「主伐するとカーボンニュートラル」理論・林野庁版
Yahoo!ニュースで「木を伐り木材を使えば脱炭素? 摩訶不思議な理屈を断ずる」を書いたわけだが、これを読んである人から情報を提供していただいた。
それが、「主伐・再造林がカーボンニュートラルに欠かせない!」という理論。元ネタはアメリカの論文らしいのだが、それを林野庁が使っているというのだ。ある検討会(J-クレジット制度運営委員会・第2回森林⼩委員会)の資料として示されたものだ。
そこで私も勉強してみることにしてみた。いかなる理論で、皆伐した後に元にもどるまで何十年もかかる再造林がカーボンニュートラル(どころか、年々炭素を蓄積し続けるようだが。)になると説明できるのか。
この図である。なんかすごいぞ。伐っても長命な木材製品、短命な木材製品、埋め立て、リター(落葉落枝)、土壌、バイオマス、そして再造林した樹木に炭素はたまり続けるらしい。すごいぞ。これで林業は二酸化炭素の吸収源だ。気候変動なんか怖くない!
となりますか。ええと、どこから突っこめばいいのかな(^^;)。短命と言っても30年ぐらい使われ続けるようだが。長命は40年? 代替製品てなんだ。合板か。バイオマスって燃やすんだよね。ここが肥大しているみたい。
皆さん、ぜひ考えてください。林業と地球環境の関係のよい頭の体操になりますよ。そして理解できたら教えてください。この図のおかしな点を。しっかり理論武装しておかないと、林野庁の言い分を鵜呑みにしてしまうからね。この小委員会のメンバーは見事ハマったらしい。カルト宗教みたいに。怖いよ。差し出すのは献金どころか地球の未来だから。
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多分ですが、代替材料はSubstitution effects (代替効果)のことだと思います。下記の道立林試の表のように例えば鋼材は製造時に700kg-C/tの炭素を放出し、製品中には1kg-Cたりとも炭素を含まないので炭素収支は+700になります。建築物で鋼材を使用する部分を合板で”代替”すると炭素収支は-233になります。…という理論です。ただ問題はLCA(ライフサイクルアセスメント)が絡んできてこれがいい加減なので...イマイチ信用出来ないです。LCAとは製造時以外での炭素排出、建築物なら取壊・処分時の炭素排出を想定することです。合板で代替できてもそれで寿命が極端に短くなって短期に何度も建て替えが必要なら結果として代替効果はないということもあります。なので自分はこの効果を信じておりません...
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/0902/1.htm
投稿: 0 | 2022/07/26 09:10
落語の「壺算」と同じ手法のごまかしです。どこかの論文ということですが、結論ありきのつじつま合わせのどうでも良い類で参考にもなりません。コンサルタントの効果の算定と同じく最初から決まっている結論に導くだけのものです。もっと悪く言えば国内の専門家には頼みづらいから海外の肩書だけを使わせてもらった類のものでしょう。要するにヤラセと同じです。皆伐を行い、はげ山を作り、造林から始まり、また皆伐と林野庁の持続可能を狙っただけのものです。議論するだけ無駄というものです。
投稿: フジワラ | 2022/07/26 10:20
細かく見ると、木材の伐期を30~40年に見積もっていたり、製材の歩留りやバイオマスのエネルギー変換率など怪しい点がいくつもあります。
林野庁の狙いは、気候変動を止めることではなく、その理屈を持ち出して主伐を増やすこと。主伐すれば木材生産量を増やせます。木材生産は即売上につながり、林業が活性化したように見えるから。林業が「成長産業」になったと言えば、それをてがけた自分も出世できるから。自分が引退した将来の環境のことは考えていないでしょうね。
投稿: 田中淳夫 | 2022/07/27 11:44