無料ブログはココログ

森と林業の本

« 「サザエさん」4コマ漫画の 吹き出しコンテスト受賞作 | トップページ | 池の金魚が増えた? »

2023/08/10

価格決定権を生産者に~仏のエガリムⅡ法

世間の物価高が言われる反面、肝心の生産者の純益が増えない問題が指摘されている。安いことが良いこととされ、安く売るために安く買われる。結果として、生産者だけでなく小売事業者さえ利益が出ていない。みんなが損する・あるいは一部の業者が総取りするシステムになっている。

そもそも価格形成のシステムが怪しいのだ。大手・強者中心で価格決定権を握っているから。とくに中小が多く、さらに自然環境にも左右される第1次産業の弱さが指摘される。

木材価格なんて、流通の下流ほど決定権を握っている。ウッドショックでも製材業や建築業は、実は全然損をしていない。伐る経費は補助金に頼るし、森林所有の取り分は製品価格の何%か。。。。コストなんか無視の市場原理に犯されている。

と、言うことを考えていた。

そこに、フランスにおける食品関係の、ちょっと驚く価格決定法が法律になっているケースを知った。
フランスではエガリム法(2018年)を経て、エガリムⅡ 法(2021年)を設けていた。そこでは農業生産コストを考慮した価格形成を行うべく書面契約を義務化し、農業者の報酬保護をしているのだ。

Photo_20230810153301

この法律では、農業者と最初の購入者との間の取引に、農業者から契約書を提示する義務がある。そして、契約書に生産コスト指標を含む価格の自動改定条項が記載され、生産ストの変動を価格に反映していくのである。

生産コスト指標は、認定された専門職業間組織もしくは技術研究機関が公表する。また契約書に、原料農産物コストの変動に応じて契約価格を自動改定条項がある。こうして農産物の生産コストを川下の価格に加味する措置が取られた。

この法律を可能にしたのは、所得向上はコストを償う価格で販売することという当たり前の発想だろう。補助金などで補てんするものではないのだ。
そして交渉のベースとなる生産コストも公表することが肝だ。消費者にも公開することで納得を得られる。今の生活者は、小売店で払った購入価格のうちいくら生産者に渡るのかわからない。適切な価格なのかどうかもわからない。

フランスが実現したのは農産物だけかもしれないが、今後広がりを見せる可能性がある。市場のバイイングパワーに引きずられることへの抵抗が始まるのだ。

仮に木材について行うとしたら、その生産コストは数十年前から記録を残し開示すべきだろう。しかし、そこに環境や防災なども加味して木材価格の決定を行う案も可能ではないか。炭素税も含ませる手もある。

そういえば、(日本の)農林水産省次官が、「どうやったら、多少価格が高くても国産品を買ってもらえるか」と消費者に質問したところ、「コストを開示してほしい」「生産者(の顔)が見えると買う」という声が寄せられたのだとか。日本だって同じということだ。

日本でも生産者から流通過程の各段階で発生したコストを見える化してもらいたい。農作物だけでなく林産物、いや工業製品だってコストを開示する義務があるのではないか。その上での値上げなら納得できるかもしれないし、逆に値下げ要求もできるかもしれない。

価格決定と生産コストをブラックボックスにするから、強欲資本主義がのさばるのだ。ブロックチェーンなども、すべての記録を残すことでインチキできなくしている。同じく、価格形成に必要な情報をすべて開示すれば、誰もが納得の価格が決められる。

価格決定権を万民のものに! (なんだかアジテーターみたいだな。。。)

« 「サザエさん」4コマ漫画の 吹き出しコンテスト受賞作 | トップページ | 池の金魚が増えた? »

森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 「サザエさん」4コマ漫画の 吹き出しコンテスト受賞作 | トップページ | 池の金魚が増えた? »

January 2025
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

森と筆者の関連リンク先