和牛再生に学ぶ
ちょっと面白い畜産農家の話を読んだ。
何がすごいって、リンク先のHPを読んでいただければよいのだが、ようは和牛の経産牛を扱う点。通常、繁殖に使われた雌牛は、肉としてはテーブルに乗せられるものではないらしく、10頭ぐらい子供を産むと、ほとんど捨て値で取引される。10万円しないそうだ。それを買い取って、一から育て直す。ちなみに和牛の子牛なら1頭70万円はして、出荷まで20カ月は育てる。
すると、そもそもは和牛の血統なので、半年で出荷できる和牛の肉質になるのだという。ほぼ4等級にはなるらしい。最高品質は5等級だからその一歩手前と思えるが、実は5等級は脂まみれで真っ白い肉(^^;)なので、それを好まない人も多い。とくに欧米では赤身肉の美味さを求める面があるので4等級ぐらいがよいらしい。また肉の旨味も増す。経産牛の方に高値をつける国もあるという。
言われてみれば、私も和牛ならモモや肩ロースのような赤身肉の部分の霜降りを好む。いわゆるロースは脂濃くて食えん。
もちろんビジネス的には、いかに経産牛を肉牛として再生するかというノウハウはあるのだが、これを考えて実行した石飛修平さんは、元警察官がというのも面白い。畜産業界の常識に挑んだわけだ。すでに数箇所の牧場で1000頭近くを肥育しているという。そして海外輸出している。日本国内では、経産牛のイメージがいまだに強くて、価格が上がらないので、海外で高くするわけだ。
小売りの世界ではブランド化、ブランディングの必要性をよく言われるが、狙うべきは今のイメージが低くて安い素材を高く加工することだ。木材業界も参考にしてほしいなあ。高級材を一から生産するのではなく、並材、端材、廃材を加工で高くするのだ。
すでに、いくつか紹介している。廃材による家具とか、端材の木工品、スギ材の広葉樹材化、なんてのも取り上げたことがある。黒芯とか表面に傷が入っていても、製材次第で美しい造作材になるケースもあるのだから。
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廃牛利用は荒川弘『銀の匙』でもでてきます。
投稿: 岡本哲 | 2022/08/14 14:32
ほお、「銀の匙」に。どちらが先でしょうね。もしかしたら、どちらかが先方に影響を受けたのかも。
投稿: 田中淳夫 | 2022/08/14 20:05