バイオマス白書2023年版が公表
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)による「バイオマス白書2023」が完成しサイト版が公表された。
バイオマス白書2023 サイト版
ぜひ目を通すべし。
簡単に紹介すると、「はじめに」が、バイオマス発電の終わりの始まり? である。ちょっと抜き書きすると、
新しいものにチャレンジする際に失敗はつきものだが、着手前から無理があるとわかっている事業が、これまでも多数行われてきた。税金が投入されるのであれば、不適切な資金の使い方に対する責任は追及されるべきだと考えられる。
ヨーロッパでは再生可能エネルギー目標達成に向け、導入しやすいバイオマスが増加し、森林への圧力を高めていた。欧州委員会のシンクタンク、JRCのレポートは1.2億トンの木材が出所不明、と指摘しており、違法伐採木材などの事例が環境団体から告発されていた。
経済産業省は燃料種ごとのバイオマス発電燃料の温室効果ガス規定値を提示したが、輸入木質ペレットによる発電は、化石燃料による発電の30%以上を排出する(トピックス1 図2)。これは国際エネルギー機関(IEA)が提唱するパリ協定の目標達成のために必要とする電力一単位あたりの排出量(SDシナリオ)の2倍以上である。つまり輸入木質バイオマス発電では、パリ協定の目標を達成できないのである。
ちょっと聞き慣れない言葉もあった。
1. FIT/FIP制度の概要
2022年度から、売電収入に「プレミアム(補助金)」を上乗せした金額が売電事業者に支払われるフィード・イン・プレミアム(FIP)制度が開始された。また、FIT制度が認められる区分・規模においても地域活用要件が課せられるようになった。
2023年度から、一般木質バイオマス発電の区分は2,000kW~1万kWの規模ではFIPのみとなり、2024年度からは50kW以上の規模でFIPが選択可能となる。
なんと、FIT以上にプレミアム補助金が支払われるのだそう (@_@)。泥棒に追い銭か。
自慢ではないが、私は20年以上前からバイオマス発電のCO2削減効果は極めて薄く成り立たないと指摘してきた。それは論理的に合わない、という意味であったが、今や論理も何も、違法行為のオンパレコードで、むしろCO2の排出量を増やしながら進行している。そして、そこに税金が注ぎ込まれ、業者は大儲けしている有様だ。結局、短期的に業者だけが儲けて、実際にはCO2をまき散らし、自然も破壊して将来を潰している。
同じく批判が広がりだしたメガソーラーや風力発電は、問題はいろいろあるにしても、FITの切れる20年後もメンテナンスさえしていれば稼働し続ける。つまり発電できる。しかしバイオマス発電は、FITが切れた途端に燃料価格と売電価格が釣り合わなくなり、確実に行き詰まる。おそらく業者は発電プラントを捨てるだろう。廃墟として放置されるか、解体して鉄屑になるか。あるいは稼働を止めないように自治体などが際限なく補助金を注ぎ込み続けるか。(もちろん、CO2の排出量を増やしながら。)
こんなグラフも掲載されていた。
私はカスケード利用の廃材以外のバイオマス利用は悪だと思っている。それも熱利用であり、発電なんぞは馬鹿げている。一体、現在の日本でどれほどの廃材が出るか。まったく大雑把な試算だが、せいぜい年間20万~30万立方メートルではないか。そのうち輸送エネルギーコストが引き合うのは何分の1か。つまりバイオマス発電所としては1、2基動かすのが精一杯の量しかバイオマスはないはずだ。それなのに。
かろうじて、脱炭素に意味あるかな、と思わせるのは、バイオ炭ぐらいか。これはバイオマスによって作られた炭、つまり木炭などを燃やすのではなく、土壌改良材などとして農地に漉き込むことである。土壌と混ざれば、その木炭は半永久的に炭素を固定したままとなる。もちろん農業にも貢献する。4パーミル・イニシアティブという考え方もある。
ご参考に。
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