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森と林業の本

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2023/02/04

朝拝式のサカキ

明日は川上村の朝拝式に参列させていただくつもりである。

調べてみると、前回に参列したのは、2013年。つまり10年ぶりということだ。果たして、変わったところはあるだろうか。まあ、560年以上も変わらぬ続けてきた儀式ではあるのだが。(一般人の参列を解禁したのは16年前、だったかな?)

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そこで重要な植物を紹介しておこう。サカキの葉。本当の列席者、つまり筋目の人には、これが欠かせない。何に使うか。

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このように口に加えるのである。何のためか。

声を発しないように。単に黙るという意味ではなく、この儀式のことは外に漏らすな、という口止めの意味があったようだ。そこにサカキの葉を使うのだそう。

ちなみにサカキは榊と書く通り、神様の樹だが、なぜそうなったのかわからない。常緑葉であることは関係していると思うが。神と人との境にある木だからサカキというのだが、ではなぜサカキが?という疑問の答えにならない。むしろ、神棚に祭る植物を「サカキ」と呼んだという説の方が納得しやすい。

つまり、地方によって「サカキ」の指す植物が違っていた。たとえば東日本にはあまり生えていないからヒサカキやツバキ、クスであった。カヤもそうかもしれない。そして、スギを「サカキ」とする地域もあるそうだ。そう、スギもサカキ、神の木なのか!
ちなみにサカキはマサカキともいうのは、そうしたほかの「サカキ」と区別するためだろう。

ちなみに奈良の春日大社では、境内に生えるナギをサカキの代わりに使う……と言われる。だから春日大社のナギは天然記念物だとガイドブックにも書かれている。

が、真っ赤な嘘、というか間違いなのである。たしかに天然記念物の指定を受けているが、それは自然分布から離れて純林を形成しているから。神聖な木だからではない。私は、春日大社に取材に行って、「重要な儀式はサカキを使いますよ」と言われた。ナギは、日常的に使う神具なのだそうだ。いわば、身近にあるからサカキの代わりに普段は使っておこう、という位置づけ。

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春日大社のナギの葉

やはりサカキは神聖なのか……と言いたくなるが、現在世間に出回るのは中国産ばかりである。今や国産サカキが珍しくなった。でも、川上村ではサカキを生産している。またコウヤマキもお寺用に栽培しているところもある。スギだけではないのだ。これも森の資源である。

 

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コメント

すでに確認しているかもしれませんがこんな説があるようです 

https://nihonsinwa.com/page/898.html

たしかに日本神話でスサノオノミコトの体毛から出来たとされる木は「スギ」「ヒノキ」「クスノキ」「マキ」といずれも有用な常緑樹なのに、神事に使うような木なのにサカキが記載されてないことを考えると、余り物説もありえるかなと思ってしまいます

サカキは常緑樹全般を指す、には、なるほど~と思ったのですが、ほかに使い道がないとは! これは辛いなあ(笑)。

ちなみに春日大社の神職(役職を記すと誰か特定されがちなので)の話としては「身近にある木の葉を使った」そうです。かつてはサカキが繁茂していたのではないでしょうか。春日大社だけは、たまたまナギが植えられたところにシカがいたので、ほかの木の葉は食べられてしまった、そしてナギが繁茂した……とか。

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