読まずに書く「マザーツリー」論
「マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険」という本が売れているようだ。
私は読んでいないが、内容はだいたい知っている、つもりになっている(^^;)。まあ、テレビや雑誌、ネットでも多く紹介されているからね。そこで読まずに評論するという無茶に挑んでみる。(こんなアホな真似ができるのは、自分の趣味のブログだからだ。公的な文章として書いたら大馬鹿野郎になってしまうよ。)
まず、内容の胆となっているのは、森の木々は菌根のネットワークでつながれているという指摘だろう。これも、すでに多くの研究が出ているので意外感はない。大いに賛同する。この場合、樹木の根が先か、菌根が先かという疑問はあるのだが。この点は共進化ということにして納得しておこう。なにしろ読んでいないからね。。。
私がもっとも気になるのは、なぜタイトルをマザーツリーしたのか、という点だ。マザーツリーと言えば、偉大なる母なる樹を指すだろう。そうした巨木を中心に森林生態系が成り立っているという話なのか。なにしろ読んでいないのでわからない(^^;)。が、そんな前提より、多種多様な生命体の共生がテーマではないのか。異種同士が助け合うことに知性を発達させて、森全体が一つの生命体である……少し前のガイヤ理論を発達させたかのよう。そういや映画「アバター」でも、マザーツリーと言える巨木があり、生命体はみなつながっている(アクセスできる)というのが前提の世界観だった。こうした「中心となる母なるもの」は一部の人には感動を与えるよう。
たしかに巨木があると、その陰に守られて生きる生物がいたり、また巨木のもたらす恵み(果実や樹液など)を求める動物も少なくない。
だが生態系は、むしろ様々な大きさ、樹種、性格の違う生命体の集まりと思った方がよくないか。菌糸はそれらを仲立ちしているが、それは上下関係ではなく並列につながる関係だろう。巨木は必ずしも必要ないはずだ。巨木は土の養分や光を大量に奪うから、周辺の若木にとっては成長の障害になることもあると思う。まあ、老害だね(^^;)。そんなことは書いていないとは思うが、読んでいないのでわからない。
それとも、菌根ネットワークこそがマザーツリーという見立てなのだろうか。いやいや著者が女性だから、著者そのものがマザーツリーを演じているのか。わからん。なにしろ読んでいないからね……。
ただ、森林の生物多様性が、より重要であるということを主張しているようだ。同じものばかりが並ぶのではなく、多種多様な生物……樹木に草に昆虫に動物、そして菌類。また細菌やウイルスも加えるべきだろう。そして、それらがお互い助け合うことでより高次元な生態系を作っているし、それが知性を生み出すということを書いているらしい。なにしろ読んでいないので詳しいことはわからないのだが、そうであるなら、余計にマザーツリーは必要ないのではないか。
とはいえ、きっといい本だよ。人々が森林を見る目をガラリと変えたと言われている。ただ思うに、一般の人にとって、そんなにショックだったろうか。木と木は認識し合い、助け合っているのよ、なんて擬人化したスピリチュアルな説明の方が深く考えずに納得できる。そして、ああやっぱり!としっくり来るのではないか。だからヒットしたのかもしれない。
むしろ単体の動物や植物の研究者とか、役に立つ植物の部分(木材、果実、樹液、葉……)だけを扱ってきた林業人の方が、「多様な種」が大切と言われることにショックなのではないか。読んでいないからわからないけど。
ところで、こんな論文もある。「わずかな広葉樹の大きな役割 —人工林内の広葉樹の保持は効率的に鳥類を保全する—」
これは森と鳥類にスポットを当てているが、北海道で、トドマツ林で皆伐区、ヘクタールあたり10本の広葉樹を残す少量保持区、50本残す中量保持区、100本残す大量保持区を設定して実験を行っている。そして鳥類の数と種類を蝶さしたところ、針葉樹人工林でも、わずかに広葉樹を残すだけで、鳥類の生息はずっと増えるという結論に達している。つまり多様性が大事ということ。
まあ、読まずに書くというのは妄想みたいなものだが、さて、本書の内容からは的外れかな? 意外や……?
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