等方性大断面部材って何?
トレンドはグリーンイノベーションだが、NEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構で新たな建材開発が謳われている。
「グリーンイノベーション基金事業/食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発」
ここの研究開発項目には、
1、高機能バイオ炭等の供給・利用技術の確立
2、高層建築物等の木造化に資する等方性大断面部材の開発
3、ブルーカーボンを推進するための海藻バンク整備技術の開発
と並ぶ。気になるのが2番目の「等方性大断面部材」である。いっとくが、この言葉の意味はわかるのよ。どちらの方向から力をかけても同じ強度を保つ部材ということだ。木材は繊維方向には強いが横からの圧力や引っ張り力には弱い。それをなんとかしよう、ということだろう。
しかしだね。そうした建築材料として開発されたのが、まずは合板であり、CLTではないのか。そしてDLTやNLT、MPPである。
知ってるかな? 合板の説明はいらないだろうが、丸太から剥き取ったベニヤ板を方向を変えて貼り合わせることで大断面をつくったもの。
CLTはベニヤ板ではなく、分厚い板(ラミナ)を直交させながら張り合わせたもの。
DLTは接着剤ではなくダボで、NLTは釘でラミナを固定したものだ。
そしてMPPは、超厚物合板。ベニヤ板を貼り合わせるものの、厚さを8センチ以上にする。
みんな、私はすでに紹介してきた。これらをまとめてマス・ティンバーと呼ぶが、どれも等方性大断面部材になる(DLTとNLTは等方でないものもある)。
それなのに、また新たなマスティンバーを開発するの? なぜ? CLTが役立たずだから?
一応、説明では「従来とは異なる層構成を持つ合板の試作を重ね、国産材を原料する支点間距離8m、耐火2時間の等方性大断面部材を開発する。また、その等方性大断面部材を商用生産するため、厚剥き可能なロータリーレース製造、短時間乾燥、選別、面内接着、積層接着等の工程を効率的に実行するための要素技術開発を行う。合板の製造技術をベースにした新しい木質材料「等方性大断面部材」の開発がグリーンイノベーション基金を活用して行われる。「等方性大断面部材」は、長さと幅の両方向からの荷重に強い特性を持つ世界初の木質材料で、工期の短縮化や設計・意匠の自由度拡大など多くのメリットをもたらすと見込まれている。2030年度までに社会実装(実用化)して、高層建築物等の木造化などに利用していくことが計画されている。」とある。
説明では、MPPに近いかな。でも、アメリカでは実用化しているものを改めて研究して「世界初」を謳えまい。平行でも直交でもなく、斜めにでも貼り合わせる?そうだ、寄せ木細工なんて どうだろう。
近頃、木造の高層ビル建設が世界中でブームになっているが、現行の建築部材ではイマイチの部分があるのかね。
三井不動産の高さ70メートル、17階建て木造ビル。今年着工予定。
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