盗伐監視システムになるか「FAMOST」
林野庁が「FAMOST」という盗伐を監視するためのシステムをつくった、というのは小耳に挟んでいた。が、具体的な内容は知らなかったのだが……意外なところで生まれた経緯を知る。日経オンラインの記事だ。
この記事は、「官僚再興」というシリーズで、霞が関の新しい動きを紹介する連載なんだが、まさかここに。
そもそも「FAMOST」とは「森林の変化点抽出プログラム」なのだったそうだ。地図アプリを使って森林の変化を見つけることができる、というアイデアで、結果として違法伐採の有無や災害による森林の減少が自動的にわかるというものだ。今年度から自治体向けに運用が始まっているという。また、この記事の趣旨は、本業とは異なる事業も打ち出せる「政策オープンラボ」という枠組みを紹介するものだった。これは自身の分野外のことに20%だけ力を割いてもいいよ、というつましいシステムである(^^;)。
実際に開発に取り組んだのは、4年前に農水省の大臣官房文書課にいた熱田尊さんで、林野系ではない。ただアメリカ留学時に知ったデータ分析の手法を、日本の林業や農地政策にも生かそうとして思いついたのが、クラウド上で地球の衛星画像を解析できる米グーグルの地理情報プラットフォームの利用なのだった。
スタート時は、農地や森林などに詳しい国際部や農村振興局、林野庁などの官僚に声をかけ6人のメンバーで発足。さらに農村政策部長と森林整備部長にメンターとなってもらい……という根回しの良さは、官僚的(笑)。
FAMOSTの仕組みは簡単で、Google earth Engineを使って、ある地域の時間差のある衛星画像を比べて、反射された光の波長から、地上にあるのが植物や地表、コンクリート……といった読み取れるのだ。基準年と比べた森林の変化を自動的に色で示せば、変化がわかる。雪があると少し誤差が出るが、それ以外なら98%の正答率だという。なお撮影される画像は、同一地点を5日程度に1回撮影されているし、解像度も 10m~と肉眼でも伐採地等をおおよそ確認できる精度があるという。
自治体の GIS 情報と重ね合わせると、伐採届出制度に基づく伐採状況の確認や、違法伐採の早期発見、林地開発箇所の確認、災害の発生状況の確認等も行えるわけだ。
しかも市町村ごとに森林の変化した点を抽出可能だから、自治体向きだ。操作はきわめて簡単で、市町村名、衛星の撮影時期の入力(2時期)、抽出下限面積の設定の3つの設定を行うだけで、当該市町村における伐採等の変化箇所の抽出結果を表示できるという。
これ、特別なアプリを使わず、ネット上で処理できるというんだから、なんか、プログラムよりGoogleのすごさを感じる。
詳しいことは自分で調べてもらいたいが、期せずして盗伐地帯や風水害地帯を現地に行かずに洗い出せるわけだ。もっとも、盗伐が終わった跡地に気づいても遅い。自治体担当者が、毎日でもこのシステムを起動させておけば、無許可で伐採された初日に気づけるはず。やっぱりマンパワーではある。ちなみに、オープンラボでつくったプログラムは、昨年度から林野庁に政策として引き継いでいる。
でも……肝心の熱田さんは、現在は農林中央金庫営業企画部の部長代理として出向しているそう。この異動の多さこそ、官僚機構の問題点かもね。
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