森林から見た、北米と東南アジアの相似性
北アメリカの森林と東南アジアの森林が似ている、と言ったら、誰もが怪訝な顔をするだろう。きっぱり否定されるかもしれない。
なにしろ、かたや亜寒帯針葉樹林で、かたや広葉樹主体の熱帯雨林。気候も樹種も違う。お国柄だって違うから、当然森林行政も違う。
だが、そう感じたのは、まずこの記事。
今年に入って既に4万6000平方キロ近くが焼失。中部と北西部で厳しい状況が続いており、国内416カ所で火災が継続し、うち203カ所は「制御不能」とされる。消火できないから、「夏いっぱい続くのではないか」と警告も出ている。
すでにテレビニュースでもやっているから知っているだろうが、ニューヨークの空もカナダの山火事の煙でくすんでおり、見通しが悪いどころか健康に悪影響を与えるほどだという。
ただ、私は30年近く前に、ボルネオからマレー半島で同じことを経験しているのだ。隣国インドネシアのスマトラ島などの熱帯雨林が焼けていたからである。これは焼き畑の飛び火とか、アブラヤシ・プランテーションを開くための放火とも言われるが、伐採時にもよく火が出るらしい。その煙でクアラルンプールも煙かった。またボルネオでも飛び火らしく焼けたジャングルを歩いている。
いや森林火災だけではない。違法伐採と言えば発展途上国、のイメージが強いが、北米では毎年10億ドルの樹木が盗伐されていると最近知った。アメリカの公共地(国有林・州有林)で伐採された木の10本に1本が盗伐だというのだ。
そういや日本が購入しているバイオマス発電のペレット燃料も、合法か違法か知らないが、丸ごと皆伐して森林破壊丸出しだ。
フィンランドなど北欧も、合法だとしてもひどい皆伐が行われているのは、すでに昨年の『フィンランド 虚像の森』で紹介したが、先進国だなんだと言ってもやっていることは同じじゃねえか、というのが私の感想。
もちろん日本もそうだ。盗伐に関しては、もっと酷いかもしれない。なにしろ東南アジアや北米の盗伐は、価値の高い木 もしくはもっとも高く売れる部分(いわゆる銘木)部分を伐って持ち出すものが多い。だから盗伐があった森も、見たところ木々が繁っているのである。森の奥で数本伐られたという状態。その点、日本は丸ごと森を伐って木を全部持っていく。
ただし、日本の盗伐額はアメリカよりずっと低いだろう。木の値段が安いから。森の中の価値の高い木を数本伐るアメリカや東南アジアと、何ヘクタールの森を全部伐ってもバイオマス燃料のよう捨て値で売る日本ではなあ。
林業も、森林火災も、盗伐もお国柄が出るだって?
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