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森と林業の本

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2022/11/02

森のようちえんと林業

北海道巡業をしていた期間、実は静岡の富士山麓で森のようちえん全国交流フォーラムが開かれていた。

私が各地で話したのは、森林認証制度とフィンランドの森、そして木育に関してなのだが、終えてから飛び込んできた情報が「奈良県に森のようちえん認証制度」ができたことだった。

正確には、「奈良っ子はぐくみ自然保育認証制度」

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森のようちえんは、今のところ無認可の保育のため、行政からは何の援助もない。そのため経営的には厳しい点が多々あるのだが、そこで一定の基準を満たす(森のようちえん運営の)団体を認定して、そこには自治体が助成金を出そうというものである。

これまで鳥取県や長野県、広島県、滋賀県……にあったはず。そこに奈良県も加わったわけだ。認定基準や助成内容はそれぞれ違うのだが、奈良県は全国5番目というわけだ。その内容は、私もまだ精査して読み込んでいないが、悪くない。

もともと奈良には、絶対に新しい試みは先んじてやらないという県是? みたいなものがある(笑)県民性なのだが、それを他県が始めた制度を見て善し悪しを確認してからより良いものをつくる、という発想かと思えば、今回もその流れに乗ったのかもしれない。いや全国で5番目というのは早い方だ。

驚くのは、できたかと思えば、11月1日から受け付けを開始したこと。来年度からではなく、即申請できるというのは、行政組織としてはすごくない? こんな早業をみせるなんて。奈良県ではまだ2校しかないが、これを弾みとして増える気配。

札幌の「木育ファミリーの大人の木育講座」で私が話したのは、フィンランド林業の虚実だった。日本と違ってフィンランドの林業は成功している。にもかかわらず森はボロボロになりつつある。なぜか、ということを突き詰めると、やはり人間の問題に目を向けざるを得ない。成功したがゆえの暴走が、森を痛めつけるのだ。暴走をなぜ止められないのか。

絶望の日本林業を語る際、絶望を多少とも払拭するには、小手先の政策変更ではなく、子どもの世代から自然に対する目を養う必要があるのではないか、というのが私の認識だ。とはいえ、単に子どもを森で遊ばせ、木のおもちゃを与えたらいいとは思わない。それだけで森を愛し自然を守るようになるかと言えば、全然そんなことはない。むしろ森を破壊することへの躊躇を弱める気がする。もっと森への洞察力と想像力を高めて、因果を感覚的に理解しなければならない。

森のようちえんに、その役割を果たしてくれないか、と期待している。

そういえば講座でも少し触れた恒続林だが、奈良県は、すでに知事が「奈良県の林業は恒続林を基本とする」なんて発言してしまったので、現場は「聞いてないよ~」状態で、焦りつつ(混交林化や木材生産方法の)技術を確立しようと試行錯誤を重ねている。だから技術も未確定なのに、と否定的な声もある。が、私はそれでよいと思っている。

恒続林施業は林業技術ではない。山林ごとに気候や地形、地質、そして経済状況まで絡んで、各々に適切な方法を見つけねばならない。だから恒続林は思想や理念であって、技術としてのマニュアル化は無理となる。あくまで奈良に合う恒続林技術が必要だ。

「森をなくさずに維持してがら木材生産を持続的に行い、むしろ自然度を上げる」方法は林業地ごと恒続林を見つけるべきだろう。実際、小規模皆伐や人工植栽だって認めており、施業技術に制限はほとんどない。

必要なのは人材だ。森を見る目を持ち、何より森を愛している人。それを育てることからスタートしないと絶望は続く。

 

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