『樹盗』書評の裏事情その2~取り締まり
先に『樹盗』の書評を書いたことを記した際に裏事情!と付けたのはよかったのだが、なぜかタイトルに「その1」を足してしまった。
多分、気分的には1回で終わらないほど書きたいことがあるぞ、という意味なんだろうが、書いた私自身が忘れていた……。
改めて「その2」を書こうと思ったのだが、気になる情報としては、DNAによる盗伐木の特定である。そんな技術があるのか!
最初は押収された(盗伐のある疑いの)木材片からDNAを採取し、盗伐された切り株から採取したDNAと照合するという技術だったのが、押収した木材の生えていた場所をDNAから特定することができるようになったという。そのためには膨大なデータベースが必要だろうが、盗伐されるのが国立公園など広大な林野だから、ある程度特定できたら、そこは禁伐地とわかるのだろう。
さらに木材に含まれる化学物質を同定することで化学分析による樹種特定の手法も編み出したとある。ともあれ、そのためのラボを民間で設立して運営しているらしい。そうした所にも金が出ることも日本とは違う。
盗伐される前の取り締まりも、森の中で伐採されそうな木(直径の太いもの、瘤パールのあるものなど)の周りに幾台もの自動撮影カメラをセットしたり、林床に磁気式センサーを隠して、盗伐者が現れたら警報が届くような装置も開発している。犯人特定に対する取組が並々ならないのだ。対応は、国立公園のレンジャー、フォレスターらしい。
アメリカだから、犯人も武装している可能性がある。銃を持つ相手と立ち向かうのだからレンジャーたちも必死だ。
日本に盗伐取り締まりはないに等しい……。
と書評原稿に書いていたが、編集部からクレームが来た。日本にもクリーンウッド法などができて、それなりに盗伐を止めようとしているじゃない、と。私は激しく反論し、このクリーンウッド法がいかに骨抜きというか抜け道を最初から用意してあるフェイク法制であること、そもそも促進法、理解増進法であって何の罰則もなく、キャンペーンみたいなものであり、取り締まりは事実上ゼロであることを。
と説明して、ようやく納得させたのであった。そこでクリーンウッド法の恐ろしさを私は感じたよ。とりあえず「法律」があれば、日本人は守るだろう、抑止効果があるだろう、と世間は思い込ませることができるのだ。それがこの法律をつくった目的であったか!
実際、つくったのは東京オリンピック直前で、五輪施設には認証材を使うという原則をごまかすために大急ぎで拵えた法律だ。世界の目を欺くのが最初から目的だったのだろう。
そして日本には、アメリカやカナダのような意欲的なレンジャーもいないのだ。とりあえず犯罪行為ということで矢面に立つのは警察だが、被害届さえ受理しない(受理したら捜査をしなくてはならなくなるから嫌がるのだろう)。受理しても立件しない。立件しても検察が不起訴にしたり、差し戻す。みんな仕事が大嫌いなのである。結局、裁判では刑事事件に持ち込みにくく民事になるが、何千本もの盗伐があっても取り上げるのは数十本。だから有罪となっても十数万円の罰金。これならやり得!
アメリカでも、盗伐の摘発は法律的にはハードルが高く、また有罪になっても罪は軽いと記されている。それでもレンジャーたちは挑み続ける。日本は最初から逃げ腰だ。
……ああ、「その2」も、やっぱり書くのは本のことではなく、日本の盗伐問題になってしまった。
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おはようございます!千葉から海老原です。【樹盗】その2シェアします。
宮崎県盗伐被害者の会会長海老原。副会長志水。事務局長伊豆(宮崎市議会議員)。大分県支部長小串。現在盗伐被害者166世帯(氷山の一角)。
海老原裕美 080 6409 8538
志水恵子 080 1793 6886
伊豆康久 090 5943 8133
小串康 070 5816 3161
投稿: 海老原裕美 | 2023/08/01 08:35