『山林王』秘話。苛烈な自由民権運動
朝ドラ「らんまん」では、自由民権運動に巻き込まれる主人公を描いていた。
実際の牧野富太郎も、運動に参加していたという。さすがに逮捕されることはなかったようだが。しかし、土佐は自由民権運動発祥の地であり、村挙げて参加するところも少なくなかった。
実は私も自由民権運動には多少詳しい。というのも、『山林王』の執筆で自由民権運動は土倉庄三郎に大きな影響を与えたからだ。だから一通りは調べたのである。土倉庄三郎は、新聞発行費用など莫大な金額を寄付しており、「自由民権運動の台所は大和にあり」と呼ばれるまでになる。本人も近畿自由党の会計監督に就くなど幹部であった。
一般に自由民権運動と言えば国会開設が目的だったが、政府がまがりなりにも(10年後という条件をつけて)認めた後に、より過激になる。国会そのものよりも政府の横暴に対抗する運動となり、それが労働運動や階級闘争、そして朝鮮革命運動にも広がって各々が過激化・非合法化していく。自由党は、今でいう過激派となった。
教科書的には、福島事件とか加波山事件、秩父事件などが有名だが、ほかにも大小さまざまな事件が勃発している。
対して政府は、これはドラマでもあったが、とにかく集会を開くだけ、演説するだけでも逮捕した。新聞も即刻発行停止にする。ビラをまいても逮捕、参加しても逮捕だ。
そして庄三郎も、警察に連行されている。これが逮捕なのか、取り調べなのか、参考人なのか、レベルはわからないが、警察に睨まれていたようである。容疑は、群馬事件の首謀者宮部襄を隠匿したことだ。
この群馬事件、本当は天皇の乗った列車を襲撃して人質に取る計画だった。(ただ天皇が来るのは延期になったため警察署を襲うことに変更したが、賛同した農民が襲って焼討したのは金貸しの家だけだった。)その首謀者が関西に逃げてきて、庄三郎とどこかでつながったらしい。
ほかにも朝鮮に武器弾薬を送って革命を起こす計画の大阪事件に参加していた景山英子にも援助していたし、朝鮮侵攻計画に出資するよう懇願されている(これは断った)。でも、中心人物の金玉均とは仲がよく、川上村の屋敷に匿っていた時期もある。
この手の運動に関わったのだから庄三郎も、若いころはなかなか過激だったのだ……と思ったが、当時の年は40代である。若いとは言えないな。
詳しくは『山林王』を読んでほしいが、自由民権運動が明治の世の中に与えた影響は、想像以上に大きいように思う。
« 久しぶりに「切り株の上の生態系」 | トップページ | 気分転換に古書市 »
「取材・執筆・講演」カテゴリの記事
- ウェッジに「実は日本は木工王国…」を書いた裏事情(2024.09.12)
- 本を読む順番を廃棄本で考える(2024.09.05)
- Y!ニュース「米不足!ウッドショックから見える…」を書いた裏側(2024.08.26)
- Y!ニュース「CO2吸収力が強いのは、原生林より人工林!」書いた裏事情(2024.08.21)
- 今年の米は不作か?(2024.08.19)
コメント