて上空を塞いでしまい、すぐに暗くなってしまう。若齢段階に一生懸命作業をしても、あまり有効ではない。一方、樹高成長が落ち着いた40~50年生以降の人工林(成熟段階)であれば、伐採で多少本数を減らした後、すぐに空間が塞がることはなく、林床の光環境が維持される。」
かつての日本の植生は、基本的に針広混交林だったとすると、現在の落葉広葉樹林・照葉樹林と針葉樹林といった分け方も考え直さねばならないのかもしれない。それは、単に片方を伐り尽くしたか最初から排除した結果かもしれないのだから。逆にスギ林やヒノキ林が混交林になってもおかしくないわけだ。もともと私の森も、戦前はマツ林だったらしいし、今もスギやヒノキが生えているぞ。
そして、一般の間伐のように若い段階で伐るのではなく、成熟してから伐った方がよいというのも、納得。これは残存木の育成ではなく、伐った木を利用するための択伐と思えばよいか。つまり、択伐こそ針広混交林への誘導に適した手法ということになる。
これって恒続林施業を後押ししているかもしれない。奈良県は恒続林となる森づくりを進めようとしているが、その手法はまだ確立していない。ここに鍵があるかもしれない。
それと、保持林業についての記述が多いのも目に止まる。皆伐施業でも、ある程度の残存木を保持して、森林生態系の回復を早める手法だ。まだ日本では言葉そのものが導入されたばかりで一般化していないと思うが、欧米では広がっているみたいだし、私も気にかけている。皆伐はするな、と言っても、どうしても山主の都合(さらに補助金の都合)などで皆伐が求められる場合、保持伐という方法もあることを示せたら、救いにならないか?
あと、文句を付ければ、目次に大台町を奈良県としているのは誤記ね(^^;)。三重県だろう。
それに、どうも各項目ごとに市民団体の役割を見つけようとしているのが鼻につく(笑)。これ、制作したのが「森づくりフォーラム」というNPO法人であるからなんだろうが、高度に専門的な針広混交林誘導技術と長期間にわたる関わりを求められる世界に、アマチュアが入り込む余地はないと思う。プロが仕事としてやるべきだ。もし市民団体でやるなら、その団体もプロになる(たとえば企業化)べきだろう。
市民団体の役割は、せいぜい情報提供を含めた提言や、行政の監視ではないか。
さてタナカ山林は雑木林だから、別に何か目標林型を決めて誘導することは考えていない。もちろん私もプロではないが、所有者というのは長期的な関わりができる(しなくてはならない)立場。今後行う森遊びを考えるのによいかな。
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