「森林破壊に関係する商品販売禁止」法
世界の動き、メモ。
森林を破壊して作られた商品の販売は禁止する……ある国がそう宣言すると聞けば、どう感じるだろう。なんだか夢物語みたいで、「極端だなあ、無理でしょ」と思うのではなかろうか。だが、本気だよ、EUは。
「森林破壊に関係する商品販売禁止」法が成立したのである。具体的には、EUは森林破壊リスクのある農産物や畜産物などのサプライチェーンに規制をかける法律だ。森林を伐採した土地で生産される農産品やその加工品はEU域内に輸入できなくなる。EUを脱退したイギリスも、実はEUより先に法案を成立させた。現在は細則を練っている最中だというが、施行されたら、世界中に大きな影響を与えるだろう。
品目は、カカオ・コーヒー・パーム油・大豆・畜牛・木材の6品目。欧州議会は、さらに天然ゴムやトウモロコシなどを対象に含めて規制強化するよう求めた。
気付かれただろうか。木材が入っているのだ。つまり、森林を破壊して収穫した木材は輸入しなくなる。判定の方法は、サプライチェーン全体で森林破壊に関するデューデリジェンスを企業に求める。産物の生産地の位置情報や生産日、法令順守などを確認したうえで、衛星画像との照合などを通じて森林伐採や荒廃によって生産された農産品でないことの証明を義務付けられる。
対象となりそうなのは、やはり南米やアフリカ、東南アジアだろう。アマゾンを切り開いてダイズ畑やトウモロコシ畑、牧場をつくった大豆、トウモロコシ飼料、そして牛肉も輸入禁止。熱帯雨林をオイルパーム農場にしたヤシ油や、カカオを使ったチョコレートも輸入禁止。
ヨーロッパが木材輸入を止めたら、日本はその分を輸入できるんじゃね? と浅ましいことは考えないように。どうせ、時間をかけて世界標準になるのだから。批判が集中して、日本の商品だって対象になるだろう。
さて、どうする? 日本では誰も論じていないような気がする。
地平線までアブラヤシの続く農園。マレーシアのサラワク州にて。これは対象になるかな。
« 森林林業の棚の本を行方 | トップページ | 凶の年始め撮影は »
「政策・行政関係」カテゴリの記事
- 木材のトランプ関税(2025.04.17)
- 「里山広葉樹の利活用」に向けた提言とやら(2025.04.20)
- 林野庁「森林林業の現状」分析を楽しむ(2025.03.28)
- 林業機械に林業3原則を植え付けろ!(2025.03.10)
- モクレポに見る木材輸入額推移(2025.03.03)
おっ!面白くなってきましたね。日本の企業もグリーンウォッシュ、SDGsウォッシュではもう世界では戦えなくなりますよ。森林認証が最低限のスタンダードになりそうです。森林破壊に繋がる形だけで、採算が合うわけのない皆伐再造林ウォッシュを推進している林野庁…どうするんだ?
変革はいつも海を越えてやって来るのですね。これから始まる輸入材の大放出を含め、面白くなってきました。
投稿: 山のオヤジ | 2023/01/29 22:25
クリーンウッド法なんて、森林認証制度を潰すためのウォッシュでしょうね。国産材は関係ないという思い込みも恐ろしい。
でも、いつかボロが出る。自分が関わっている間は大丈夫だバレない、と思っているのだろうけど。
投稿: 田中淳夫 | 2023/01/30 00:24