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森と林業と田舎の本

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2022年8月

2022/08/31

迷子の迷子の糞虫ちゃんin若草山

超大型台風が来襲している。おかげで今週後半から雨が続くという予報が出た。それでは取材に出られぬ。

そこで雨(昨日)と雨(明日)の合間の今日しかチャンスはない、と朝から春日大社の森を抜けて、若草山に登ってきた。幸い、青空が広がっている。が、それは日陰もないということを意味する。かんかん照りの中を草原状の若草山に登ると、強烈な日差しにやられる。逃げ場がない。頭がクラクラした。

いや、何も山登りが目的ではない。ちゃんとした仕事なのだよ……。最大の目的は、草原とシカの写真を撮ること。

残念ながら草原にシカはいなかった。こんな日差しの中は、シカも暑くていやなんだろうなあ。側溝の水の中に使っているシカもいたもの。おかげでシカなしの写真になってしまった。シカたがない(洒落じゃない)。

それでも、収穫はあった。

ちょっと日陰の木の下に、シカの糞を運ぶ糞虫(多分、ルリコガネ)を発見。

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デカい糞を転がしながら運んでおった。思わず観察しながら撮影する。なかなか上手く転がすじゃないか。。。
と思った時であった。なぜか、糞虫はいきなり糞を手放し、スタスタと行ってしまう。おい、どうした、糞はいらないのか。
が、糞を捨てたわけではなさそうだ。糞からつかず離れずの距離で周りをグルグル回る。しばらく落ち葉の中にもぐったり、また糞に近づいたり。

ははん。どうやら道に迷ったようだ。巣まで落ち葉の中をどう進むのかわからなくなったみたい。おそらく臭いをつけているのだろうが、それが混乱したのか。糞を持ち帰る場所がわからん、と混乱している様子である。迷子の迷子の糞虫ちゃん。
思わず、頑張れ!と応援する(笑)。わんわんとは吠えないけど。

そして、しばらくしたら糞虫はまた糞を転がし始めた。どうやら帰り道を発見したらしい。迷子終了!
やがて、ある落ち葉の下に糞とともに潜り込んだ。

こうなると、その上の落ち葉を剥がしたくなるぜ(⌒ー⌒)。

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わあ、こんなに糞をため込んでいたのか。穴を掘らずに、落ち葉の下に巣をつくっていた。食べ応えあるだろう。

もちろん、また落ち葉をかぶせてやる。

糞虫は、奈良公園の生態系の要と言われている。莫大なシカの糞を片づけつつ、土壌に戻しているのだから。

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本日は摂氏36度だった。

 

 

 

2022/08/30

『獣害列島』は予言の書!

明日発売予定の週刊現代の記事に、私のコメントが載るはずである。電話取材を受けたから。

テーマは、某タレントの不倫疑惑について……ではなく、東京のアニマルハウスについて。

何これ?私もとなったのだが、東京都世田谷区の高級住宅街に通称アニマルハウスと呼ばれている空き家があるそうだ。それも10軒ぐらいまとまって。そこにさまざまな野生動物が住み着いているというのである。タヌキ、ハクビシン、アライグマ……。それに関しての取材というかコメントを求められた。

これは気になりますねえ。そのアニマルハウスを訪ねてみたくなった。30分以上話したのかと思うが、使われるのは1、2行だろう。どんな記事になるのかは、お楽しみに。

ただ大都会に野生動物が出没することに関しては、私も言いたいことがある。その点を『獣害列島』で取り上げているからだ。(反対か、『獣害列島』を読んでコメントを求めてきたのだ。)

『獣害列島』では、奥山から里山へ、村から町へ、町から地方都市部へと野生動物が進出している現状を指摘して、「近く大都会でも野生動物が頻繁に出没するようになるだろう」と予測というか予言をした。

その点は講演でもしゃべっているのだが、残念ながら反応はイマイチ。(都会の住民は)みんなピンと来ていないみたいである。動物が増えて、獣害が発生していることは知っていても、それは田舎の範疇、せいぜい地方の中小都市にとどまっており、東京のような大都会にはさすがに出てこないだろう、わずかに見かけたらニュースになるぐらいで、非日常的なことと思いがちだ。

しかし、出没するのではなく、都会に住み着いている、つまりねぐらを得て、餌を調達して、繁殖までするケースが増えているのだ。私は近い将来と書いたが、どうやら早くも現実になっているようだ。

ちなみに本日の朝日新聞「私の視点」に、動物に「法人格」 命ある「権利の主体」に という記事がある。記事後半は有料だが、これは単に愛護する、保護するだけでなく、動物の権利として扱う必要があり、欧米では法人格を与える動きのあることを記している。日本の法律は、動物は法的には「物」扱いだが、人物とか企業、NPOなどの「法人」と同じような人格を与える権利の主体とする発想だ。

動物に法人格を与えることは、不用意に殺されたり虐待されたりしない権利、としている。またペットに財産を継承させたり、死傷した場合の高額慰謝料も可能になるかもしれない。

実は、この点を『獣害列島』では取り上げたのだよ。ノンヒューマン・パーソンズとして。人間ではないけど人間と同じ格を与える動きが世界的にある。その点を、私はYahoo!ニュースでも「ノンヒューマン・パーソンズ~動物に“人格”が認められる時代がやってきた」を書いている。

この時も世間の反応はイマイチだったのだが(^^;)、徐々に広がりつつあるようだ。先んじるものは、注目を集めないのよ。だが、これも予言だね。『獣害列島』は予言の書だったのだよ( ̄^ ̄)。エヘン

ちなみに10月には、岡山の高校に、動物の話をしにいくことになった。獣害激化、アニマルウェルフェア、そしてノンヒューマン・パーソンズ……。ここに奈良のシカの話を加えたら完璧だね(^_-)-☆。

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2022/08/29

FORESTRISEで本を売りたい

FORESTRISE(次世代森林産業展)のHPを見ていた。9月14日~16日に東京ビッグハットで開かれる国際見本市である。

ここにどんなブースが出展されるのかと見ていると、フランウッドのニッポニア木材が出展していた。フランウッドの実物見たい人、ここに行けばいいですよ。

で、フォレストジャーナルも出展している。そういや19年の長野では、『絶望の林業』を売りまくったのであった。その際に創刊間近のフォレストジャーナル編集部の面々に手伝っていただいたことはよい思い出だ。300冊くらい売ったんだっけ。思えば出版直前だったのだよ。店頭にナラ部前にこんなに売ったのだから勢いがつく。これだけ売れたのは皆さまのおかげです<(_ _)>

どうせなら今年は『フィンランド 虚像の森』を売れないかなあ、誰か販売ブースを貸していただき売ってくれないかなあ(他力本願)、と思っていたら、なんとフィンランド大使館も出展していた! しかも3日目にはセミナーまで開いているではないか。

バリューチェーンに基づく正確かつデジタル化された森林データの活用についてフィンランドは、森林から消費者までの林業活動を強化するため、正確かつ視覚的なリモートセンシングデータを利用するなど、高性能なデジタルスマート林業を上手に運用していることでよく知られています。本講演では、世界中のデジタル化された林業バリューチェーンの一部として、リモートセンシングにより取集したデータを日々の業務にどのように活用しているのか、林業に関わる4名の講師が紹介します。

ここで、『フィンランド 虚像の森』を販売したい! ……無理だろうなあ(^^;)。

そして思い出したのが、こちらの記事。

フィンランドに学ぶ、森林資源の「サーキュラー」な使い方

こちらもフィンランド大使館商務部が登場するのだが、そこで林業のデジタル化、サーキュラー(循環)化を謳っている。森林の知財売りなんて興味深い。木材によるバイオプラスチックなどもあるが、『フィンランド 虚像の森』によるとまだ研究段階。全然経済に乗っかっていないとのことである。しかし、果敢に新ビジネスを研究している点は伝わる。

ただ、そこで気がつくのだ。林業の経済化は、必ずしも森林のサーキュラーにはつながらないことを。むしろ林業が盛んになればなるほど、森林を過剰利用してしまうことに。これは経済学というより心理学、あるいは行動経済学の範疇だが、人は成功すると止まらない止められないのである。適度に抑えることの難しさは古今東西の経済の歴史が示している。

ならば、日本のように林業が衰退していく方が、結果的にサーキュラーエコノミクス(循環型経済)になるのではないか。。。。ダメダメの産業ゆえの良さもあるのではないか。

反論はあるだろう(笑)が、本当に論理的に崩せるかな。人が手を入れないと森はダメになる、なんて手垢のついた論法はダメだからね。もう否定されている。

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フィンランドに残された樹齢700年の木々のある森

 

 

2022/08/28

生物多様性で税制優遇。新たなビジネスチャンス?

 環境省が、面白い?制度をつくろうとしている。生物多様性に貢献している民間に、不動産取得税や固定資産税などを軽減する制度を新設しようというのだ。

具体的には、希少動植物の生息や、原生林などを保護していれば、生物多様性の保全に貢献しているとするもの。具体的な制度内容はこれから詰めるが、来年度から始めるというのだが……。

その背景には、昨年のサミットで合意した「30by30」だ。これ、本ブログでも紹介したかな?

