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森と林業と動物の本

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2022/04/26

「焼畑が地域を豊かにする」で思い出す

焼畑が地域を豊かにする 火入れからはじめる地域づくり」(未生社 2400円+税

という本が届いた。

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帯文にあるとおり、焼畑を環境破壊ではなく、地域起こしにつながるよ、という本だ。具体的には焼き畑の伝承もしくは復興への取り組みや、それに取り組んでいる人びとを紹介している。編著者は21人に及ぶ。また版元の未生社は、誕生したばかりの京都の出版社。

前書きも版元ドットコムで読める。とりあえず目次を引用すると、(長い!)

もくじ
 ◎第1部 焼畑は「環境破壊」か――みなおされる現代の焼畑
1 今、なぜ焼畑なのか? 新たな可能性を紡ぎだす試み 鈴木 玲治/2 焼畑の現代史――「消滅」から継承・再興へ 辻本 侑生/3 焼畑は「よくわからないけれど面白い」 大石 高典

 ◎第2部 全国にひろがる焼畑の輪――焼畑が豊かにする地域
4 伝統の継承と復興
4-1 継続は力なり――宮崎県椎葉村 焼畑蕎麦苦楽部 椎葉 勝/ 4-2 焼畑から森づくりへ――静岡県「井川・結のなかま」の活動 望月 正人・望月 仁美 聞き手・構成:大石 高典/4-3 蕎麦屋と焼畑――静岡県 焼畑蕎麦にあこがれて 田形 治 聞き手・構成:大石 高典/4-4 焼畑実践の魅力 ――静岡県静岡市 井川における実践から 杉本 史生

5 焼畑カブのブランド化 
5-1「焼畑あつみかぶ」ブランド化の軌跡――山形県鶴岡市温海地域 中村 純/ 5-2 焼畑を活用した資源の循環利用で持続可能な森林づくり――山形県鶴岡市 温海地域 鈴木 伸之助/ 5-3 「灰の文化」が育む赤カブ栽培――新潟県村上市 さんぽく山焼き赤かぶの会 板垣 喜美男

6 村外者、移住者と焼畑実践
6-1 「遊び」で続けた30年――福井市味見河内町 福井焼き畑の会 福井焼き畑の会 聞き手・構成:辻本 侑生/ 6-2 7世代先の森づくり――熊本県水上村 水上焼畑の会 平山 俊臣/

7 教育・研究と焼畑実践
 7-1 焼畑は山おこし・村おこし――高知県吾川郡仁淀川町 山口 聰/ 7-2 焼畑再生という試みのちいさな幾きれか ――島根県仁多郡奥出雲町 面代 真樹/ 7-3 創造=発明作業としての焼畑 焼畑は骨董技術ではない――島根県仁多郡奥出雲町 小池 浩一郎

(コラム)焼畑のやり方として書籍にはまとめられていない、あるいは発明かもしれない焼畑の技法 小池 浩一郎

 ◎第3部  山を焼く、地域と学ぶ――滋賀県?浜市余呉町
8 余呉の焼畑プロジェクトと「火野山ひろば」 増田 和也/9 余呉の焼畑を発展的に受け継ぐ 黒田 末寿/10 暮らしを支えた「原野」――女性たちの語りにみる焼畑と山の草地利用 島上 宗子/11 焼畑と土壌・昆虫・植物 鈴木 玲治/12 在来品種「余呉のヤマカブラ」を選抜採種する 野間 直彦/13 焼畑のヤマカブラを食べ継ぐ――おいしさに気づき、変化をめざして 河野 元子/14 結節点としての焼畑――外部者の関わりが生み出す可能性 増田 和也
(コラム)野ウサギ、ワラビ、サシバ舞う「くらしの山野」――子らと先人は出会う 今北 哲也

【番外編】漫画でわかる! 大学教員が焼畑をはじめてみた 原作・火野山ひろば/漫画・西村 佳美

最後は、漫画でも紹介している。

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さて、ここでは本書の内容は触れない。というか、上記のリンク先などを読んでほしい。代わりに私の思い出話を書く。

