EUの森林破壊規制と盗伐市場
先日、「欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考」という(長いタイトルの)セミナーをオンラインで受講した。講師は、籾井まりさん・ディープグリーンコンサルティング代表。
テーマは、日本のクリーンウッド法が改正されることになったのに合わせて、EUで起きている動きとして、EU木材規則(EUTR)から「森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則 」(EUDR)へと移行というか進化しようとしていること。日本ではEU森林破壊防止法と呼ばれているかと思う。
これまでのEUTRは、違法伐採木材の取引を取り締まってきたが、それでは足りないとして、より森林破壊を引き起こす産物の取引規制をめざしたものだ。ここでは相手国にとって合法かどうかではなく、これらの産物のため森林を破壊していないことを証明しなければならない。森林認証を受けていても、自ら確認しなければならないという。具体的には木材や木製家具のほか、大豆やパーム油、牛肉、コーヒー、カカオ、ゴム……までが対象となる。
日本のクリーンウッド法なんて、EU木材規則の足元にも及ばない、中身のないブルシット(くそどうでもよい)法律だった。任意の登録制で罰則もないのだから。それを多少改正して義務化へ向かうことになった(それでもクソだが)ものの、EUはさらに先へと進んでいるのである。
それでもセミナーを聞いていると、必ずしもEUの規制が万全なわけではなく、抜け道もある(グレーな場合はリスク緩和措置を設けるとOK)ようだが、日本はいまだに「違法木材」を禁止せず、合法木材を使いましょうね、と呼びかけているレベル(違法木材とわかっても輸入してOKです!と林野庁は法改正の説明会で連呼していた模様)なのに対して、その意識の差は大きすぎる。
ただ私は、セミナーで「結局、国産材使えば大丈夫でしょ」なんて声が出たのに驚愕した。日本で違法木材がないとでも思ってるの?
私は、盗伐はもちろん、提出した伐採計画に記してある再造林を無視しているケースも違法だと捉えているが、そういう意識がないらしい。私に言えば、日本は世界に冠たる違法木材大国ですよ。
どうも違法木材は、だいたい発展途上国で行われるもので、欧米や日本は国内ではしっかり持続的な林業を行い、違法木材問題とは問題のある木材を輸入することだとでも思っているのか?
アメリカやカナダでも盗伐が深刻化している。年間10億ドルの木材が違法に伐採されているというデータもあるのだ。それも、直径3㍍級、高さ50㍍級の大木が狙われている。アメリカの公共地の伐採される木の10本のうちの1本が盗伐だという推定もある。世界全体では、違法木材市場は推定1570億ドル、20兆円以上だ。
こうした盗伐などを取り締まるのは取引規制だけでは限界ではないかと思える。
さらに言えば、イギリスでは「生物多様性ネットゲイン」政策が進められている。これは開発(森林伐採だけでなく、住宅や道路などの建設も含む)際に、元からの自然より増やす(ネットゲイン)ことが義務づけられたものだ。事業ごとに生物多様性を10%純増させる目標が環境法に明文化されている。移行期間を経た2023年11月からは必須となる。違法だとか合法のレベルではなく、より開発前より自然を増やすことが求められているのだ。
どうやら日本の木材製品をヨーロッパに輸出することは難しくなりそう。ともあれ、時代の意識は先へと進む。日本は……まあ、後ろからついて行く? 行ける?のかな。
アメリカのレッドウッド国立公園でかつて行われていた伐採
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