ほとんど知られていない国際的な「自然への誓約」

全然わからんけど「自然関連財務開示タスクフォース」

30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、これをまとめた言葉だ。2021年6月のG7サミットで、30年までに陸地と海域のそれぞれ30%以上を健全な生態系として保護する目標という意味。「ネイチャーポジティブ」というゴールを設けている。

2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標である。

環境省は、この目標を達するために、民間の土地でも自然度を高める手段として税制で対応しようというわけ。国の定めた保護地域は、現時点で陸域の20.5%、海域の13.3%である。。環境省はほかにも国立公園や国定公園のエリアを拡充する方針を決めているが、民間の森林や里山の保全を進めたいのだ

まだ細部が決まっていないのでわからないが、そもそも自然度をいかに判定するのか。絶滅危惧種の存在とか、生物の種類の数(多様性)を尺度にしようというようだ。その基準はおいといて、誰が判定するか。素人では無理だ。そもそも、どの植物、あるいは動物が絶滅危惧なのか種名だってわからない。何を持って原生林と決めつけるのか。となると、専門家が必要だろう。

研究者もよいが、意外と昆虫マニアとか植物観察を趣味にしている人も使えるかもしれない。おそらく自然度判定師のような国家資格を設けて、合格者に発注することになる。

ここで環境省の資格認定ビジネスが登場し、資格取得者はそれを元にビジネスを起こせる。自然度認証制度みたいな。

森林インストラクターとか樹木医みたいになるかなあ。しかし、依頼して「不合格!」なんていうと、金を払わない土地所有者も出るに違いない。だめ出しする前にコンサルティングを行って、改善点を指摘するビジネスもできる。金を払わない相手を訴える弁護士も活躍する(笑)。おお、どんどん仕事が増えるぞ。しかし、賄賂渡して無理やり合格判定させる犯罪も登場し……う~、ケチな犯罪だ(笑)。そもそも税制優遇ぐらいで、手間のかかる認定を受ける手を挙げる民間がいるだろうか。

まさか森林認証制度と同じになったりして (゚o゚;) 。

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こんな棚田地帯も認定されるかな? 生駒山だけど。

 

 

 

2022/08/27

町並み保存か、町並み創生か

先日岡山に行った際、帰り道に道草して真庭市を訪れた。めざすは銘建工業……ではなく、町並み保存地区である。しっかり観光するのだ(^o^)。

ここは合併前の勝山町に残る江戸時代の町並みということだった。たしか20年ぐらい前にも訪れているのだが、当時はあまり観光化もしていず、目立った地域でもなかった。城下町などの木造家屋の町並みを小京都とか名付けて伝統的な歴史風情を売り出す手法は各地にあるが、ここもその一つ。

ただ正直言って、さほど伝統的な家屋が多いわけではない。モルタル家屋や店舗も多く、むしろ昭和レトロを感じさせる(^^;)。

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これがもっとも木造家屋の目立つ通りの一角かな。

そのうえ私の訪れたのが平日の朝なのだ。空いている店もあまりないし、人通りも少ない…というかほとんどない。困ってしまう(^^;)。江戸時代の武家屋敷なども残されていたのだが、そもそも2万5000石ほどの小藩だけに城下町や城自体も小さかったみたい。

代わりに目に止まったのが、のれん。

20220824-102331酒屋?

20220824-102111バイク店

20220824-102102はて? 木挽きか(そんな職業、今はないだろー)

これがいい。かかっているのは通常の住宅もあれば店舗もあるが、店の扱う商品を描いたりもする。ひのき草木染めだそうだ。こちらの方が木造家屋の町並みより映える。のれんの町並みの方を売り出す方がいいんじゃないか。

こちらは歴史があるわけではなく、いわば町並み創生だろう。誰か仕掛け人がいるのかどうか、通りの家が思い思いの柄ののれんをかけると、一気に町並みがおしゃれになる。

中途半端な江戸時代の町並みを売り物にするより“のれんの街”を強調した方がよいように思う。安上がりだし。

私も奮発して、こんな草木染めののれんをお土産に買おうか、と思った。どこにかけるのか悩むが、自宅の部屋の壁でも楽しめる。でも、高いかなあ、大きさも柄も気に入るだろうか。。。と考えながら町並みを歩く。

残念ながら、草木染めの店は閉まっていた。早すぎたかなあ。

2022/08/26

Y!ニュース「スギやヒノキを脱炭素の旗手に!…」を書いた裏側

Yahoo!ニュースに「スギやヒノキを脱炭素の旗手に!独自の技術で生まれ変わらせる」を執筆しました。

実は今週、こっそりと?フランウッドの製造工場を見に行ってきたのだった。まあ、見てきただけで終わらせちゃイカンよな、と記事にしようと悪戦苦闘したのだが、まだフランウッドの生産量はわずかなので、すでに今年中に出来上がるフランウッドの行き先は決まっている。つまり現在は注文できません(^^;)。興味のある方、使ってみたい方は、来年までお待ちください。

さて、それで執筆したものの、最初に仮につけたタイトルが「日本の木材を脱炭素の旗手に……」だった。後で吟味するつもりだったのに、忘れてそのままアップしてしまう。アカン、こんな地味なタイトルでは、と思ったがすでに遅し。あわてて出だしだけを「スギやヒノキを」に変えたのだが、TwitterやFacebookに転送した分では最初のままだ(泣)。

タイトルによってアクセス数はガラリと変わるんだよなあ。痛恨のミス。もっとも、ではどんなタイトルをつけたらよいのか、と言うと迷う。脱炭素なんて言葉では、あまり反応がないのはわかっている。ケボニー化木材の際は「針葉樹材を広葉樹材に~」というのがキャッチーだったみたいだが、同じことはしたくないし。

本当は「スギやヒノキが地球の救世主に!」ぐらいの方がよいのだが、そんな煽り記事にはしたくない(笑)。

さて、どんなタイトルがよかっただろうか。今からでも目を引くフレーズを思いつかないだろうか。次に活かすから。

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フランウッドの在庫。

2022/08/25

蛇抜けの本場、皆伐中止に

木曽の「妻籠を愛する会」から会報が届いた。以前、私が訪れて「蛇抜け」の取材をしたところである。目を通して近況欄の一つの項目に目がとまった。

私は、2021年1月のYahoo!ニュースで

「蛇抜け」の本場で進む国有林の伐採計画。土石流の歴史に学べ

という記事を書いている。非常に土石流(蛇抜け)の多いオダル山の分収育林(緑のオーナー制度)の林地が、皆伐されようとしているという記事である。それに関するアンサーが記されていたのだ。

今年6月22日に、木曽森林管理署南木曽支所から報告があり、緑のオーナーと契約の変更が行われて、皆伐せずに育林を続けることになったというのである。事実上、皆伐の撤回だろう。あの山は、どう見ても皆伐するべきではなく、択伐・間伐で少しずつ本数を減らして大木を育てるのがよい。山は崩れにくくなるし、景観も守れる。

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背後の山が、分収育林地

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土壌は薄く、地下は真砂土が続く。火山岩が風化して、もっとも崩れやすい土質だ。

この決定までには、おそらく裏では多くの人が動いて汗をかいたのだろうな、と想像する。林野庁も英断した、のかさせられたのかわからない(^^;)が、ともかく一安心である。もちろん、木を伐らなくても降雨量が膨れ上がれば崩壊する可能性は強まるのだが……。

 

2022/08/24

玄関先の風景・スギとシンテッポウユリ

玄関先にスギが芽吹いたことは、たまに紹介しているが、この夏、ひときわ大きくなりだした。

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冬の間は高さ3センチぐらいで赤茶けて枯れたみたいだったのにね。。。

Photo_20220824212901冬の頃

そのうち階段の段差を越えそうで、怖い。

またシンテッポウユリ(新鉄砲百合)が生えていることは以前も紹介したが、今年はかなり数が増えている。花はいかにもユリっぽくてよいのだが、おそるべき繁殖力を持っている。街路樹にも見かけだしたし、山の中でも生えている。

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これは外来種というより、テッポウユリと台湾のタカサゴユリの雑種で園芸種というべきだが、親の遺伝子より繁殖力を強めた感じ。種子がお得手どんどん飛散するのだ。

環境省の「生態系被害防止外来種リスト」「その他の総合対策外来種」に指定されている。このまま増えるとヤバいな。でも、花はそこそこきれいだし、秋になるとユリネが採れる。自然界だけでなく、街の中でも時間とともに変化するものだ。

自宅の玄関先を観察するだけで、いろいろ自然界の動きがわかる、とはいうものの、なんだかなあ。

 

2022/08/23

「監訳」というお仕事

いよいよ『フィンランド 虚像の森』が刊行された。

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言うまでもないが、本書の著者はフィンランド人4人。アンッシ・ヨキランタ、ペッカ・ユンッティ、アンナ・ルオホネン、イェンニ・ライナ で、翻訳は上山美保子さん。私は監訳である。

