山林の「縄伸び」の実態は?
ある記録で「0・2ヘクタールの山林を所有していたところ、勝手に伐採された」、つまり盗伐されたという事例が紹介されていた。
まったく腹立たしいのであるが、そこで気になったのが「その土地には200本のスギが植えられていた。林齢は少なくても50年以上」という記述だ。
50年、60年のスギとなると、直径30センチ前後にはなる。それが200本。一方で0・2ヘクタールというのは、20アール。言い換えると200メートル×10メートルとか50メートル×40メートルの面積だ。そこに200本?
ちょっと密になる。密すぎるのではないか? 幹直径30センチの木が3メートル間隔で生えていたら、220本くらいになる。もう少し詰めねばならない。そもそも植林時には、苗をその数倍植えているはずだ。 結構、厳しいように思える。
そこで気付いた。0・2ヘクタールというのは登記簿上の面積なのだ。おそらく斜面だろう。山林の斜度にもよるが、山林面積は斜面の実測では水平の1・5倍ぐらいは珍しくない。それに縄伸び、つまり登記上の面積は過少に申告さるのが当たり前で、それが常態となっている。実際の面積は登記簿より広い可能性が高い。この現象は、日本国中どこにでも起きている。それなら200本はゆうゆう植えられる。
どれぐらい縄伸びするものか、と事例を探してみた。
するとデカいのがありましたよ。東京の水源林に。
東京大学教授だった本多静六林学博士が、明治30年代に、東京府(当時)の水源林をつくる事業を行ったことがある。その際に、御料林などを含む国有の多摩の森林を台帳面積で669町3反5畝を購入したという。その金額は6782円だったという。この価格は、当時の山林価格を参考に面積で計算して決めたものである。
ところが購入後、実際の面積は8200余町歩だったことが判明する。台帳面積は、実際の12分の1以下だったのだ。さすがに国(山林局)から後に文句が出たそうだが、本多博士は「ちゃんと申請して了解したのはそちらではないか」と突っぱねた。東京府は大儲けしたことになる。
縄伸びは10倍以上になることも珍しくなかったようだ。さすがに現在は、航空写真もあるし、そこまで行くケースは希だろう。しかし、今でも1ヘクタールの皆伐をした山を見に行って、どう見ても2~3ヘクタールはあると感じたこともある。目測で1辺が200メートルくらいあった。目で見ると伐採された斜面の広がりが視界に入るからだろう。すると、全国の伐採面積も、実態は1・5倍とか2倍と想像してもよいのではないか?
こんな妄想するのも悪くないよ。
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