なぜ人は「森」に甘いのか
朝日新聞の社説で、森林環境税を取り上げていた。
まず、ようやく森林環境税を論じるようになったか、という思い。これまで、インフォメーションとしての記事はともかく論説にはなかなか取り上げられることがなかった。
今回は、森林環境譲与税が真っ当に使われていないとか、そもそも配分基準がおかしくて森林のない大都市にたくさん分配される……などから切り込んでいる。ここまでは、すでに指摘されている。
私が問題にしてきた期間限定の復興税を焼き直して住民税上乗せで徴収するおかしさに触れている。さらに最初に予算の分配ありきで使い道が不明確であることを取り上げている。
その点からは、まあ、これまでの森林環境税の取り上げ方の中では真っ当かな、と思った。
が、どうしても気に食わない点がある。
森林保護の財源を充実させる狙いは理解できる。
木材価格の下落などで放置される森林が増え、山林崩壊の懸念が高まっている。地球温暖化対策の面でも、森林の機能は重要だ。政府は19年度、所有者に林業経営の意思が無い場合、市町村が代わりに管理する制度を導入した。その財源を確保するのであれば、意義は大きい。
この部分だ。理解できる?意義が大きい? どこが?
森に金を出すのは喜ばしい、財源があれば森林が充実できる、というのでは、もとから森林管理を必要経費と見ているのだろう。林業は産業ではない、という認識か。なにより森林のためには金をかけるのは当たり前としている。これが気に食わん。
ほかの分野なら、補助金バラマキに対してわりと厳しい目を向けるのに、こと森林に関しては甘い。
だいたい国民自体が、森林環境税という明らかな増税に対して文句を言わない。また用途に対しても甘い。1円でも、その使い道が本当に森林のためになっているかと追求しなくてはならないのに、なぜアマアマなの。これは日本人の特徴なのか。あるいは人類みんな同じなのか。
この甘さが、逆に森林を痛めつける。税による事業者を堕落させる。なによりバラマキだから、支出した後の検査がほぼしない。どんな目的外使用でも文句がつかない。
また「放置される森林が増え、山林崩壊の懸念」とか、「地球温暖化対策」のための「管理」とか、ちゃんと検証したのだろうか。「林業を活性化して木材生産を増やせば、森林はCO2の吸収する」とかいう説明に疑問を持たないのか。
なんか、「森」と名がつけば庶民は文句を言わないと見透かしている。
もう一つ私が嫌いな税制度に、「ふるさと納税」がある。これも、自分で稼ぐのではなく他の自治体の税金を横取りする制度だ。しかも自分の自治体に納税させるために「税金の控除」と「返礼品」という名の餌をぶら下げる。これも税金の無駄遣いである。ふるさとでもない、行ったこともない地方に納税すると見せかけて返礼品で儲けるという個人納税者もいやらしい。下品だ。
ふるさと納税も森林環境税も地方税の食い合いだろう。徴税額は減らさず、いや増やして、地方同士を争わせているのだ。
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