監訳って? まあ、その、一言でいうとだね。日本語を日本語に訳す仕事(^^;)\(-_-メ;)。 

世界各国の言葉に通じている私だが、フィンランド語だけは堪能ではないので監訳となった(^^;)。ウソ

本当のところ、本書の出版が決まったときに、私に「解説」を書けという依頼があったことで始まった。そこに用語チェックも加わったのだが、下訳段階で目を通すと、とても用語だけを確認すれば済む次元ではないことがわかり、不肖ワタクシが、全面的に内容を見ることになったのである。

なぜなら上山氏はフィンランドに住んだこともあれば仕事でもフィンランドと関わっており、フィンランド語には堪能なのであろうが、いかんせん森林科学や林業関係の事情にまったく触れていない。いきおい直訳になるのだが、それが(林業的に)何を意味するのか探らねばならない。

たとえば、よく出てきたものに「持続的成長管理型森林伐採」なんて言葉がある。これ、何? 森林伐採は林業と訳せばよいのかと思うが、その前の持続的成長とは、管理とは。そもそも、どんな作業をしている状態で、この言葉を使っているのか。結局、前後の文脈を探り、数ページ遡ったり、同じ言葉が出てくる別の部分と突き合わせたりを繰り返す。

そして、どうやらドイツなどの林業を真似ようとする動きだと想像できた。では、近自然林業か。恒続林施業か。今のドイツ林業の事情を捉えるのなら近自然林業でもよいのだが、果たしてそれで日本人に通じるか。なじみのあるのは恒続林の方ではないか。Google検索をしても、近自然より恒続林の方が圧倒的に多い。両者は厳密には違うが重なり合っている部分も多いし、「恒続林」にしよう! ただし、恒続林そのものを知らない人も多いだろうから、それなりに恒続林の説明も挿入する。

悩みに悩んで、こうやって一つのピースを埋めるのである。1ページを読むのに何時間かかるか。

どうしても意味がわからない場合、原文を見てみたが、フィンランド語だからわかるわけない。試みにGoogle翻訳してみるが、余計にわからない。いっそ超訳したくなる。意訳を超えた翻訳である。フィンランド人の言語感覚というか、頭の中の文法を探る面もある。

しかし、翻訳とは大変な作業だな、と思い知る。単に日本語に置き換えるだけではすまない。日本人に通じるような言葉に置き換える、のである。かといって著者の文章は尊重しなければならない。それ、間違っているよ、と私の知識で気がついても、勝手に直してもよいのかどうか。

モグラが植林した苗の根を食い荒らす、とあるが、モグラは動物食であり植物はかじらないはず。そこで問い合わせてもらうと、原文はたしかにモグラになっているようなのだが、根を荒らす正体はヤチネズミであることがわかる。モグラの掘った穴にネズミが入って根をかじるのである。これは日本でも起きることだ。日本の農家にも、「モグラが作物の根をかじる」と発言している人がいるのを私は聞いている。ここまで追求して、ようやくヤチネズミに直せる。

そんな繰り返しだ。こんな分厚い本を、おそらく全文を5~6回読み返しただろう。もう自分で執筆した本より多いヾ(- -;)。

ともあれ勉強になった。次は何語の本を訳そうか。。。オイ

 

2022/08/22

『フィンランド虚像の森』発売前ランキングが!

フィンランド 虚像の森』がいよいよ発売。明日……と思っていたら明後日だった件。

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いや、まあ、それはいいと思うんだ。うん。実際に書店に納入するのは、場所によっては(都内とか)今日ぐらいから行われており、明日店頭に並べるところもあるんじゃないか。また明後日に並べるのが間に合わない書店だってある。うん。みんな、忘れてくれ。

が、本日時点ではまだ発売していないことは事実だ。

そこでAmazonを見てみる。

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もうランキングしていた(^o^)。エコロジー部門で4位。

このエコロジー部門?というのがよくわからんが、発売前からランキング入りしているのは幸先よい。先行予約がそこそこ伸びているからではないか。ちなみに1位は、『暮らしの図鑑 エコな毎日』というハウツウ本。2位は『SDGsの不都合な真実』、3位は『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』。

ここで面白いのは、本日(22日)午前10時に見たときは13位だったのだ。ところが午後5時に見たら4位になっていたこと。急伸だ。

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なお拙著『絶望の林業』はノンフィクション部門だったし、『虚構の森』は環境問題部門だった。この分け方、なんだかなあ。エコロジーと環境問題はどう線引きしているんだ。分類によって順位は大きく変わるはず。『フィンランド 虚像の森』も、本国ではノンフィクションとして出版されている。

ともあれ明日だ。

 

2022/08/21

久々にゴルフ本、出版!?

私がゴルフ場ジャーナリストであることを知っている人は少ない。

以前は、複数のゴルフ雑誌に記事を書いていたし、連載も何年か続けた。そして、ちゃんとゴルフ場に関する著作があるのだ。『ゴルフ場は自然がいっぱい』もしくは『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』である。前者はちくま新書から、後者はそれを大幅に加筆して電子書籍として。ちょっと検索したらAmazonなどに出てくる。

ちなみにゴルフ場ジャーナリストである。ゴルフジャーナリストではない。だいたい私はゴルフをしたこともない。あくまでゴルフ場という環境を論じているのだ。あくまで「ゴルフ場」を論じるジャーナリスト(^o^)。

さて、そんな私が、なんとまたもゴルフ本を。『ゴルフ3分間教養』という。

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もっとも執筆したのは、250ページほどの本のうち4ページだけであるが。。。

正確に言うと、以前ゴルフ雑誌にエッセイを書いた。そのコーナーが「ゴルフ3分間教養」である。それは毎回筆者の変わる連載記事であったが、それをまとめて本にすることになったのだ。

そこで記事を収録したいという打診があったのだが、その際に全面的に書き直して分量も増やした。つまり書き下ろしというわけだ( ̄^ ̄)。

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ちなみに書いたのは、養蜂のこと。同姓同名の田中淳夫氏も紹介している。やっぱり養蜂ジャーナリストにもなるか。

これから私以外の人の書いた記事も読んで、ゴルフの勉強をしようかと思う。またゴルフ雑誌から依頼があるかもしれないではないか(⌒ー⌒)。

 

 

2022/08/20

実験・素人間伐の末路?

我がタナカ山林は、2014年に一度、半分皆伐している。雑木林の木々を全部伐ってすっきりさせたのだ。

実はそれだけではない。その際に残り半分のうちのさらに半分を間伐した。ただし、太い高い木を残し、下層のブッシュとなっていた灌木だけを伐採したのである。

なぜ、こんなことをしたのか。まあ、単純に比較してみようと思ったのさ(^o^)。

一般に雑木林を放置しておくと、ブッシュになって徐々に多様性が失われていく。見た目も悪い。そこで間伐をしてきれいにしようと考える。しかし林業のような経済林ではないから、あまりプロを雇えない。そこで森林ボランティアなどが活躍する。
そこまではいいのだが……森林ボランティアは、たいてい太い木を残して細い木や草ばかりを伐る。太い木は見映えがよいので残して、その間をすっきりしたら見通しもよくなり景観は改善される……と思うからだ。実際、太い木を伐るのは素人には無理だし。

だが、そうした間伐をすると、その当初は見通しがよくなったと喜ぶが、実は次世代の稚樹を伐ってしまい、高齢樹だけを残すわけで、森の少子高齢化を進めてしまう。しかも林冠は開かれず光が入ってこないから、新たな木々も育ちにくい。もし雑木林を若がらせ、明るい森にしたければ、いったん皆伐をした方がよいとされている。

というわけで、私は実験してみたのだ。半分を皆伐した。それはプロとセミプロにお願いした。たしか本ブログでも成り行きを逐一紹介したはず。そちらの変化も折に触れて紹介したが、実はその際に残りの森にも手を付けたのだ。

つまり、半分の半分をそのまま残して放置し、残りの半分の半分を下層間伐だけをした。こちらは私一人で行う。それでもその時はわりと光が差し込んだ。

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これは2016年撮影。林内から道路方面を映している。2年近く経っているが、下層にはほとんど草木が育っていない。案の定、間伐だけでは光量が足りないのだなあ。

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こちらは2017年。道路から森を撮影。林床には萌芽が伸びているだけで、やはりあまり植生は回復していない。思っていた以上に、育たないものである。

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そこで、これは昨日。2022年だ。おおお、かなり下層に育ちだしたか。もうすぐ中層になるかも。伐採から8年、上記の写真から5年でここまで変わるか。素人の下層間伐だけでも、時間をかければ植生は回復するわけだ。

ところで手を付けなかった部分、つまり半分の半分はどうなっているか。それが意外な状況である。なぜなら台風で、随分多くの木が倒れたからだ。グチャグチャになってしまって、片づけるのも諦めてしまった。だって倒木・かかり木は怖いからね。放置すると、それらの木もそのうち次の大風で揺すられて地面に倒れたり、腐ったりして、徐々に片づきだした。またナラ枯れも進んだ。伐れないと放置した木が枯れて倒れる。そしてわりと明るい森になったのである。

