古紙回収から知る価格決定要素
なじみの古紙回収のおっちゃんがいて、いつも出すときに世間話をする。
今回は、古紙の扱い方とお値段について聞く。
新聞紙と広告チラシは分けた方がいいの?
「これ、後から分けているんだよ。昔は持ち込んだ古紙の引き取り先が分けていたんだけど、いまはこっちでやれって」
なんか、世知辛くなっているようだ。でも、やっぱり広告チラシの方が高くて、新聞紙は安いから分けないと値段がつかないのだろうな。
「今は新聞紙の方が高いよ。広告チラシは半値」。
えっ、これは驚いた。もともとチラシの方が高いと聞いていたのだけど、普通に考えてもチラシ用のコート紙などは紙としての品質も高いパルプを多く使っているはずだ。新聞紙はリグニンも抜いていないクラフトパルプである。それなのに……。
「一時期、新聞紙がキロ4円、チラシが2円になって、さすがに食えない、もうやめだってなったけど、元締めが値段が元にもどるまでと10万円の貸し付けをしてくれたんだ。さもないと収集する人がいなくなっちゃうからね。今は、新聞紙で11円」
なんで、そんな値段が逆転してしまったのか。
「結局、流通の問題なのよ。チラシはだぶついて新聞紙は足りない状態だから。すると新聞紙の方が高くなる」
これは、目からうろこだ。そうか、ものの価値は需要と供給のバランスで決まり、それを流通が左右しているのだ。素材の品質だけで価格は決まらない。どんなに優秀でもだぶつけば下落する。品質が悪くても欲する人が多ければ価格は上がる。紙だけではない。すべての商品の基本だ。
意外とこの事実に気付かない人が多いのではなかろうか。「こんなにいい品なのに、安すぎる」と文句いうケースをよく目にする。それに流通コストを忘れてもいけない。ペットボトル1本の中に含まれる飲料の価値は、1、2円だ。ジュースとか茶など、実はたいして高くない。しかし、ペットボトルはもちろん飲料を詰めて封印する機械や場所、そして輸送コストなどが入る。実はその後に売れ残る量も計算して、その分を上乗せする。全部合わせて1本当たりの値段が決まる。
気になって、古紙の価格推移を調べてみた。すると、新聞紙の価格が高騰していた。その理由は韓国で品不足のためらしい。なんと、日本の新聞紙は韓国に輸出されているのだ。しかし、4月から下落する恐れが強いとか。高値を呼べば、大量に集まり、それがだぶつくと下落する。なんとも経済学の基礎のような話。
思えばウッドショックも同じだろう。高騰したかと思えば下落し始め、そこにウクライナショックも加わってまた高止まり。木材だけでなくロシアのパルプが入ってこない国は紙価が暴騰しているらしい。
古紙回収も楽じゃない。かつて25円まで暴騰したときは、トラック一杯持っていったら札束が縦に立ったそうだ。ざっと数百万円か。その頃は、電車に入場券で乗って、網棚の新聞を集めて回ったという。「もう、あんな時代は来ないだろうなあ」というが、さて。
しかし新聞の講読数が激減しているのだから、徐々に回収量も減るのは間違いない。すると業者が成り立たなくなって一斉廃業。そうなると再生紙業界全体が破綻する。ボランティアなどで集めていてはダメなのだ。
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