Twitterで奈良県メガソーラー問題について連投しました。まとめ。なお字数制限などで書けなかった部分をプラス蛇足も。
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奈良県平群町のメガソーラー問題。住民と県の面談が行われると聞いたので、私は「見学」に行ってきた。部外者の私は「参加」ではなく、あくまでオブザーバー的に聞くだけである。その時点では、取材とも言えない、両者の雰囲気を知っておこうという気持ちだった。話し合いは2~3時間ぐらいかな。終わればどこに飲みに行くかな、という呑気な気分だった。だが、まさか。結果的に昼の2時から深夜12時超えまで。10時間以上も続き、仰天の風景を目にすることになる。
県側の出席者は、水循環・森林・景観環境部次長と、森と人の共生推進課の森林保全係。なぜ長引いたのか。とにかく県側が塩対応だったことに尽きる。だいたい問いかけに対して無言なのだ。文書も出さない。それでは意見交換にさえならないではないか。疑問に対してだけでなく、矛盾や明らかな法令違反の指摘に対しても無言。そして今までどおり進めるの一辺倒。これでは打ち切れない。
そもそもメガソーラー建設は、1年半前に計画に不備があったとして知事が工事を差し止めた。
奈良県が止めたメガソーラー計画の現場から見えてきたもの
それが今年9月に、急に再開のための計画変更申請が出された。おかしい。何も改善されていないのに……という内容の問題もさることながら、最大の仰天は、業者の申請書類がまともにそろっていないこと。それでも受理した? 審議を進めている? 書類一式が揃わなければ受理しないのはイロハのイ。これで、お役所の仕事か?
とくに仰天の中でも問題なのは、必要な排水に関する「河川協議」の書類がないこと。河川管理者(県や平群町)と業者は、事前に協議して林地から流れだす水の量などを点検する。その内容を知りたいと市民団体側が情報開示請求をすると、10月時点まで存在しないことがわかる。その点を問いただすと「今はある」という。では、いつ添付されたのか。ところが日付を教えない。だいたい9月時点ではなかったのに、なぜ受理したのか。もはやこの時点で県は違反していることになる。書類がないのに1カ月間審査していたのか。そもそも本当に協議は行われたのか。
また工事で分水嶺を変更することも林地開発では違反行為。ところが6haの林地の地形改変で、そこに降る水の流下方向を変えている。これ、かなりヤバい。分水嶺は変えてはならないのは国の指針でも基本だ。川の下流の流量が変化してしまうからである。それは水利権にも関わる。だが、地元農家などの水利権者の了解も取り付けていないようだ。歴史的に水利権は、簡単に動かせるものではない。
さらにびっくりなのは、平群町に出された河川の流速の計算式(3年確率降雨)が間違っていた。集水域の面積はヘクタールなのに平方キロメートルで計算していたのだ。計算をやり直した結果、8割の地点で流速がオーバーしNGとなる。秒速6~8メートルで流れる地点もある。これは土石流の速度を上回る。河川は住宅地の中も流れるのだから、水害が危惧されるが、その点を指摘しても県側は無言。
住民説明会も開いていない。説明会開催は審査条件でもある。だが県は、業者側の開いた(住民のほとんどに告知せず?)という主張を鵜呑みにしている。また業者側に出した質問に対する回答も出ていない。ほかにも細かな問題点は山ほどあるが、県担当者はとにかく塩対応と無言を貫き通す。知事の意見を聞いてくれという最後のお願いも拒否。
私は、いったん工事を止めた知事が心変わりして推進しているのかと疑っていたが、どうも知事には伝えずに動いているように感じた。知事は記者会見で、住民説明会は県が主導して開かせると発言していた。ところが、県は業者に働きかけていないのだ。つまり知事の指示も無視しているわけだ。ちなみに林地開発の手続き的には、23日開催の森林審議会が過ぎれば事実上の審査は終わる。では審議会で開発を認められないと委員が言えば止まるかと言えば、そんな権限はないという。通過儀礼なのだ。びっくり。
びっくりしすぎて、気軽な「見学」気分が吹っ飛んだ。もともと私は県はメガソーラー開発に消極的で、業者が申請してきたから仕方なく受けているのかと思っていた。だが、今回の「見学」では、県側担当者には何がなんでも通すという意志を感じ取れた。よほどの政治的利権的な圧力?がかかっているのか。しかし、説明できない点については無言を貫き、それ以外では他人事発言が相次いだ。
とくに耳に残るのは課員の「~じゃないですかぁ~」だ。(業者ができるというんだから)「それでいいんじゃないですかぁ~」。(書類がそろっていなくても)「最後に揃えばいいんじゃないですかぁ~」(水害の恐れも)「調整池つくればいいんじゃないですかぁ~」とへらへら笑いながらいう。自分がこの部署に就く前の交渉経緯は「私は知らない」。次長も、自分が申請書類を受け取ったんじゃないから「(書類が足りないのは)知らなかった」。当事者意識が全然ない。では誰が受け取ったのかと聞いたら無言。
私はというと、ひたすら聞くだけで、10時間座っているのも辛かった。まあ、口を開いたら爆発しかねないけど(笑)。いや、実はつい口を開いてしまったところがある。最後に「住民説明会を開いてくれと住民が言っていることを知事に伝えてくれ」といった時も無言が続いたので、「なんなら私が伝えましょうか」と言ってしまったのだ。部外者の私にそんなことされたら面目丸つぶれだから、それは困る、私から伝える……と返事しないかなと思ったのだ。それで終わらせようよ(だって10時間だよ!)という心理もあったのだが、やはり無言だった。私の方は無言でいることに疲れていたのだが、次長は無言でも疲れないらしい。結果的に「明日、上司(部長)と相談します」だったが、翌朝、速攻で知事には伝えないと連絡してきたそうだ。
私は、県と住民の話し合いとは、カンカンガクガクの議論をするか、意外と和やかな雰囲気なのか……と想像しつつの「見学」だったが、まったく違った。役人はとにかく言質を取られないことが最大の対応で、形だけの手続きを進めるのが結論なのだ。だから証拠の残る文書による見解は出さない。業者への指導も口頭で文書にしないという。公務における文書主義の真っ向からの否定だろう。また林野庁や環境省などの見解も示された(住民代表は、わざわざ霞が関まで行って、平群町案件に対する見解を聞き取ってきたそうである。)が、無視する覚悟のようだ。中央官庁もなめられている。すごいね、知事も国の見解も無視して進める事業。
ちなみに森と人の共生推進課は、私にとってもっとも関係の深い県の部署である。森林の新条例(新たな森林環境管理制度)づくりの際に私は委員として関わったから、課員には知り合いも多いし、飲み歩いたこともある。そして奈良県の森林のより良き未来を語り合ったのである。意見が違っても、最終的な結論が私の考え方と違うようになっても、それはそれ。納得してきた。
だが、今回の件は、内容以前の県の対応の問題、姿勢の問題だ。私も戦闘モードに入るよ。
思いついた。次回の私の著作のタイトルは『絶望の奈良県庁』だ!

道路から見た建設予定地
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