面白い結果である。想像どおりにはならないものだ。皆伐したところは、ササが入ったうえに早生樹が茂り、ボサボサの森になってしまったが、また私が手を入れている。間伐もするし、アジサイやセンダンを植えたりもする。

実験?はまだ続く。今後森はどうなるか観察を続けよう。

 

 

2022/08/19

「外資が森を奪う」理由は水から光へ

林野庁などで、外国資本の森林土地の買収に関する統計が出た。

外国資本による森林取得に関する調査の結果について

若干増えたみたいだが、大勢は例年とそんなに変わらないだろう。たしかに円安もあって、日本は買いやすくなっている。とくに森林土地は安い。購入したくなる外国人も増えるに違いない。

それが、何の問題か、日本人が持っている土地だって扱いメチャクチャじゃねえか……という議論はさておき、その理由として挙げられているのが少しずつ変わってきた。

ここで少し振り返りたいのだが、日本で外資が日本の森林を購入している、と騒がれ始めてかれこれ10数年経つ。当初言われていたのは、「水を狙っている」だった。森林は水源林であり、森林を購入して井戸を掘って水を汲み出して中国に運ぶのだ、と騒ぐアホがいたのである。

それが、やがて中国人が移住して自治体を乗っ取るとか、自衛隊基地を監視しているとかの飛ばし記事が横溢し始めた。そんな説を唱える輩も、それを信じる連中も頭悪いなあ、と思っていたのだが、近年はそれが再生可能エネルギーになってきた。

私なんか、再生可能エネルギーのため、とか書かれると、ははん、木を伐って燃料にするおか、バイオマス発電所を建てるのか、と思ってしまうのだが、実はそれはあまりない。燃料は海外から運んでくるのが安上がりで簡単だからだ。

そこで登場するのがメガソーラーの建設ではないか、という疑いだ。たしかにメガソーラーは数十ヘクタールの土地が必要で、それはたいてい山林で、また経営母体に外資が多いという事実はある。

多少、現実味のある発想ではある。水の次は光というわけか。正確に言うと、日本のような気象条件で日光を求めるのは馬鹿げていて、狙うのはFITの電力価格である。電気代を吸い上げようというわけだ。

ただ、これもあまり適切ではない。外資は、メガソーラーをつくるために面倒な手間をかけて山林を集約して買うことはあまりない。
そもそもメガソーラーの適地となっているのは、たいていゴルフ場もしくはゴルフ場建設予定地であることが多い。バブルの頃に強引な地上げをして土地を取得したものの、バブル崩壊で建設できなかったり、開場したものの経営難に陥ったところ。それを外資が買い取っている。そんな場合、ゴルフ場予定地の買い取りとなり、なかなか表向きは森林購入とはならないだろう。

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吉野町のメガソーラーもゴルフ場建設予定地だったそうな。蔵王堂がすぐ側。

 

 

2022/08/18

山林の相続拒否ができる新制度?

山林なんて、買うどころか誰かに押しつけるもの……なんて声がなくもない昨今、国が国有地にする条件などを定める動きがある。

林業などに山林を使えるどころか、固定資産税を取られるだけ、もし土砂流出や山崩れなどを引き起こして他者に損害を与えたら、賠償責任が生じるかもしれない……と思っている人は多いだろう。ここ数年、プライベートキャンプ場をつくるための山林購入がブームになったが、実はこれ幸いと売りたがっている山主もいる。そして購入した人は、数年で飽きて(いや半年かもしれない)後悔して、また誰か買ってくれないかな、いや只でもいいからもらってくれないかな、と思っているに違いない(^^;)。
でも、今の日本の山林を欲しがるのは外国人ぐらいで……首尾よく買わせたら、その山にメガソーラーをつくろうとしていたりして。

 

さて、読売新聞オンラインの8月14日版によると、政府は相続した不要な土地を手放して国有地にできる新制度をつくろうとしているそうだ。相続手続をせずに放置して、所有者不明土地になってしまわないよう防ぐためである。そこでは雑種地や原野の場合の負担金は20万円とする方針なのだそう。しかし、負担金というのは、ようするに国が買い上げるのではなく、引き受けてやるよ、その代わり手数料を払いなさい、という値段だろう。金を払って山林を処分する感覚か。

ただし森林と市街化区域内の宅地、農用地区域内の田畑は面積に応じて算定するとなっているから、20万円ですべて片がつくわけではなさそうだ。

新制度は、相続土地国庫帰属法が施行される来年24年4月から始まる。相続土地の登記義務化も始まる。その際に相続したがらない土地、買い手の付かない相続土地の国有化を進めることになる。

まあ、所有者不明土地問題解決の一助にはなるだろうが、この法律ですべてが片づくわけではないだろう。それこそ、20万円はらうぐらいなら、外国人に売ってしまえと思う人の方が多いだろうから(笑)。

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こんな斜面で、岩だらけで、木は育っていない山だったら、相続したくないよなあ。

2022/08/17

『虚構の森』書評と生駒山講演

え、今頃? といささか驚いたのだが、日本農業新聞に昨年11月に刊行した『虚構の森』の書評が掲載された。

別に紹介を忘れていたわけではない、今年の8月14日付けの紙面だ。

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もちろん有り難い(^^;)。この手の本は、じわじわ売れて浸透することに期待している。実際、少し遅れて反響があるものなのだ。

せっかくだから一緒に告知しておく。今月27日(土)に、奈良県平群町(へぐりちょう)で講演することになった。主催は「平群のメガソーラーを考える会」である。

以前、Yahoo!ニュースにも書いた通り(奈良県が止めたメガソーラー計画の現場から見えてきたもの)、生駒市の南隣の平群町に巨大メガソーラーが計画されて山肌が大きく伐採されたのだが、奈良県がストップをかけた。この騒動、まだ終わっていなくて開発側は裁判に訴えてもソーラーを完成させたい意向のようだが、地元もなんとか押しとどめようと運動を継続中。その一環の勉強会に呼ばれた。

私は、てっきり勉強会みたいなものだから会員20~30人くらいかと気軽に構えていたら、町のくまがしホールを借りて行うという。100人以上が入れるホールである。あまり参加者が少ないとみっともないので(^^;)、もし興味のある方はご来訪ください。一般人歓迎。

ただし、私の話すのは何もメガソーラーの話ではない。それは会員の方が詳しいだろう。私は生駒山の歴史と自然を語る予定である。

具体的には「日本最古の里山・生駒」である。生駒山という土地はもちろん、里山とは何か、どんな仕組みなのか、ということに興味があればおいでください。ただ『虚構の森』に記したような再生可能エネルギーの怪しさにも触れる?かも。

会場は、平群町総合文化センター(近鉄生駒線平群駅前)。申込無用。駐車場あり。午後1時半より。

そして、ここが重要なのだが、会場では『虚構の森』を販売予定。ほかにも生駒山が登場する拙著は何冊か持っていく予定だ。
『森は怪しいワンダーランド』とか『獣害列島』など。なんと!消費税をおまけする予定である。

 

 

2022/08/16

シャジクモ?オオカナダモ?

我が家の庭には小さな池がしつらえてあるが、長く生き物がいなかった。以前は金魚を入れていたのだが、サギに食われてしまったのである。

そこそこ高い金魚を買い入れては放して、また食われるを繰り返したので、このところ放置していたのだが……。

このほど復活させることを考え、金魚を入れた。まずは小さな小赤で様子を見る。小さいゆえに食われない。また隠れ家を水底にいろいろつくり、サギに狙われないようにする。

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そして夏になると、睡蓮とともに藻が発生した。シャジクモだろうか。車軸藻と書く。これがかなり繁ったので、隠れ家になる。もう大丈夫と大きめの金魚も放す。

さて、そこで気がついた。白い花が咲いているのである。藻に。

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シャジクモって、花を咲かせたっけ? そう思って調べると、これ在来のシャジクモではなく、外来のオオカナダモであることに気づく。なんと、いつのまにやら侵入していたのか。南米原産で、金魚とともに持ち込まれることが多い。藻と名付けられているが、被子植物トチカガミ科の沈水植物である。 細胞観察にも向いているという。とにかく成長が速いし、水の汚れに強い。在来の水草類を駆逐して増える。だから侵略的な外来種なのである。ちなみにシャジクモは、藻類。全然違っていた。

しかし、これだけ繁って、小さな白い花も咲かせているとなると、あえて駆除することもあるまい。よい金魚と池の風景になる。庭から出すこともないだろう。

当面、楽しませていただこう。

2022/08/15

土倉祥子は国民義勇隊の隊長

朝、国民義勇隊が結成された時の資料が見つかった……というニュースが流れていた。1945年6月に本土決戦のために義勇軍を結成させるための法律が制定されたのだが、大政翼賛会・大日本翼賛壮年団・大日本婦人会などを吸収・統合した組織である。
まあ、すでに軍に動員する人材(若い男性)もないので、中高年男性と女性を動員してつくろうとしたものである。そして竹槍訓練をしたそうな……。

