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森と林業の本

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2022/10/11

エネルギーから農業を見ると「そのとき、日本は何人養える?」

『そのとき、日本は何人養える?』(篠原信著 家の光協会)を読む。

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「そのとき」というのは、石油の輸入が止まるとき、と解釈してよいだろうが、基本は現代の農業をエネルギーから見た成り立ちを分析した本である。それは、大きく言えば人類の人口を養っているのは何かを読み解くと言えなくもない。というと、堅苦しいが、極めて平易で読みやすい。

たとえば国内の農産物をカロリーで表すと、年間51兆9000億キロカロリー。そのために使う化石燃料は145兆キロカロリーという計算を出している。完全に赤字である。帯文に「石油が止まると3000万人」(細かな条件、時差や誤差は省く。)とあるが、これはかなり無理した数字(江戸時代なみの耕作と生活レベル)なので、現代の日本人はそんなに生き残れないだろう。

【目次】
はじめに
●第1章 日本は何人養える?
●第2章 飢餓はなぜ起きる?
【コラム】被災地支援はどうあるべきか?
●第3章 大規模農業はすべてを解決するのか?
●第4章 どうして石油が食料生産に関係するのか?
【コラム】運輸エネルギーをまかなえたとして、雇用をどうする?
●第5章 混迷する世界と食料安全保障
おわりに

一部に食糧の根幹である米や小麦といった穀物の価格は安くて、副食といえる野菜の方が高く売れる経済構造とかも触れている。が、重要なのは、現在の農業は機械化された耕作と化学肥料で成り立っていることだろう。それらは石油なしに動かないし製造できない。では有機農業ならよいかというと、実は有機肥料の多くは石油がなければ作れないという現実にぶつかる。また堆肥の元になる糞尿や生ゴミも輸入餌や輸入食品なしには圧倒的に量が足りない。

私も、かつて有機肥料に関して調べたことがあって、その構造には気付いていた。だいたい、有機肥料そのものが輸入品が多いのだ。魚粉とか骨粉、海藻、油粕、そして落ち葉まで輸入している。その物資輸送に石油を使っている事実に目をつぶってはいけない。ついでにいうと、海外から持ち込めば微生物レベルの外来種も入ってくることになる。それが作物の病原菌になることも有り得る。いや、いつか人類にも感染するかもしれない。
その点は拙著『虚構の森』でも、ウルシノキの病気を例に植物のパンデミックを紹介している。

私が注目したのは、再生可能エネルギーのエネルギー密度の問題。太陽光も風力も、極めてエネルギー密度が低く、そこで生み出す電気を貯める蓄電池の性能も、石油に敵わない。単純に比較したら、リチウム電池はガソリンの5・6%だという。

そしてバイオマス発電でも、日本の森の年間成長量1億立方メートルを全部費やすと、化石燃料の6・6日分。全森林を燃料にしても、0・9年分にしかならない。

こうしたエネルギーの視点から林業を見てもよいかもしれない。絶対に赤字だから(笑)。木材使うよりプラスチック使う方が気候変動を防ぐかもよ。

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コメント

農水省不要論になるかもしれませんが

自給率よりは10年分備蓄したほうが安い、
これは40年以上前から日下公人がいっている。

エネルギーも10年分備蓄は実は可能ではなかろうか。備蓄量についたはかなり少なくいっておいたほうが侵略をまねかなくていいのだが。

カロリー自給率を上げるより、とっとと備蓄する方がコストはかかりませんね。
現在は食品ロスが半分ぐらいあるから、食料危機が訪れた時は、その分を消費したら、自給率は2倍になる。
一方で本書で江戸時代の農業すれば3000万人くらいの食料を国内生産できるとしていますが、当時は身長も体重も今より低くて消費カロリーはかな低かった。今の体格の日本人に食わせることを思えば、3分の2ぐらいしか生きていけないかもしれない。

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