「分業拡大」から「一貫生産 」の時代へ
王子ホールディングス……と言えば、いうまでもなく製紙会社グループだが、伐採も一部で行う。つまり原木生産もやっている。そこに加えて、次は製材加工にも乗り出すのだそうだ。梱包材や住宅資材の生産も始めたそうだ。
国内に保有する森林面積は、民間最大の約19万ヘクタール。このうち北海道だけで約12万ヘクタールあるが、木材事業を担う子会社・王子木材緑化が北海道の製材会社・双日与志本林業(改名して王子与志本林業)を2021年に買収した。所有森林で育てた木材を伐採して運び込み、製材加工・販売まで一貫体制を敷くという。
もちろんこれには、収益力を高める狙いがあるのだろう。そもそも製紙だけでは電子化に人口減にと、需要が先細りなのだ。加えて木材の輸送距離を短くすることでSDGs的な観点や、ウッドショックから需要急増中の国産材の利用を促進する意味もあるのだろう。同社は木製パレット用の製材のトップシェアだという。年間で原木10万立方メートル扱う(製材能力は約5万立方メートル)というから、結構な量の木材を消費するのではないか。あまり高そうな用途ではないけれど、そのうち建材も生産するのだろう。
一方で中国木材は、山買いを推進している。もう所有森林は8000ヘクタールを越えたと聞いた。まだまだ手に入れるそうだが、製材会社が木材の生産地も握ろうというわけだ。こちらも国産材シフトか。現在は外材中心の製材で、20
今後こうした一貫生産が増えるように思う。大量画一生産から少量多品種生産への流れだ。
これまで生産を拡大するには、分業が不可欠だった。木材だって山主-素材生産-木材市場-製材-ブレカット……と細かく分かれている。そこに問屋も入る。その方が効率的な集材・伐採・販売……などができた。しかし、分業にすれば情報格差も生まれるし、在庫ロスなども膨れ上がる。そしてリングの一角が崩れると、全体が止まる。生産量の縮小が進み出したら、分業による各々の利潤追求が足かせとなり、むしろ効率は落ちる。
資本力のある最大手の動きだけではない。むしろ超小規模な世界の方が顕著かもしれない。漆の生産は、ウルシノキの栽培から漆掻き、精製、そして器の生地づくり職人と漆塗り職人……と分業していたが、それを一人で全部やろうという人が現れている。一つには売り物の漆が信用ならない(混ぜ物している?)とか品質の問題もあるのだが、それ以上に全体を把握してこその作品づくりという意識があるらしい。
ほかに養蚕から生糸づくりまでやるとか、コウゾ栽培から繊維の抽出、そして紙漉きまでやる……なんて動きもある。
分業拡大から全工程把握への時代の流れは変わりつつあるように思う。
今後は、林業家が山で自ら伐採して、その木をオーダーメイド製材して天然乾燥、ときにプレカットして、大工に直売する時代が来ると思うよ。
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