それで思い出したのだが、『評伝土倉庄三郎』を執筆した土倉祥子。彼女はこの隊長に任じられていたらしい。なんと東京の女性義勇隊1万1000人を率いることが内定していたとか。。。

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そのことを土倉祥子に町内会長が伝えてきた。勝手に決められて、あっと言う間に終戦になったらしい。

本人も笑い飛ばしているが、終戦直前にこんなドタバタがあったということか。ちなみに土倉祥子は、奈良県五条市の島本家出身で本名は祥。祥子はペンネームみたいなものだ。本人によると男と区別がつかないから子をつけたとか。
庄三郎の次弟の孫梅造と結婚して土倉家に入ったが、なかなかの女丈夫で知られる。終戦後は戦災孤児の養護施設に食料を提供したり、施設をつくるためアメリカ軍のポータブル兵舎を払い下げ交渉をしている。戦争未亡人のための託児所をマッカーサーに手紙を送って、援助を取り付け184棟建てたりもした。

その後は実業界に入ったかと思うと大和タイムスという新聞の記者というか寄稿者を務めていた。

肩書としては、日本建設株式会社社長、日本木造船舶輸出株式会社社長、SKマリンコーポレーション取締役副社長アジア支配人など歴任。ほかに神戸財団理事とか、奈良社会福祉協議会奈良社会福祉院常務理事、奈良女子大学付属高校同窓会会長なんてのもある。

その交遊関係は、政治家も多いが、右翼もいれば左翼もいる。アメリカ軍政府とも通じていたようだ。タイの王族に船を売った話も出てくる。この人物自体も、相当興味深い。

私は土倉家お付きの伝記作家ではないのだが、次々とおもろい人物が登場するなあ。

 

2022/08/14

寺社の木々はネタの宝庫?

地元の宝山寺をお参りした際に、境内の一角にある切り株に近づくと……。

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根元に穴が空いていた。そしてその奥に……。なんだ、妖しい。この錦布に包まれた容器は。妖気漂う(^^;)。

思わず手を伸ばしかけたが、周りに小銭も落ちているので賽銭を盗んでいるように見られてもイヤなので引っ込める。それに、妖気いや容器は何かお骨入れ、骨壺を連想する。もし中を開けてみて人骨でも入っていたら不気味すぎる。ウワァァ━━━━━。゚(゚´Д`゚)゚。

たまに神社やお寺に行くと、こういうのがあるんだよなあ。。

ちなみに、某神社の参道では、こんな木が。

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このこぶは、気根ではないと思うが、とにかく仏様っぽい。神社なのに。。。でも、これは爽やか系。

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こうした根曲がりのスギのあるお寺も。根性が曲がっていても、育ちがよければすくすくと真っ直ぐ育つ……と見るか、見た目真っ直ぐでも根っこは曲がっている、と見るか。

私は、寺社を見かけると、わりとすぐお寺参りや神社参拝をするが、実はこんなネタを探すためためであった(⌒ー⌒)。

 

2022/08/13

和牛再生に学ぶ

ちょっと面白い畜産農家の話を読んだ。

熟豊ファーム

何がすごいって、リンク先のHPを読んでいただければよいのだが、ようは和牛の経産牛を扱う点。通常、繁殖に使われた雌牛は、肉としてはテーブルに乗せられるものではないらしく、10頭ぐらい子供を産むと、ほとんど捨て値で取引される。10万円しないそうだ。それを買い取って、一から育て直す。ちなみに和牛の子牛なら1頭70万円はして、出荷まで20カ月は育てる。

すると、そもそもは和牛の血統なので、半年で出荷できる和牛の肉質になるのだという。ほぼ4等級にはなるらしい。最高品質は5等級だからその一歩手前と思えるが、実は5等級は脂まみれで真っ白い肉(^^;)なので、それを好まない人も多い。とくに欧米では赤身肉の美味さを求める面があるので4等級ぐらいがよいらしい。また肉の旨味も増す。経産牛の方に高値をつける国もあるという。

言われてみれば、私も和牛ならモモや肩ロースのような赤身肉の部分の霜降りを好む。いわゆるロースは脂濃くて食えん。

もちろんビジネス的には、いかに経産牛を肉牛として再生するかというノウハウはあるのだが、これを考えて実行した石飛修平さんは、元警察官がというのも面白い。畜産業界の常識に挑んだわけだ。すでに数箇所の牧場で1000頭近くを肥育しているという。そして海外輸出している。日本国内では、経産牛のイメージがいまだに強くて、価格が上がらないので、海外で高くするわけだ。

小売りの世界ではブランド化、ブランディングの必要性をよく言われるが、狙うべきは今のイメージが低くて安い素材を高く加工することだ。木材業界も参考にしてほしいなあ。高級材を一から生産するのではなく、並材、端材、廃材を加工で高くするのだ。

すでに、いくつか紹介している。廃材による家具とか、端材の木工品、スギ材の広葉樹材化、なんてのも取り上げたことがある。黒芯とか表面に傷が入っていても、製材次第で美しい造作材になるケースもあるのだから。

12_20220813173201高原で放牧される黒牛

 

2022/08/12

森林哲学の基礎編『森の経済学』

『森の経済学』(三俣学・齋藤暖生・著 日本評論社)を読んだ。副題が「森が森らしく、人が人らしくある経済」である。

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森の経済学と聞けば、森林経理学、林業経済学などの既成の学問分野もあるが、それらとは一線を画している。「はじめに」にあるように「『森の経済学』という題名の本書に、森の木々をいかにして売れるようにできるか、ということがほとんど書かれていない」のだ。それを期待して林業家が買うと、痛い目にあう(笑)。

むしろ森林哲学か森林思想かのような内容。そして森林史。似たようなことを書いているのは内山節さんだろうか。私は、同様のテーマをもっと読みやすくするために苦労してきたのだが、こちらは原点回帰? (⌒ー⌒)。

目次を紹介しておこう。目次に登場する用語そのものが哲学用語と言い回しのようだが……。

はじめに

第Ⅰ部 人間の経済と森
第1章 人間にとっての森
 1 連続的な空間としての森
 2 森を見るまなざし
 3 資源としての森
 4 脅威としての森
 5 森の時間――資源の有限性と無限性
第2章 森とともに歩んできた生活世界と経済の発展
 1 生計を支えた森の資源
 2 共同体の経済と森
 3 複雑化する社会と森

第Ⅱ部 森の経済をとらえる学問のまなざし
第3章 自然環境に対する経済学のまなざし
 1 経済学とは
 2 標準的な経済学におけるいくつかの前提
 3 主流派経済学における変化の兆し
第4章 森林をめぐる学問の歩み――森林学のまなざし
 1 林学の誕生と森林学
 2 森林をシンプルにとらえ、体系的に管理する技法
 3 森林を複雑な系としてとらえ、管理する技法

第Ⅲ部 日本の森がたどった近代
第5章 日本の林業・木材加工の技術史
 1 「林業」という言葉をめぐって
 2 樹木を育てる技術
 3 森林伐採と搬出の技術
 4 木材加工の技術
第6章 経済が変える森の姿
 1 姿を変える森
 2 人々の資源利用と森の姿
 3 近代化と森の変容(近代~戦後)
 4 人工林の拡大と利用の空洞化
第7章 農山村における近代――コモンズ解体と「高度利用」の神話
 1 コモンズとしての自然――「自然の公私共利」の原則
 2 日々の生活を支えてきた村の中の「共」――入会の森を利用する
 3 森の近代――入会消滅政策=高度利用の果てに残ったもの
 4 非商品化経済をとらえなおす――高度利用の神話が生んだ放置と無関心
第8章 森林エコロジーの劣化と遠ざかる森
 1 森林の「充実」を説明する理論
 2 過少利用の森林が抱える諸問題
 3 遠くなった森が生み出す世代を超えた問題

第Ⅳ部 ゆたかな森林社会へ
第9章 エコロジカルな経済へのパラダイムシフト
 1 近現代の経済の発展と矛盾
 2 エコロジーをゆたかにする経済は可能か
 3 共的部門の再評価――一九九〇年代の二つのコモンズ論
 4 パラダイムシフトに向けた運動
 5 新たな公・共・私と基盤としての自然アクセス
第10章 パラダイムシフトにおける「公」「私」の役割
 1 社会と自然の結び直し
 2 森をめぐる制度の変容
 3 変容する生産と消費のかたち
第11章 共創するコモンズ――森林をめぐる協治の胎動
 1 伝統的コモンズにおける協働の試み
 2 都市と山村をつなぐ――森林ボランティアの広がり
 3 海・川・森をつなぐ漁民の森運動――「森は海の恋人」
 4 森林の教育利用――学校林という森
 5 非商品化経済の営みが創る新しいコモンズ――環境の本源的な価値を求めて
第12章 エコロジカルな経済を支える自然アクセス――みんなの自然を取り戻す
 1 入浜権運動で問われた「自然はだれのものか?」
 2 英国のコモンズをめぐる歴史
 3 北欧・中央諸国に広がる自然アクセスの世界
 4 多の世界を創る自然アクセス制から学ぶこと
 5 非商品化経済をゆたかにする――森林社会の基盤をなす森の経済学へ

