木馬の再現実験をした頃
『山林王』出版記念に、本づくりの過程で探し出した写真を紹介しているのだが、そこで木馬を取り上げた。木の橇に丸太を積んで、橇が滑るように横木を並べた木馬道を曳く搬出方法だ。今は全国どこにもないと思われる。
その中で、京都府亀山市の山だったと思うが、私は木馬の再現実験に参加したことがある。正確に言えば、私はお邪魔虫の取材であるが。
木馬の復元、木馬道の新設、そして実際の木馬曳き。また川に丸太を落として流す、筏を作って流すまでやった。また木馬とは別に筏流しも再現実験をしている。など、わりとみっちり工程を目にすることができた。
実験の際に、私も木馬の横木を並べたりと手伝ったが、実際に曳いてみたところ、びくともしなかった。それなのに70歳を超えた経験者(木馬再現の技術指導もした林業家)が曳くと、するする動く。これは力だけでなくコツがあるのだ。動かすときに揺すって摩擦を減らして一気に曳くそうである。
ところで、これらの実験を行ったのは2011年の冬。とくに木馬が完成して曳いてみたのは3月13日だった。つまり丸12年前。
その2日前に東日本大震災が起きて、前日には福島第一原発第1号機が爆発した。私は、そのシーンを目にして、東日本壊滅を意識したのを覚えている。脳のどこかが白くなったような気がした。避難民は西日本に殺到するだろうな、日本全体も経済的に破綻する。どうすべきか? そんなことまで考えた。その後、建屋の爆発は水蒸気爆発であって、原子炉格納容器はまだ無事だろう、という解説があって、多少ホッとした。しかし、いずれにしても日本のダメージは大きい。そして、その後連続して2、3、4号機も爆発した……。
……そんな最中、早くから予定していたからではあるが、木馬の再現と木馬曳きをしていたのである(´Д`)。。。
それから12年。原発再稼働を進める現政権は、当時の緊迫感を忘れられるのだなあ。
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