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森と林業の本

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2023/02/11

『戦国日本の生態系』から浮かぶ林業

戦国日本の生態系(エコシステム)~庶民の生存戦略を復元する』(高木久史緒 講談社選書メチエ)を読む。

これは、戦国時代の庶民の生業の研究書。舞台は現在の福井、越前だ。戦国時代のこの地域は、朝倉一族の支配地だったが信長に滅ぼされて柴田勝家の支配に移った。さらに丹羽長秀と代わる。この頃の政令や裁判記録から住民たちの生きざまを浮かび上がらせている。著者の高木氏は、大阪経済大学教授で同大学日本経済史研究所所長。

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目次はこんな具合。

はじめに たくさんの「久三郎たち」の歴史
序章 生存戦略、生態系、生業――越前国極西部
第一章 山森林の恵みと生業ポートフォリオ――越知山
山森林の生態系の恵みと多様な生産/資源分配をめぐるせめぎあい/柴田勝家と森林史の近世化
第二章 「海あり山村」の生存戦略――越前海岸
生業は海岸部だけで完結しているか/海の生態系のさまざまな恵みと技術革新/行政権力が生業技術を求める
第三章 工業も生態系の恵み――越前焼
大量生産化と資源分配―考古学的知見が語る生産戦略/売る、組織整備、新アイテム――記録が語る生産戦略と近世への助走
第四章 戦国ロジスティクス――干飯浦と西街道敦賀
馬借たちの生存戦略と競争/水運業者たちの生存戦略と広域的な経済構造
終章 「久三郎たち」の歴史、ふたたび
凡例
参考文献

越前には海も川もあるが、このなかで森を扱った第1章は、林業の歴史を考えるにおいても、なかなか示唆に富む。

ここで細かく解説するつもりはないが、私が面白く感じたところは、信仰の対象となっている山の木も無断でどんどん切る庶民(^o^)。神木も伐採を阻止できないらしい。
納税記録からは、木材ばかりではなく、漆にススキ、そしてスギ皮が大きかったらしい。ちなみに檜皮という記載があるものの、当地にヒノキは分布していないからである。そうか、檜皮と書かれていても、必ずしもヒノキの樹皮とはいえないのか。

そしてスギの分布にしても、もともと生えていたというよりは人間が持ち込んで植樹して増やしたようだ。ヒノキは雪と湿潤の気候ゆえ根付かなかったが、スギは適していたわけか。

そして柴田勝家が秀吉に破れて、丹羽長秀が入国するのだが、そこで出した文書には木の苗を植えるよう命じている。これが。1583年なのだ。
かなり早い時期から植林による森づくり、つまり育成林業が始まっていたことを示す。今のところ、吉野や天龍などに古い植林記録があるが、それに近い頃に福井でも育成林業がスタートしていた?

……という風に見ていくと、さまざまな発見があった。

ほかに4章のロジスティックにも木材が絡んでくる。

林業とは何か、という原点から考えてみるにはなかなか役に立つよ。

 

 

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コメント

当時の木材は山城の素材であったり、槍や弓、矢の原料などなど、軍事用にも多用されていたはずなので、木材資源には敏感だったのかもしれませんね。土方歳三が矢の材料としてヤダケを植えたように(これは違うか)

タケの分布も人間が広げたようですよ。
戦国時代に限らず、木材は軍需物資なんですね。だから領主は勝手に伐られることを嫌う。でも、庶民は、負けずに盗伐する(^o^)。

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