「つなぐ棚田遺産」に「聞き書き甲子園」の選び方
棚田と言えば、最近は何かと環境保全のシンボルになっていて、注目を集めがちだが、同時に保全が難しい里山の一環境。そして「日本の棚田百選」なんぞも選定されている。
そこに農水省農村振興局は、今度は「つなぐ棚田遺産」271地区を選定した。(棚田百選は、134地区)
なんだ、屋上屋を重ねるというか、看板の上に看板を重ねるのか、と思ってしまうが、そのとおり(^^;)。完全に重ねて下の看板を潰している。なんでも「百選」は、せっかく選んだのに、その後保全が進まず荒廃しているところが増えてきたのだそうだ。そこで景観保全などに積極的に取り組む棚田に絞って選び直したとか……絞るはずが、百選の2倍になってるやん。ま、一応は市町村や地域住民などが、棚田の振興や保全に参加することなどが要件となっている。
きっかけは2019年に棚田地域振興法が施行されたことがあるようだ。同法に指定された棚田地域は、通常より手厚い財政支援を受けられるらしいのだ。加えて22年度予算案では「超急傾斜農地」に加算措置が設けられている。それらの予算・補助金バラマキのための指定なのだろう。しかし「遺産」に選ばれた地区でも指定を受けていない棚田が約3割あるという。
一覧は、こちらにあった。
ざっと目を通したが、本当?と疑いたくなるのもあるし、逆に有名なあそこが入っていないの? と思うものもある。
いつも思うのだが、この手の選定の候補はどうやって上げているのだろう。おそらく地元からの推薦などが必要なはずだが、たまたまその担当者(市町村? 農協などの団体?)が、この制度を知らない、もしくは興味ないと、候補にも上がらず、その後の選定審査にも引っかからないはず。その方が多いのではないか。
たとえば私の地元の生駒山も、巨大な棚田地帯があるし、その中で幾か所か保全運動をしている団体もあるが、今回の「遺産」には選ばれていない。推薦がなかったからだろうか。そもそも巨大すぎて一部の保全はしても、全体としては荒れているからだろうか。
そういや「聞き書き甲子園」というのも、今年で20回を迎えている。もともと「森の聞き書き甲子園」だった。森の(技術)名手・名人100人を顕彰するのに合わせて高校生が聞き取りするものだ。名人の顕彰と、高校生への啓蒙が目的だったようだが、回を重ねるごとに川や海も加え、もう名人も尽きただろうに、聞き書きさせるために選んでいるような状態だ。20回って、全体では2000人をはるかに超えているよ。
結局、財政支援とか言っても、その手の金で本当の保全活動はできない。もともと活動をしていたケースを多少助けるだけだ。手がける人の手弁当に近くて、時間とともに限界が来て荒廃していく。また新たな選定をしなくてはならなくなりそう。
「百選」の次が「遺産」なら、その上に重ねるとしたら、なんとネーミングするかね。「遺跡」とか「化石」の「発掘」かもね。
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