産経にフィンランド本の書評
産経新聞に、『フィンランド 虚像の森』の書評が載りました。
発行後、1カ月経たずに載せてくれるのは有り難い。実は産経の路線に本書は合っているのでは、と思っていたのだ。
まず、森と湖の国フィンランド。衰退著しい日本の林業関係者から理想化されることも多い森林大国だが、その資源管理の実態は持続可能なものとはいえず、森の荒廃も進んでいた。
とあるように、日本が理想とするモデルを否定するのが好き。そして、転機は第二次大戦後、ソ連が要求する膨大な賠償金の原資として行われた大量伐採だった。
これは冬戦争のことであるが、こちらに触れてくれるのも、想像していた(^o^)。好きそうだもの。私が解説で冬戦争に少し詳しく触れたのも、ウクライナ戦争が始まった今、冬戦争は日本人の琴線に触れるのではと思ったからだ。
ちょっと書評に補足してフィンランドを巡る戦争について説明しておこう。第2次世界大戦初期に、ソ連はフィンランドに攻め込んだ。だが5日で落ちると言われた首都ヘルシンキ攻略は失敗し、国境線沿いでフィンランド軍の頑強な抵抗を受ける。これが冬戦争だ。
フィンランドは4カ月間の厳冬期を戦い抜き戦略的には優位に経っていたが、孤立無援の中で武器も尽き、講和に持ち込む。そして領土の1割割譲と莫大な賠償金を支払うはめになった。
ところが、そのときドイツがソ連に攻め込んだ。そこでフィンランドはドイツと結んで再びソ連軍と戦い始める。これを継続戦争と呼ぶ。一時は割譲した領土以上に進軍し、レニングラードに迫る勢いとなった。ここに「大フィンランド構想」も登場するのだが、やがてドイツ軍は敗退し始める。これはヤバい、とフィンランドはさっさとソ連と講和する。またしても領土と賠償金を支払う条件で。
だが、ヒトラーは激怒し、今度はドイツ軍が進駐していたフィンランド国内で破壊工作を展開、ドイツ-フィンランドの戦いとなってしまった。これがラップランド戦争である。
まさに3つの戦争を戦い抜いたが、ヒトラーの自殺によってドイツが降伏した際、フィンランドは連合国に敵対した敗戦国認定を受けてしまった。つまり日本と同じ立場なのだ。戦闘からの引き際はよかったのだが、外交的には失敗だったのだろう。
かくして敗戦国フィンランドは、焦土から復興するために、林業を活用するのである。それが今に続く大規模な皆伐-一斉造林型の施業法を根付かせてしまった。戦争の影響は長く続くのだ。
膨大な丸太が伐り出されて工場に運び込まれる。
さてウクライナは孤立無援ではない。しかし引き際とともに戦後処理には細心の注意を払ってほしい。
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