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森と林業と田舎の本

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2023/02/19

択伐と保持林業

日経新聞(2月17日)に、「保持林業」の記事。

人工林に広葉樹残し生物保全 山浦悠一氏

ちょっと抜粋すると、

森林を伐採する際、生態系保全のために樹木を残す「保持林業」である。

スウェーデンでは1ヘクタールあたり樹木を10本残すのが森林認証の要件で、すべての伐採地で保持林業が採用されている。日本は戦後造成した針葉樹人工林が伐採されて、再び単一樹種の苗木が植えられる。仕立てられる林は個性を失い均一化・単純化し、生物多様性が乏しくなる。しかし人工林でも、広葉樹が混交すると多様な生物が生息することも分かってきた。

そこで私たちは、北海道中部の道有林で大規模な実験を行った。樹木の残し方が異なる6通りの方法で人工林を伐採し、7年間にわたり鳥類を調査した。その結果、伐採前の調査では均一な針葉樹人工林に少量でも広葉樹が混じると鳥類が大幅に増えた。伐採後の調査から、広葉樹を少量でも残すと鳥類の減少率が小さくなった。

私たちは林業の盛んな高知県でも同様の取り組みを始めた。まずはスウェーデン型の1ヘクタールあたり10本が林業事業体にとって受け入れられやすいと考えた。30メートル四方に1本を目安に高木性の広葉樹を伐採時に残すことを目指している。

筆者は森林総研の研究員で、この記事は「私見卓見」という投稿のようだ。

ちなみに伐採地に木を残す手法としては、択伐がある。保持林業との違いは、一つに残す木の量と残す基準があるだろう。同じ伐採を目的としても、伐る木を選ぶ択伐とは発想が違う。そもそも保持林業は皆伐を基本として、その中でも少しでも自然を保全し回復を早める手法である。

私としては、保持林業が最良とは思えない(1haで残すのは10本だけか……)が、全面皆伐、一本残らず伐採に比べたらずっとよい。

もう一つ気に止めたのは、保持林業の実験を北海道でやっていることは知っていたが、高知でもやっているという点だ。

ちなみに静岡でもやっている林業家がいる。ただし、本人は保持林業なんて言葉を使わず(知らず)、自分なりのよい森づくりを模索した結果として行き着いた方法だそうである。広葉樹のほか、少し大木も残す。皆伐を条件に補助金を受け取っているのに、残したら補助金が出ないかもしれないと心配しつつ、それは覚悟の上と言っていた。こうして自分なりに信念を持って施業法を考えている林業家はいいなあ、と思う。

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フィンランド 虚像の森』を監訳する時も,「択伐」という言葉とは別に、「持続的成長管理型森林伐採」とか「持続的森林成長皆伐」なんて直訳が出てきた。このままではわけわからん。悩んだが、前者は前後の文章からドイツやスイスの方式を真似てやったというので「恒続林」と訳し、後者は皆伐とあるので「保持林業」と訳した。スウェーデンでは保持林業が進んでいることを知っていたから、フィンランドでも保持林業やるだろ、と考えたのである。

ともあれ、少しでも生態系的によりよい森がつくれる伐採方法を模索してほしい。択伐でも保持林業でも、恒続林でも何でもよい。どれを選ぶかは林業家自身が考え模索すべきことだ。

 

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

私自身、林業は営んでおりませんが、静岡県在住・在勤のため、静岡県で保持林業のような独自の取組をされている林業家がいらっしゃるとのこと、大変興味深いです。この林業家について、何か知れる記事なり、情報源がありましたらメールにて教えていただくことはできませんでしょうか。

今の日本(皆伐して造林しなきゃいけない病))に受け入れられる限界本数が10本/ha程度っていうのもある気がします。あまり多いと植栽木は育たないですし、とはいえもっと少なくすれば保持する意味もなくなるでしょうし。もちろんもっと多く残して大きなギャップにだけ植栽(それも正方植えとかじゃなく群状で)とかきめ細やかな施業ができれば良いのですが、それは多分現場に受け入れてもらえないので妥協点として10本/haにした、と邪推してしまいます

静岡の例は天龍林業地です。先に記事になったとは聞いていません。私が知らないだけか。

1㌶10本というのは、スウェーデンの例に倣っただけかと思いますが、ギリギリの本数でしょうね。あくまで皆伐-一斉造林が基本だろうから。
ただ残すのは広葉樹が多いようですから、ある程度残す木はかたまっているのではないかと(写真のように)思います。

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