おわりに

やたら項目が多いが、その分、細かく刻んでいるから単元ごとにコツコツ読める。ある意味、森林に人間が浸食していった事情と歴史でもある。その一部には林業も含まれるというわけだ。

木の売るのには役立たないとあるが、逆に言えば、書いているのは森にちょっかい出し続けた人間側の論理である。私は、ここに書かれてある程度のことは林業に関わるなら押さえておくべき、と思った。林業として森に人が関わる際の考え方の基礎だろうから。これらを知った上で、現代を見つめるべきではないか。それがないから目先の利益に走って、山を破壊してから嘆くか、壊した後に興味を失う繰り返しになってしまう。
森にも人にも歴史があるのだから、森と人の関係にも時間感覚が必要だ。まさに森と人のシステムを経済学として描ける。

ちなみに歴史的な流れは概ね納得するのだが、部分的には異論もある。とくに最後に無理やり希望を見つけようとしていないか。
たとえば自伐型林業や森林ボランティアなどをとりあげたのは苦笑してしまった。「小さな林業」とか「保全型の施業」の定義も定まらず、個人の資質に左右される怪しいものを持ち出されたらがっかりする。しょせんは補助金ありきだ。単に時代の現象として取り上げるのならわかるが、希望を達成するための具体策かのように紹介してはマズいだろう。

本気で森の現状を見つめたら、もっと真摯に絶望するべきではないか。

なお大学などでも使えるように、入門書として12回分の講義ができるような章立てにして、章の最後には「読者への問い」まで用意されている。たしかに大学で使ってくれたら売れ行きに貢献し部数が稼げるかもしれない。私も真似しようかな(⌒ー⌒)。

 

 

2022/08/11

発掘された扉

生駒市の隣なんだが、山超えたところにある大東市。そこの歴史資料館に行ってきた。

こじんまりしているが、こんな展示が。

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何かわかるだろうか。木の扉なのである。ちゃんと把手が刻まれている。しかも発掘されたのは井戸跡。どうやら扉としては傷んだのか破棄したものを井戸の壁面(井筒)に使ったらしい。

材質はスギだろう。幅は80センチ級だが、一枚板を削って把手も含めて板にしたものらしい。時代は古墳時代。5~6世紀か。おそらく倉庫などの大きな建物の扉だろう。

井筒だったから腐らずに済んだのかもしれない。こんな遺物は、意外と珍しく日本ではほかにないらしく、当時の建物の建材がわかる唯一の資料だそうである。

2022/08/10

雨の山

昨夜、急に思いついて某村の山に登ることとして、朝出発。

天候は晴れ。猛暑とするでしょう。山裾ではにわか雨に注意……そんな天気予報だった。

実際にすそ野に着いた頃は、青空も残る曇りで、仕事を済ませながら登り始める。が、中腹辺りで、空はにわかにかき曇り……バサバサと大粒の雨が降り出した。ヤバい、と思ったが、にわか雨ですぐに止むだろう、ちゃんと雨具も持ってきているんだぜ、と強気に登る。

しかし難点は、この山、草原なんだわ。まったく雨宿りできる木々もない。ひたすら雨に打たれるしかない。ようやく尾根に着くが、実はここまでは大粒だがまだらな降り方だった。それが、ここで土砂降りに。。。

仕方ないので雨具を着込んだうえに、ザックに入っていた傘まで広げる。しかし、もう尾根を登るのは無理。そもそも山道が川になってきた。ついに引き返す決断。もっとも必要な写真は撮れたので、仕事としては必要最低限のことはできた。

そしてかなり濡れた状態で降りてきたら、雨は止む。まあ、あるある話なのだが……。

その後、ち服も着替えてょっとだけ取材などにも回ったのだが、帰り道はまたもや雨であった。やはり山村は雨なんだ……と思いつつ下界に下りたら、そこでも雨。とうとう前が見えずに車のワイパーを高速で振り続けなくらはならない。ワンセグのテレビをつけると、「奈良県に大雨警報が出ました」だと。

そんな状態で、なんとか帰り着いたのだが……なんでや。生駒は地面が乾いとる。私がびしょ濡れの服を持って帰ったのに、庭木に水をまかねばならないのであった。。。疲れた。

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写真は、出会ったウシさん。奈良の山奥にも牧場があるんだねえ。

 

2022/08/09

Y!ニュース「海を渡るトキは、メスばかり……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「海を渡るトキは、メスばかり? 放鳥計画に思う」を執筆しました。

書いてアップしてから気づいたんだが、タイトルは「渡る世間は鬼ばかり」に引っかけているんだね (゚o゚;) 。いや、まったくの偶然ですよ。脳裏でゴロのよい言葉を反芻してつけたタイトルなんだが、その時は気づかなかった。本当だってば。

しかも、文中には、オスは佐渡島に里帰りするかも……と書いてから、あ、里と佐渡がひっかかるやん、ならば……と「ホームシックで里帰りならぬ佐渡帰り」と書き直す。もうオヤジの駄洒落ばかりか! と突っ込みつつ止められん(^^;)。

まあ、お盆も近いので、クソ面倒で鬱陶しい脱炭素だとか林業政策だとかの記事は書きたくなかったわけよ。

当初は、テーマとして「メスばかりが渡りをしている」点を面白がっていた。女子の方が強くて新天地を探して出かけていくなんて、若いオスはだらしがねえぞ。なんだか人間界と似ているではないか……と。

その方が一般にウケてアクセス数も伸びるかもしれないが、ちょっとあざとい。書いているうちに真面目なレポートになったのである。社会・学術的には、遺伝子の変異が少ないこと、鳥インフルエンザの心配の方が重要なのである。

 

 

2022/08/08

ブックデザインの妙味

ブックデザインというより、本の装幀と言いたい。本の活字や写真の並びまで含んで装幀という場合もあるが、やはり最重要なのは本のカバー装幀は大切だ。売上を左右するし、何より印象に残るか残らないかに、本の表紙が与える影響大なのである。

奈良県立図書情報館を訪れた。すると世界のブックデザイン展を行っている。各国で開かれた2020年コンテストの優秀作らしい。

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なるほど、凝ったデザイン、装幀の本が並ぶ。表紙が立体的になって中が覗けるものがあったり、もう表紙だけで芸術作品ぽさがあったり。逆に地味すぎて、これのどこが?というものもあるが(^^;)、それぞれのお国柄か。

ちなみに私の本のデザインでは、事実上の処女作(実は別の本があるのだが、そちらは置いといて……)は、友人の装幀家に頼んだ。ところが、版元が「4色(つまりカラー)は使えない」というので、悪戦苦闘させられるのだが……かくして『不思議の国のメラネシア』が出来上がった。

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同じ友人に頼んだのには、『森と近代日本を動かした男・土倉庄三郎の生涯』の複製本『樹喜王 土倉庄三郎』がある。

 

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中身は私が版権持っているわけだから、同じ内容を自分で出版してもよいが、表紙やタイトルは版元とデザイナーがつくったものなので変えることにした。そして再び友人に頼んだわけである。タイトルは『樹喜王 土倉庄三郎』としたわけだが、帯はつけられないので裏表紙カバーに文字を入れる手を使う。しかしでデザイン的にも『森と近代日本を動かした男』より気に入っている。

ちなみに元の本はこんな感じ。

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悪くはない。山林王の雰囲気は出ていると思うのだが、印象に残るかと言えばどうだろうか。

さて、15日後に出版する『フィンランド虚像の森』。この本は私の著作ではなく監訳者扱いのだが、なぜかタイトルやカバーデザインにも口を出している(^^;)。さらに帯文にも……。

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監訳および解説文だけなら、本書の売れ行きの責任はあまり感じないつもりだったのだが、装幀まで口を挟んだとなると……いやあ、気にしないでおこう!

