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森と林業と田舎の本

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2022/04/15

「広葉樹林化」という名目で

本日の静岡新聞の一面で大きく報道されて、さらにYahoo!ニュースにも転載されたから、すでに読まれた人もいるだろうが、静岡市で幅15メートルの「列状間伐」が行われてしまった。

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この記事の写真を見て、「間伐」だと言い切れる人は少ないのではないか。伐採面積にして2ヘクタールに及ぶという。これが静岡県が導入した「森林づくり県民税」を利用した静岡県の「森の力再生事業」だというから、余計に情けなくなる。事件の概要は記事を読んでいただきたいが、ここでは少し別の情報と観点を。

まず、この事業は県が提案して森林組合が実施したというのだが、当初は誤りを認めなかった。そこで当事者(安池倫成さん)は川勝静岡県知事に手紙を送ったところ再調査することになり、謝罪に結びついたのだという。トップの指導がよい方向に動いたという点では喜ばしい。本当は、トップが現場の判断に介入する形で左右されることはよろしくないのだが……。
それに謝罪したのは、十分に説明しなかったことのようで、作業提案については誤りを認めていないように読める。

さて「森の力再生事業」だが、今回はどうやら広葉樹林化を図るための事業という位置づけのようだ。記事では、獣害などがひどくてヒノキは十分に育たないと判断したから、広葉樹林に変えるということらしい。それが、なぜこんな施業となったのか。
まだ製材用に出荷できる太い木は生えていないように見えるから、ようは事業のための事業、補助金ばらまくための補助事業という意図が透けて見える。

たしかに針葉樹林(人工林)に広葉樹を生やそうと思ったら、光がたっぷり地面に当たるように広い面積を切り開くというのはわかる。しかし、小規模皆伐(たとえば15メートル四方)ならともかく列状に幅15メートルで何百メートルというのはいかがなものか。しかも写真をよく見てほしいのだが、伐採跡の左手には、ほんの1,2列のヒノキを残して、また15メートル幅の伐採地が透けて見える。全体を見たらほとんど皆伐と変わらないだろう。それを間伐だと言い張るのは、おそらく間伐補助金を使うためなんだろうが、これを実行するのは安易で勇気がありすぎる。

お膝元の静岡大学では、人工林の広葉樹林化を研究していて、私も触れたことがある。

広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発

これは「広葉樹林化研究プロジェクト」の一環で、森林総研主導で全国規模で行われているようだ。しかし、どこを読んでも幅15メートルの間伐は登場しないぞ。それどころか通常の5メートル列状間伐での効果が示されている。静岡県は、どこから「15メートル列状間伐」という技術?を引っ張ってきたのだろう。

広葉樹林化は未確定技術であることを認識しつつ、慎重に行うべきだ。もちろん、現地にも足を運んで。机上のプランニングでは、見えない。

ちなみに、ちょうど今こんなクラウドファンディングも行われている。主催者はドイツに留学して、多様な森づくりの方法を模索して研究しているのだよ。いい加減な方法を安易に取り入れないでくれ。

人工林の樹種多様性を向上し、持続可能な森づくりを目指す!

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コメント

静岡市には20年ほど前に15mくらいの幅で100m以上数列伐採した箇所があります。ちょうど写真のような状況でした。事業者が林地開発逃れで列状伐採したのですが、現在では天然更新でしっかり広葉樹林化しています。国道沿いに面しているので、当初は伐採跡が目立っていましたが、今では景観上は森林になっています。確かに列状間伐という列状伐採(皆伐)といったほうが妥当だと思います。結果オーライのような施業ですが国策も皆伐志向の強い現在では、これもありだなと、私は肯定的に受け止めています。ただ残存列は問題ですね。その箇所の列幅は伐採列と同じでした。

以前にも例があるんですね。そこは幸いにも崩れず、時とともに広葉樹林化したわけでしょう。
残存列は伐採例の幅の約2倍取るのが一般的と思うのですが、今回はそうではない。そうした施業法の違いも影響するのかもしれません。
広葉樹林化は、「間伐」といわずにしっかり土地の特性を見極めて、小規模皆伐や保持林業などの手法で行ってほしいですね。

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