再造林ビジネスの狙いは何?
たまにミョーな依頼が来る。
このほどあったのは、再造林のビジネス化についての聞き取りだったのだが……聞き取りを専門とする業者がいて、そこに私への依頼があったわけだ。だから具体的なビジネス主体は誰かわからない(申込時点では秘匿されている)。というのも、途中で御破算になったからである。
ただ、最初の説明からすると、どうやらビジネス主体は林業に素人のようだ。にもかかわらず、再造林ビジネスへの参入を考えているらしい。儲かる、という判断というか仮説を立てたらしい。林業界では再造林は儲からない、労的にも経費的にも引き合わないという判断が一般的だと思うのだが、正反対に考え、あえて参入しようとビジネスプランを立てようとしている。
儲かるという判断は、どうも補助金が入るからようだ。
まあ、私が「造林補助金がいくら出ても、業界も山主もやりたがりませんぜ」(もっと口調は礼儀正しい)と言ったから御破算になったのかもしれないが、部外者からすると、林業界の補助金は垂涎の的らしい。
もちろん、私が紹介した某森林組合のように、再造林100%のところもある。そして再造林に伴う5年間の事業を請け負って儲けている。それを成り立たせるには、いろいろ仕掛けが必要なのだが、それを理解したわけではなさそうだ。
そこで、ちょっと再造林について林野庁はどう考えているか調べてみた。
そうすると「再造林ガイドライン」的なものが5年前に都道府県宛に林野庁森林整備部整備課長から出ている。具体的には、伐採と地拵え・造林を同時にやりなさい、という一貫システムの推奨のようだ。そして補助金のスキームまで紹介している。5パターンある。
気になるのは、再造林が進まない理由をどのように捉えているか。
山元立木価格の低迷から森林所有者の施業意欲が減退しており、森林所有者が伐採事業者に立木を販売し主伐が行われた後に、再度、造林に投資し林業経営を継続していくことを望まないケースも見られるようになっている。
まあ、わかるんだけどねえ。一般にもそう言われているんだけどねえ。
私がイマイチ納得しがたいのは、造林補助金は、国だけでも7割以上、そこに都道府県や市町村の補助まで足せば、8~9割はすでに出ているんじゃないの、ということだ。まさに再造林ビジネスに参入したくなる構造である。だが、現実はあまり再造林が進まない。
再造林したくない理由は、もっと別のところにあるのではないか、というのが私の仮説である。
残り1~2割を出し惜しんでいるからなのか。それとも再造林してまた50~60年も待つのがイヤなのか。その頃には自分は生きていなくて、林業事業の後継者がいないからかもしれない。補助金の申請や請負業者を見つけて依頼するのが面倒くさい、そもそも林業界が嫌い、興味ない、という可能性だってある。
どうなんだろうね。
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