まだ続く「聞き書き甲子園」
林野庁、水産庁共催の「聞き書き甲子園」がまた今年も始まったようだ。
22回というからには、22年も続いているのか。これまでの成り行きを知らない人もいるだろうから、ごく簡単に説明する。
もともとは林野庁と文科省ほか外郭団体で実行委員会をつくり、「森の聞き書き甲子園」と呼んでいた。森の名手・名人100人を選んで顕彰し、その人たちに高校生が聞き書きして、その技を記録する、という趣旨だった。ここで名手とか名人と呼ぶのは、森の技術に長けた人。たとえば伐採とか枝打ち、スギの種取り、といった林業技術から炭焼き、マツタケ、漆掻き、養蜂、木彫り、藁細工……とまあ、森や木材を相手にした職人芸である。
おそらく当初は、この名人の顕彰が目的だった。そこに高校生を通しての伝承と若者の教育といった目標も加えたのだろう。しかし毎年100人ともなると、だんだん名人がいなくなる(笑)。そこで水産庁も巻き込んで、海や川の名人も含めだす。
しかし、そこそこ裏側の事情を知る身としては、名人を推薦するように言われた都道府県も困ってしまう。最初の数年間は、どの人を選ぼう、こちらをえらんでこちらは外すと揉めるからどうのこうの。来年は必ず推薦しますよ、的な話だったのが、もはや推薦する人がいなくなる。
私の知っている人の中には、経験1、2年じゃないの? という人もいる。また師匠を裏切って飛び出した人もいて、この人を名人というなら師匠はどうなる? 的な人もいる。
結局、これまで2000人以上、今年も含めると2200人を超すわけか。もはや名人顕彰を忘れて、高校生の教育目標に第一次産業者が突き合わせられている感がないではない。どうせなら町の人も加えて、旋盤一筋35年!とか、トラック運転24時、いっそ私は300人を看取りました、宇宙飛行士めざして、なんて名人も入れたらいいね。いや、今風にAI研究者とかゲーム制作者だって喜ばれるだろう。
すでに第一次産業から離れたのだから、林野庁がやらないでもいいと思うけどね。だらだよ止め時を失っているのは、まさにお役所仕事ぽい。
ちなみに「聞き書き」とは、聞き取り役の意見は入れずに、聞いたまま記録をとること。オーラルヒストリーと言えば、民俗学などの調査手法にもなる。マスコミでも取材仕事の第一歩でもある。質問はするが、答えはすべて相手任せ。雑誌取材の場合のデータマンに近い。結局、自分を出さないように見えて自分の興味を紛れ込ませる仕事(笑)。私も新人時代はやったけどね。
ちなみに私は、録音しない。ノートもとらない、という独自の手法(笑)で行う。だって面倒なんだもの。聞いて大切なことは覚えてるだろ、忘れるのは必要ないことだろ、と開き直っている。せいぜい固有名詞や数字などをメモとる程度。聞き書きには向いていないなあ。
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