EUの森林破壊防止法
欧州議会、つまりEUが、森林破壊防止法を承認したというニュースが流れた。この法律を知っているだろうか。
実は、かなり前から動きを把握していて、本気?やる気? と注目していたのだ。同時に懐疑的でもあった。できるのだろうか、と。
森林破壊防止法とは、何も違法木材対策ではない。森林破壊に関係した農林畜産物など産品のEU域内への輸入を禁止するというものだ。それが各国の法律に合致していて合法だとしても。
EUに販売する商品は、2020年以降に森林を破壊して、あるいは森林を破壊した土地で栽培されたものでないことを証明および「検証可能な」情報の提出を義務付けるというものだ。違反すれば罰金が科せられる恐れがある。
何を意味しているのか。まず知っておきたいのは、森林破壊は地球温暖化につながる温室効果ガス(主にCO2)排出の約1割を占めると計算が出ていることだ。そして森林破壊の約80%は農業生産拡大のための土地転換が原因とWWFは指摘している。だから世界的な森林破壊の原因をつくっている産物の輸入を止めるというのが目的なのだ。
EUは、貿易に関連する森林破壊の16%を占める。ちなみに中国は24%、米国は7%、日本は5%の責任がある。これを止める、つまり森林破壊を止めるために、EUは域内で販売されるさまざまな生活必需品から森林破壊の要因を排除すると決めたのだ。
具体的には、どんな商品を対象とするか。並べてみるとドキッとする。大豆、牛肉、パーム油、ココア、コーヒー、ゴム、木材、木炭、革製品、チョコレート、家具である。これが世界貿易にどれほどの意味を持つか考えてほしい。人口4億5000万人の巨大市場EUのバイニンクパワー、購買力は、馬鹿にならない。それを圧力に変えたのである。おそらく対象国の多くはアジア、アフリカだ。南米も入るだろうか。それらの国に森林保全というよりは脱炭素を迫るというわけだ。
ちなみに発動まではまだ少しある。今後、加盟国の批准を経ないと正式に成立しない。また施行した場合、順守に向け大企業に18カ月、中小企業には24カ月の猶予期間を与えるとしている。ただし、パーム油輸出国のインドネシアとマレーシアは批判している。EU向け輸出を停止する可能性まで示唆した。しかし欧州委員会は2011年以降に結んだ通商協定には環境や労働基準に関わる国際条約の批准を義務付ける条項を盛り込んでおり、今年6月には相手国が条項に違反した場合には貿易制裁措置を講じるとの新方針を示している。
EUは「持続可能な開発という理念」を輸出しようとしているとさえ言えよう。
さて、日本はどうだろう。違法木材対策さえいい加減なのに、さらに追及されかねない。それなりに日本の食品はEUに輸出されているし、木材だって自慢できる代物ではない。もしかしたらEUだけでなく世界標準になるかもしれない。
クリーンウッド法の改正でも、付帯決議で木材利用の拡大を入れている。国産材は違法じゃないから、なんだそうである。
ほんまかいな。
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