サバとスギ
最近、焼きサバが食べたいと思ったときに頭に浮かぶのは「ノルウェー産はないかな」ということ。もはや国産サバよりノルウェー産サバの方が大きくて美味しいようなイメージになっている。同じことはサケでも思う。ノルウェー産アトランティックサーモンが美味い。
そして国内漁業では、サンマやサケが記録的不漁が続く。イカも獲れないらしい。というわけで、漁業について調べてみた。
まずイワシやサバ類、カツオ、スケトウダラなどの漁獲量は堅調のようだ。すべての魚種が獲れないわけではない。
ところが農水省の用途別出荷量調査によると、イワシの「生鮮食用向け」は、14.1%にすぎない。「魚油・飼肥料向け」が40.8%で最も多く、次いで「養殖用または漁業用餌料向け」が34.4%となっている。(2022年10月)
サバの「生鮮食用向け」は13.8%と低く、「養殖用または漁業用餌料向け」が45.3%、缶詰用が27.6%。
これだけ低いとはびっくりなのだが、実は「イワシとサバの生鮮食用向け」は、冷凍して海外へ輸出されている量も少なくないのだという。アフリカ南部の国では、日本のサバが家庭料理として好まれているらしい。そして日本は、ノルウェー産サバを輸入しているわけだ。ちなみに魚介類の自給率は2021年度が59%。これは養殖も入る。
小さなイワシやサバは魚市場では買い手が付かず、缶詰原料や冷凍加工品に回す。魚価は安くなる。そこで漁師は、たくさん水揚げすることに血眼になる。安い魚価を量でカバーしようというわけか。でも資源が枯渇して、もはや量も獲れなくなってきた。
国内水揚げ魚類は小さくて味もイマイチで、価格は安い……このイメージがついてしまったか。
ところで漁業のサバと似ているのが、林業のスギだ。
国産材のは中でもスギは、今や建築材や家具用材にはならず、合板やバイオマス燃料のように安い用途ばかりになっている。高く売れる建築や家具用の木材は輸入に頼る。だって品質が違うもの。ノルウェー産の魚の方が美味いと思うのと一緒だ。
一方で林業家は、材価が安いから大量伐採して日銭を稼ごうとする。まあ、そのうち資源は枯渇して伐る山がなくなるかもしれないけれど。ただ雑木ばかりが太る。それを森林飽和と呼ぶ。ただ雑木を高級材として使う頭はなく、またバイオマス燃料用か。イワシやサバを飼料に回すように。水産業と林業は似ていると言われるが、双子のようだ。(ただし、漁業の方が一歩先を行く。)
年初から、暗い話題を振っておきました(笑)。
魚市場のセリの様子は見ていて楽しいんだけどねえ。
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