2022/08/07

達磨で、映える寺

ふらりと大安寺に参ってきた。

大安寺と言えば、聖徳太子建立の日本最古級の寺で、飛鳥から幾度も移転と名称変更を繰り返した大寺院である。が、平安遷都の頃から衰退して今は、奈良市の都心から少し離れた田園風景の中にある。ちょうど国立奈良博物館で「大安寺展」をやったことからか人気が出ているが、私は行ったことがなかったので、ちょっと足を延ばしたわけ。と言っても、我が家から車で30分かからないのであるが……。

現在は、すっかり小さくなったということだったが、訪れてみると、なかなか見せる寺であった。何がって、達磨さんが。

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境内のいたるところに小さな達磨さんがいる。それが映えるのだ。インスタ向きのお寺であった。

種を明かせば、この寺のおみくじがだるまさんの中に入っているのだが、引いた後に達磨さん人形を境内に置いていくらしい。みんな、置く場所に工夫している。置くのはおみくじを引いた参拝者なのか、寺側で置き直すのかわからないが、みんな魅せる。

もちろん、お寺としてはインドの聖地と西国八八か所を合わせた巡礼ルートなどもつくって工夫しているし、境内がおしゃれな野外カフェぽい雰囲気だし、寺宝もすごいのだが、やっぱり人気第一はだるまさんだろう。

昨今は寺もSNSで人気が出ないと参拝が増えないのかも。頑張っているわ。こんなちょっとしたことで「映える」のだから、森でも何かできそうな気がする。自然のままを見せるだけでなく、参加型でおしゃれな風景づくりをしてもらえば人気呼ぶかも。

今日はとにかく暑いので、早々に退散してしまったが、気候のよい季節にのんびり滞在してみたくなる。

ちなみに、一つ気になったのがこれ。

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ナンキンハゼなのである。つまり外来種。よく見れば、ドイツのケルン大学の学生会が記念植樹したとあるが、気をつけないと大繁殖してしまう。とにかくナンキンハゼは奈良公園や若草山を席巻して駆除が大変な樹木なのだから。

1_20220807215301大安寺山門

後で、インスタにもアップしておこう ♫

2022/08/06

野生動物が都会に進出する理由

先日、大阪に出た際、某ラーメン屋の入り口にネズミがいた。

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まあ、繁華街?にネズミが生息するのは当たり前だし、この店が不潔だったというつもりはない。ただ、まだ明るい時間帯なのにドアをよじ登るかよ、と思っただけだ。

そういや、先日まで山口市小郡で、連続してニホンサルに人が襲われる事件があった。たしか累計60人以上が怪我をしたはずで、それも人が手出ししていないのにいきなり襲ったのか、窓を破って押し入ってきたとか、かなり怖い状況だったようだ。それも1匹の凶暴なサルが……と思いきや、どうも複数が徒党を組んで、いや群で街の中を移動しつつ各地で襲撃を繰り返したという。

少なくても2匹は捕まえて駆除した。だが、その後も被害が出ていたから人を襲うことを覚えたサルはもっといるのだろう。もしかしたら群に伝播した……人を襲う知恵をつけたのか、文化が生まれたのか? さすがに今は被害が出なくなったようなので、群は小郡を去っていったか。暴れるだけ暴れて、さっさと退却するとは、ヒットエンドランを覚えたような。次は、またやるよ。

私にサルの気持ちがわかるわけではないが、人にちょっかい出されてとか、餌になるものがあって、ではなく、人を襲うために室内まで侵入するというのは、野生動物の常識を覆す行動だったのだが、地方ニュース扱いで終わらせるのはもったいないというか、危険と感じる。もっと、重大事として取り上げてほしい。

私の勘としては、今後も続くように思う。時折、町を襲うのだ。これは野生動物の都会進出の一例だと思えるからだ。
動物は、常に行動域を広げる欲求があって、それは条件が整うととめどなくなる。町を自らのホームレンジとして認識しだしたのかもしれない。

野生動物は、今や奥山から里山、里山から田舎、田舎から地方都市へと広げている。そのうち大都市にも向かうだろう。これまではネズミが尖兵となり、タヌキやアナグマ、イタチなども生息域を広げていた。そこにイノシシ、シカ、クマ、アライグマ……なども加わり、目立つうえに被害を出す大型・中型動物も現れだした。その流れの中に、サルも入ってきたのではないか……と。

もちろん、根拠を示すことはできない。ただ野生動物全般の大きな動きとして有り得るのではないか。

まあ人類も一緒で、ロシアはウクライナへと勢力圏を広げる行動を起こした。今ならできる、と思えたのだろう。中国も、常に周辺の領土を狙う。台湾だけではなく、取れるものならどんな小島でも海域でさえも囲い込もうとする。日本だって、アメリカだって、その潜在意志はあるのだろうが、今は理性が抑えているのか。(もしロシアや韓国が国家として破綻し軍事力がなくなったら、日本は北方4島も竹島も取りにいくと思う。私は千島列島全部が日本領土だと思っているけど。)

ネズミとサルから、ここまで連想するのは、もはや予言者だね(^^;)。

2022/08/05

『神々の山嶺』で思い出すあの頃

久々に映画館で見たのが『神々の山嶺』。上映館は少なく、上映期間も限られているようで、私が入ったときもガラガラだったが、いやあ、よかった。アニメなんだが、大人の映画だわ。

内容については、リンク先の『神々の山嶺』公式サイトを参照のこと。

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原作は、夢枕漠だが、製作はフランス。アニメーションである。山登りの映画って、だいたいマニアックで冗長なんだが(笑)、これは魅せる。そしてアニメでしかできないだろう、山のシーンが見事に描かれる。ああ、こんなシーンを実写化するのはCGつかっても難しいだろうな、そもそも登攀できる役者を見つけるのに困るよなあ、と思う。
人物は、東洋人はみんな同じ顔みたいとツッコミたいところもあったが、山岳シーンは実写並に細かくリアルに描いている。今では山というと、森と同義語的に使っているが、本来の山は高みであり、より岩に覆われているものなのだ。

ちょうど先日、BSプレミアムで「幻の剣大滝」の番組を見たが、こちらはドキュメンタリーとしてガッツリ岩登りを魅せてもらった。こちらも、よくぞ撮影したなとは思わせたが、今回のアニメも負けてはいない。

なお原作へのリスペクトは感じるが、ストーリーなどはかなり変えているように感じた。モチーフとしてのマロリーは登場するが、本筋とはちょっと離れている。ミステリーにはなっていない。
でも登場人物はほぼ日本人だし、舞台も日本が多い。よくぞ、フランス人が描いたものだ。都会の隅々の日本語の看板とか、居酒屋シーンとか。時代は1990年代らしいが、過去を幾度も振り返っているから、おそらく話の半分ぐらいは70~80年代。そしてマロリーの時代の話は戦前だから、時間感覚には気をつけて見なくちゃいけない。

Q

たしかに、あの時代は、山にとりつかれた登山家が多かった。最高峰だ、未踏だ、ヴァリエーションルートだ、冬季だ、単独だ、無酸素だ……。自分でハードルをつくって、それを乗り越えることにハマっている人々。私は、ほとんど登山にも氷雪にも岩にも興味はなく、ましてや筋肉勝負のようなアスリートも嫌いだったので、そちらの世界には足を踏み入れなかったが、一つだけ。未踏である場所にはこだわった。

そこで選んだのが洞窟の世界だった。どんな高い山でも、すでに登った人がいるなら興味が湧かない。どんな小さな洞窟でも、誰も潜ったことのない穴なら、先頭をもぐりたくなる。私が発見したり初ケービングした洞窟は、5つ6つあったはず。

もっとも、今はそれも関心から外れてきた。すでに未踏も飽きてきて、より広く未知の世界を探したい。でも体力はできるだけ使いたくない。みんな知らないけど、すぐ近くにあって、苦労なくたどりつけるところ……。
これは学生時代より言っていたのだが「温泉探検家」になりたい。温泉を探検するのではなく、昼間は探検に出かけて、帰って来たら温泉旅館に泊まって温泉につかって美味しいものを食べて、翌朝また探検に出る……そんな探検家になりたいのである。ないけどねヾ(- -;)。

その結果行き着いたのが、森林ジャーナリストだった(゚o゚;) 。。。この肩書は誰も使っていなかったし、森から人間社会を見るという視点の書き手もほぼいない。未知の世界だったのだよ(笑) 。

今? そろそろ森林ジャーナリストも飽きてきたかな。『神々の山嶺』の登場人物のように“未踏”を追い続けない。むしろ過去ばかり繰り言して「昔の俺は凄かった」といって周りに愛想づかしされつつ、でも嫌われない程度の老人が夢。あ、こんなブログを書いたいるのは、すでにその境地か。

 

2022/08/04

熱帯雨林で読んだ松本清張

8月4日は、松本清張の命日だそうだ。それも没後30周年。そういや、最近いくつかのテレビで松本清張もしくはその作品が取り上げられていた。

私は、さほどミステリーは読まないが、松本清張には思い出がある。作品というより読んだ場所に。

それはボルネオの熱帯雨林の中だった。生まれて初めての海外がマレーシア連邦サバ州、つまりボルネオ島なのだが、テーマは野生のオランウータンの観察。当時、野生のオランウータンはほとんど研究はおろか観察例もなかった。とにかく見つけて、その行動を可能な限り追いかけて観察するだけで論文がかける(^^;)と言われたので、学生でも取り組みがいがあったのだ。それ探検部の遠征として行うことにしたわけだ。

実際に現地を訪れるまでのドタバタは省略するが、とにかくサバ州の東部に突き出したデン半島の南海岸に流れる川スンガイ・メラが目的地だった。スンガイは川、メラは赤だから「赤い川」という地名だと思えばよい。当時はデン半島にはまだ原生林が残っていて野生のオランウータンがいると思われたから。

ところが、現地の森林局と交渉の結果、スンガイ・シバハットに向かうことになった。スイガイ・メラの隣の川だ。そして、この川を遡るとティンバーキャンプがあり、そこに泊めてもらいながら周辺のジャングルで調査する計画である。

