『神々の山嶺』で思い出すあの頃
久々に映画館で見たのが『神々の山嶺』。上映館は少なく、上映期間も限られているようで、私が入ったときもガラガラだったが、いやあ、よかった。アニメなんだが、大人の映画だわ。
内容については、リンク先の『神々の山嶺』公式サイトを参照のこと。
原作は、夢枕漠だが、製作はフランス。アニメーションである。山登りの映画って、だいたいマニアックで冗長なんだが(笑)、これは魅せる。そしてアニメでしかできないだろう、山のシーンが見事に描かれる。ああ、こんなシーンを実写化するのはCGつかっても難しいだろうな、そもそも登攀できる役者を見つけるのに困るよなあ、と思う。
人物は、東洋人はみんな同じ顔みたいとツッコミたいところもあったが、山岳シーンは実写並に細かくリアルに描いている。今では山というと、森と同義語的に使っているが、本来の山は高みであり、より岩に覆われているものなのだ。
ちょうど先日、BSプレミアムで「幻の剣大滝」の番組を見たが、こちらはドキュメンタリーとしてガッツリ岩登りを魅せてもらった。こちらも、よくぞ撮影したなとは思わせたが、今回のアニメも負けてはいない。
なお原作へのリスペクトは感じるが、ストーリーなどはかなり変えているように感じた。モチーフとしてのマロリーは登場するが、本筋とはちょっと離れている。ミステリーにはなっていない。
でも登場人物はほぼ日本人だし、舞台も日本が多い。よくぞ、フランス人が描いたものだ。都会の隅々の日本語の看板とか、居酒屋シーンとか。時代は1990年代らしいが、過去を幾度も振り返っているから、おそらく話の半分ぐらいは70~80年代。そしてマロリーの時代の話は戦前だから、時間感覚には気をつけて見なくちゃいけない。
たしかに、あの時代は、山にとりつかれた登山家が多かった。最高峰だ、未踏だ、ヴァリエーションルートだ、冬季だ、単独だ、無酸素だ……。自分でハードルをつくって、それを乗り越えることにハマっている人々。私は、ほとんど登山にも氷雪にも岩にも興味はなく、ましてや筋肉勝負のようなアスリートも嫌いだったので、そちらの世界には足を踏み入れなかったが、一つだけ。未踏である場所にはこだわった。
そこで選んだのが洞窟の世界だった。どんな高い山でも、すでに登った人がいるなら興味が湧かない。どんな小さな洞窟でも、誰も潜ったことのない穴なら、先頭をもぐりたくなる。私が発見したり初ケービングした洞窟は、5つ6つあったはず。
もっとも、今はそれも関心から外れてきた。すでに未踏も飽きてきて、より広く未知の世界を探したい。でも体力はできるだけ使いたくない。みんな知らないけど、すぐ近くにあって、苦労なくたどりつけるところ……。
これは学生時代より言っていたのだが「温泉探検家」になりたい。温泉を探検するのではなく、昼間は探検に出かけて、帰って来たら温泉旅館に泊まって温泉につかって美味しいものを食べて、翌朝また探検に出る……そんな探検家になりたいのである。ないけどねヾ(- -;)。
その結果行き着いたのが、森林ジャーナリストだった(゚o゚;) 。。。この肩書は誰も使っていなかったし、森から人間社会を見るという視点の書き手もほぼいない。未知の世界だったのだよ(笑) 。
今? そろそろ森林ジャーナリストも飽きてきたかな。『神々の山嶺』の登場人物のように“未踏”を追い続けない。むしろ過去ばかり繰り言して「昔の俺は凄かった」といって周りに愛想づかしされつつ、でも嫌われない程度の老人が夢。あ、こんなブログを書いたいるのは、すでにその境地か。
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