老齢林ほど成長する!?
5年ほど前に、Yahoo!ニュースで「老木ほど成長する! 森の扱いを考え直せ」という記事を書いた。
一般に老木は成長が鈍り、CO2の吸収能力も落ちると思われていたが、ネイチャー論文を元に「老木の方が成長量は多いのではないか?」とした記事だ。これを元にブラッシュアップして、『虚構の森』では「老木は成長しないから伐るべき?」という章を設けている。
このネイチャー論文のデータでは、世界中の老木(樹齢80年生のもの)を調べたもので、その中には日本の木もあったはずだが、十分な日本の森林データではなかった。
そこに森林総研の研究として、老齢になっても成長を続けている天然林がある が発表された。天然の老齢林である。
論文名は、Aboveground biomass increments over 26 years (1993–2019) in an old-growth cool-temperate forest in northern Japan(北日本の冷温帯の老齢林における26年間(1993年–2019年)の地上部バイオマスの増加)
ブナ、カツラ、ミズナラなどが生育する岩手県内の老齢林で1993年から続けている長期観測のデータに基づいて、地上部バイオマスの変化を調べました(写真)。その結果、この森林では、地形条件にかかわらず2019年までの26年間にわたって、ほぼ継続的にバイオマスが増加していたことがわかりました(図)。また、サイズの大きな樹木がバイオマスの増加に特に貢献していること、期間中に枯れた樹木があると近隣の樹木が旺盛に成長して埋め合わせをしていることもわかりました。
本研究の成果は、炭素の貯蔵庫であるだけでなく吸収する役割も果たしている老齢林が日本にもあることを示したものです。
こちらは森林そのものを扱っている点がネイチャーと違うのかな? 老木だけでなく、若木も含む。枯れた木が腐りCO2を排出することも計算内。ほぼ30年間の観測データが元になっている。
こつこつ、このような研究結果が各地から出ているんだから、林野庁も「60年生のスギが老齢で、成長しないから伐る」という論法を引っ込めた方がいいよ。
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