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まあ、その途中のすったもんだも飛ばすとして、なんとかキャンプにお邪魔して泊めてもらうことに決まったのだが、考えてみればティンバーキャンプ、つまり伐採基地があるのだから、周辺の森はすでに伐られているのである。今考えると、この時点でどこか間違えていたのかもしれないが、現実にはキャンプの周りは深いジャングルなのだから、そんなに気にしなかった。

そして、毎日土砂降り(スコール)の合間を森に出かけては歩くわけだが、泥だらけ汗だらけになって帰って来ては、マンディをする。水をかぶって、与えられた鉄のベッドにゴロ寝する生活。今考えても安楽で楽しかった。ただヒマでもある。

そんなときに見つけたのが、キャンプに置いてあった本。それも日本語の文庫本。そうか、このキャンプにはかつて日本人が滞在していたのか。それも伐採した木の買いつけなんだろう。それをむさぼり読んだ。

その本が松本清張だったのである。書名も忘れたが、短編集だった。そのうちの一つは、ある男が殴り殺されて、犯人はある女が怪しいのだが証拠がない。凶器もない。幾度も女のところに訪ねるが、正月が過ぎて雑煮の餅が出された。それを食べさせてもらう。……そして気づくのだ。硬く乾燥した餅こそが凶器だと。だが、その証拠を私は食べてしまったのだ……。

今、調べたら「凶器」という短編で、「黒い手帳」に所蔵らしい。熱い熱帯で読んだ、雪の降る土地の餅の話。なんとも印象深く覚えている。逮捕されることもなく終わったという点も(当時は)斬新だったように感じた。

その後、長編も含めて清張はいろいろ読んだはずだし、またドラマなども見たが、この短編がもっとも印象深いのである。

 

 

2022/08/03

「ネコは侵略的外来種」論争 

「イエネコを侵略的外来種として登録」。こんなニュースを知っているだろうか。ただし、ポーランド。

ウクライナ戦争でウクライナを全力で支える国として最近注目されているポーランドだが、実はこんな論争が起きていた。

ポーランドの国立科学アカデミーがイエネコ(Felis catus)を1787番目の侵略的外来種に登録。生物の多様性を脅かす存在の動物と認定したというのだ。これは勇気ある発表。同時に日本で報道することも勇気かも。報道したのはスポニチだけどね……。

もっとも、お決まりだが、その後、愛猫家や獣医らが猛反発している。愛猫家の代表的意見は、こんな具合。

「多様性を阻んでいるのは環境破壊や、鳥がぶつかる建物を作っている人間のせい。その人間が侵略的外来種ではないのに、ネコが登録されるのは公平ではありません」と反論。

侵略的外来種だとする根拠は、「イエネコはポーランド国内で毎年1億4000万羽の鳥を捕獲している」とデータベースでの登録に至った正当性を主張。「イエネコが多様性を脅かしているという共通認識は高まっている」

ちなみに私は『獣害列島』で、すでにネコは猛獣!と指摘、主張し外来種認定している。当然、反発を買っている(笑)。私のデータは、主にアメリカやオーストラリアのもので、残念ながら日本には同種の研究例自体がないようだ。いろいろ探したが、たまに見かけたネコ論文は、「なぜネコは可愛いのか」というテーマばかりであった。

可愛いのはいいんだよ。でも、可愛くても猛獣だし、外来種だし、在来種を痛めつけているんだよ。あえて付け加えたら、街中にいるノラネコは、あまり気にしなくてもいいと思う。あいつらは、各家庭を回って餌を確保しているのが大半で、野生動物を獲っていないだろう。ネズミや昆虫などは狙うかもしれないが、野鳥も少ない。逆にカラスなどの餌食になっている。

だが、郊外の森の中に住み着いたノネコもいるのだ。

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これは、生駒山の森林公園に住み着いたネコ。近頃、とみに増えている。こやつらは、たまに餌をやる人間もいるようだが、絶対数が足りないから、おそらく野鳥や野生の小動物を餌にしている。ネコも野性味があるならともかく、ミョーに人慣れしているのが気に食わんが。

ポーランドの科学アカデミーの主張は、「鳥の産卵期にはイエネコを外に出さないようにする」ことを求めている程度だ。

侵略して多様性を奪っていくのは、ロシアと一緒かもね。

 

2022/08/02

バイオマス発電所の燃料アンケート

国際環境保護団体FoE Japanは、再生可能エネルギーのバイオマス発電事業者に対して、バイオマス燃料の持続可能性に関するアンケートを実施した結果を公表した。

これに目を通すと、なかなか味わい深い(^^;)。

ちょうど「再生可能エネルギー」に関する講演を行ったばかりなので、余計に考えさせられる。実はこの講演主催団体は、気候変動対策に再生可能エネルギーを推進していたのだそうだ。が、このところ、メガソーラーにしろ風力にしろ何かと批判が起きてきたので、改めて見直したいという意向だった。そこに私は、バイオマス発電も加えて話をしたわけである。

さてアンケート結果は、ぜひリンク先に飛んでじっくり読んでいただきたいが、私も詳しくチェックし考察する前に感じた点に触れておく。

まずアンケートを実施したのは、FITの認定を受けた発電出力1万kW以上の主な発電設備(187設備)を有する発電事業者154社(2022年5月19日~6月10日)。そして回答があったのは56社(61設備)。それらの会社が利用しているもしくは利用予定の燃料の内訳は、輸入木質ペレットもしくは木質チップが36社、PKS(パーム椰子殻)が30社、国産木質チップが21社、その他が2社となっいる。

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ここで気をつけたいのは、出力1万kw以上であることだ。気づいた人もいるだろうが、これまで日本各地に「林地残材を使って発電します。だから林業に貢献します」と言って建てられたのは、だいたい5000~6000kw級なのだ。そこが入っていない。

実は、5000kw級以上というのは、林地残材を使うという前提だった。すると、この規模にしないと採算に合わない。これ以上だと燃料の残材を集めるのが難しいとされた。
ところが、現実はこのクラスでも燃料となる木材は6万トン、10万立方メートル以上必要なのだが、なかなか集められない。集めやすい林業地の道沿いは1、2年目で底が尽き、その後はより奥地から集めることになる。それでは採算が悪化する。だから産廃をこっそり混ぜている業者も多数いるようなのだが、開き直って1万トン以上にすると、今度は一般木材を燃料にしても採算が合う。FIT価格は安くなるが、燃料を海外調達する前提となるからだ。つまり、記事にもあるPKSや木質ペレットである。そこに石炭混焼も加えている。それがアンケートの対象なのだ。

さて、この前提の上で出た結果だが……回答率が低い(-_-;)。それにまだ稼働していないところも含むから、現状と言えるのかどうか。(事業者の)希望的予定なのかもしれない。

このあとは、皆さんも分析してみてほしい。私も、じっくり考えてみるよ。

ちなみに、このページから飛んだ別のところにあった言葉。

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面白いねえ。

 

 

2022/08/01

万博の木造建築は世界最大か

2025年大阪・関西万博の運営を担う日本国際博覧会協会は、会場となる人工島「夢洲」に建設する1周約2キロのリング状の大屋根を木造でつくる予想図を発表、世界最大級の木造建築になる予定だとか。屋上からは海を見渡せる予定。この大屋根を「会場のシンボル」と位置付けている。

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総工費は約350億円。来春から工事が始めるそうだが、出展されるほとんどのパビリオンは、大屋根の内側に配置される。大屋根をデザインは、建築家の藤本壮介氏。一部が水上にせり出し、建築面積約6万平方メートル、高さ12~20メートルとなっている。

よく世界最大の木造建築というと、奈良の東大寺大仏殿が上げられる。あるいは高さだと京都の東本願寺阿弥陀堂とか。しかし、単純に大きさを言えば、海外にもっと大きなものがたくさんある。記憶では、スペイン南部のセビリアに誕生したメトロポールパラソルという複合ショッピングセンターとか、アメリカオレゴン州のティラムーク航空博物館とか。今回の建築物の大きさは、それらとちゃんと比べてほしい。

ところで以前の大坂万博では、大屋根を鉄骨でつくり、それがシンボルの予定だった。ところが、そこに岡本太郎の「太陽の塔」が屋根をぶち抜いて設置したため、もはやシンボルは「太陽の塔」になってしまったが……。実際、万博後に残されたのは、大屋根ではなく塔となっている。

今回は、終了後に解体して移設することも考えて、組木工法で建てるそうだ。世界最大級の木造建築物をどこに移設するのか……。

そもそも肝心の材料の木材はどこから調達するのか。国産で、という声は強いが、果たして調達できるか。太さは集成材だから気にしないとしても、また特需を生み出すのだろうな。本当は、そうした特需を利用して構造改革を勧めればよいのだが、今の老衰している日本に、そんな発想や余裕はあるだろうか。

いっそ、太陽の塔に相当する斬新なモニュメントを提案する人が出てきてほしい。かつての万博は、ある意味エネルギッシュで、型破りな発想も取り入れる余地というか余裕があった。

 

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