日本が世界の森を奪っている?
一時期流行った(今も声高の人はいるけど)「外資が日本の森を奪う!」という与太話。
おかげで林野庁も、「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」を毎度続けている。可哀相に。たとえば昨年の報告は、こんなの。たった22ヘクタール。しょぼい。。。これまで多くても、せいぜい数百ヘクタールだった。それも1か所1ヘクタール未満もいっぱい。外資名義になっている森林面積の総計は、どれぐらいだろうか。どう見ても1万ヘクタールに達していまい。
そりゃ、外国人も日本の土地を購入することはあって、それが森林である場合もある。そうした現象の善し悪しは勝手に論じてくれたらよいが、それならこの記事を読んでほしい。
海外で社有林拡大 「排出ゼロ」実現 矢嶋進王子ホールディングス会長
ようするに王子製紙グループ(ホールディングス)は、国内外に約58万ヘクタールの森林を保有する。国内が約19万㌶、残りが海外、つまり39万ヘクタールだ。今後も海外で植林地の面積を増やしていく予定で、ブラジルやニュージーランドを中心に30年度までに約15万ヘクタール増やす計画だという。
大陸国家のブラジルはともかく、ニュージーランドは日本列島より小さな島国。そこに5・8万ヘクタールも森林を所有するということは……ニュージーランドの森を奪っている! と言われないだろうか。もし日本で5・8万ヘクタールの森林を取得されたら、日本第3位の山主となる。三井物産も住友林業も抜く。大騒ぎになるかもしれない……(ならないかも。興味ない国民が大半かも)。
現実に、排出権取引を狙って日本の山を欲しがる外資系企業はあるだろう。なぜなら、日本の山は相対的に安いから。
そして荒れた山を整備してくれたら、果たして文句言えるか? 日本人が持っていると、荒れたままだけど、外資のおかげで真っ当な林業ができてカーボンクレジットの適用もできますよ、と言われたら。でも、整備する手間を考えたら日本の山林の価値は下落するな。
ちなみに日本製紙グループは、ブラジル・チリ・オーストラリア・南アフリカに計約8・3万ヘクタール(2019年末時点)の植林地を管理している。また住友林業は、現在、インドネシア、パプアニューギニア、ニュージーランドの3ヵ国で約23万ヘクタールの森林を管理しているそうだ。これらが土地の所有なのか管理権だけなのか、HPの情報だけではわからない。
いずれにしても、各国で恨まれないようにね。
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