私は、20数年前から(1990年代)焼畑に興味を持ち、各地を訪ね歩いている。きっかけは、本書でも少し紹介されているが、村尾行一愛媛大学教授(当時)の「山村のルネサンス」を読んだことだった。ここに焼畑こそ育成林業の出発点であり、農林複合の技術だ、という言葉にピピピピと来たのである。そして焼き畑は森林破壊どころか、森林を育成する、いや森を救うのではないか、という思いから、全国各地の焼き畑をやっているところを訪ねたのだ。
もっとも、当時はギリギリの時代で、どんどん焼畑が消えていく過程でもあった。当時は5,6か所もまだ焼畑をやっているところをルポしたら本が書けるぞ、と思ったのだが、そもそも焼畑をやっているところがない。資料を探すのも、みんな昔の民俗的伝承になってしまっている。

宮崎県の椎葉村を訪ねたら、道が途中で崩れて通れないと言われ、林道づたいの抜け道を地元のタクシーで走り、途中タヌキの交通事故に出くわしたりしつつ到着した。が、そこから焼畑の場所までまたタクシーで走らねばならない。
ようやくたどりついたら、「ああ、遅かったね。もう火を入れて焼けたばかりだよ」……(泣)。

そこで海外の焼畑を求めてボルネオのイバン族の焼畑を訪ねていったら、前日火を入れたばかりだった。。。でも、まだ火は残っていて、そこに野菜の種子を撒くお手伝いをさせてもらった。さらに、別の場所で、わざわざ私のために火入れをやるという。そして私も火付けを体験させてもらう。森に火をつけるのは楽しい!

ちなみに、この当たりの体験談は『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)にも一部執筆しているのでご笑覧あれ。

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ボルネオの少数民族イバン族の焼畑。焼いた翌日だが、うっすらと煙が上がっていた。

ほかにも直前に雨が降ったから中止とか。現代的な林業と結びつけた焼畑をやっている宮崎県の相互造林にもお世話になった。そこで諸塚村の焼き畑跡地を訪ねて、アグロフォレストリーの片鱗も見る。そうそう放棄田でやる焼畑実験にも参加した。まあ、これは火入れだけで、森を燃やすのとは違う。

そんな取材というか経験を積み重ねたのだが、結局は本にはしなかった。ちょっと「世間の焼き畑」と「私の焼き畑」にはズレがあったのだ。文献などでも焼畑を扱うのは、民俗学、文化人類学、そして農業技術の面が強くて、ちょっと私のめざすテーマと違っていた。

私は森づくりの環境技術として取り上げたかったのだ。正直、民俗とかは興味ない(^^;)。焼畑やる前に神様に何を拝んで備えて……という作法はドーデモよい。焼畑をすることで土壌がどうなるのか、生態系がどう変化するのかを知りたかった。いわゆる「ファイヤーエコロジー」である。

まあ、本は書けなかったけど、それなりに楽しかった。取材と文献渉猟の勉強になった面もある。記事は、無理やり雑誌にねじ込んだこともあるが、ほとんど発表しないままなのはもったいなかったか。

さて、そこで本書であるが、当時より20年近く経って、今や焼畑の復興ブームらしい。焼畑フォーラム(2017年~)も開催されているらしく、それが契機で本書もまとめられたとか。先進国では唯一と言われた焼畑も、90年代を境に消滅していく。そこで焼畑技術も途切れたのだが、本書によると、2010年以降に再びつむぎ直しつつあるという。
読んでいると主体は研究者なので、焼畑研究そのものが広がっているらしい。私の目のつけどころは早すぎた? いや私のあきらめが早すぎたのか。まあ、私ができなかったことをやってくれたのだからヨシとしよう。
隔世の感があるが、ただ目を通すと、やはり農業と民俗の本になっている。うーむ。

ファイヤーエコロジーの切り口から焼畑を描くのなら、まだ切り込める面があるぞ。人類は、ホモ・エレクトス、ネアンデルタール人の時代から、火入れをしてきた。縄文文化も焼畑で成り立っていた面がある。阿蘇の山焼き、若草山の山焼きに共通点はあるか。地面を焼くことは人類にとって必然なのだろう。これは人類心理学とでもいう分野を切り開けるかもしれない。

とくに世界中で気候変動がらみの山火事・森林火災が相次ぐ時代となったのだ。アマゾンの森林火災と焼畑の違いは何か。なぜヨーロッパの焼き畑は消えて、日本の焼き畑は残ったのか。地球規模の焼き畑論も展開できる。

そして、今や火入れのコントロール技術(コントロールド・ファイヤー)が、今こそ世界中に必要かもしれない。

焼き畑の虫がまた騒ぎそうだ……。

 

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