実は津山では仕事もしていてヾ(- -;)、それは講演だったのだけど、内容の一部に「混交林は木の成長がよい」という話をした。
すると終わってから質問が出て、「どれぐらい?」と聞かれる。その場で数値的回答はできなかったのだが、気になったので、その後のセミナー中に検索。以前読んだ論文を見つけ出す。
「science」に昨年掲載されたドイツ人の論文であった。
ま、難しい点は抜きにして言えば、世界中の225の単純林と混交林の記録を精査して、複数の種を含む森林プランテーションが単一栽培よりも生産性が高いかどうかを確認した、というもの。
結果として、「平均樹高、胸高直径、地上現存量は、単一種林分と比較して複数種林分の方がそれぞれ5.4、6.8、25.5%高かった。」というのだ。最後の現存量(バイオマス量)で言えば、混交させていると25%も生産量が多くなったことになる。樹高も直径も混交林の方が5~6%大きくなったというのだから、凄くない?
細かな条件などは論文を読んでいただいて確認してほしいし、また精査は研究者に任せる。私もよくわからない部分はいっぱいある。
もっとわかりやすい説明を探すと、こうしたブログサイトがあった。まさに混交林についての研究を記している。
Fores-Try 森林研究の最前線⑦~独り勝ち?チームワーク?混交林と生産性~
ここで、なぜ混交林の方が成長がよいのか説明されている。
そのメカニズムには、樹種の「個人プレー」と「チームプレー」があるという。
まずたくさん種類があれば、成長のよい優秀な種もある。それが大きく成長する。これが個人プレー。
一方で、「チームプレー」には植物同士の「助け合い」と「すみ分け」、植物以外の生物との「仲介」の3要素があるそうだ。植物同士が養分などを分け合って助け合う効果のほか、あるいはそれぞれ適応しやすい場所に棲み分けたら成長がよくなる効果、そして各種が分散混在していることによる病虫害などの蔓延を防げることで生産性の上がる仲介効果。
なお混交林が常に成長力があるのではなく、林齢が影響するそうである。フィンランドのケースでは、「樹木が若いときは単純林の方が成長が良く,逆に,樹齢20年ごろになると混交林の方が樹木の成長が良くなる」ようだ。
よくわからないけど、論文のこんな図も載せておこう。
科学的な意味は専門家に任すとして、林業技術的にもパラダイムの転換になりそうな話である。
なぜなら、従来の林業は植物間の「競争」に人為を入れて制御する発想で施業していた。一斉に同樹種を植えて、植えた苗木だけを成長させようとする。そこで植えた樹種以外の草木を人為的に取り除く「下刈り」や「除伐」を行う。次に、次に植えた木同士の競争に人間が介入して、より大きく育てたい個体(将来木)を選んで、それ以外を伐る「(保育)間伐」を行った。
つまり競争相手を除くことで、望む種・個体だけを大きく、早く、育てようという発想だ。そこには異種・同種ともに競争相手と栄養や光などを取り合えば、上手く育たないと考えがある。ついでに言えば病害虫も、原因の微生物や虫類を退治しようとする。
しかし、混交林の方が成長がよいという事実に向き合うと、下手な競争への介入は、成長を遅らせることになりかねない。それぞれの異種の草木を共生させ、また同種でも並んで生えることで助け合う可能性があるのだ。これまでの施業は、大間違いだった?
とはいえ、人が利用できない(というより利用するつもりのない)草木がいくら成長しても役に立たないから、多少の誘導は必要だろう。植えたスギやヒノキを優占させつつ、ほかの木々、草も残す施業法を考えて取るべきかもしれない。
そういや雑草制御法として私も試した「全部取り除かない」、雑草の高さだけを制御して植えた種(花や果実目的)を育てる方法と考え方は一緒だ。ツル植物などヤクザ植物への対処法としては、ツルは地面を這わせてマルチにするのがよいのかもしれない。ならば、造林地の雑木や雑草も、植えたスギやヒノキ苗より高さを抑えておくだけで、残してよいことになる。その方が病害虫や風水害に強く、栄養を融通し合って早く育つ可能性がある。また雑木と呼ぶ広葉樹も太く高く育てば立派な収穫物になるから、スギ・ヒノキと少し離した場所で成長させる。草も商品化は可能だろう。
育つ速さだけでなく、リスクマネージメントにもなるし、低コスト施業にもなる。そして今風に言えば炭素固定と生物多様性の増大化が図れる。
スギが優越しているものの、多くの広葉樹や草が生える森。
こうした林業のパラダイム転換を図れないか。明治以降、続いてきた造林-下刈り-除伐-間伐の作業を一から見直すのだ。
「競争」介入法は農作物など短期間栽培には役立つかもしれないが、林業のような長期育成を必要とする場合は、「共生」「共存」「混在」理論に基づく施業に取り入れるべきかもしれない。
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