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森と林業の本

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2023/09/18

効果的炭素固定法を考える~木炭

地球沸騰時代。今年の夏は異常に暑かった。いや過去形ではない、今も暑い。実は先週の熱海~韮山界隈に滞在していたときがもっとも暑く感じた。熱中症を心配するほど。8月より九月中旬の方が暑いって何? 

それにしてもカーボンニュートラル、脱炭素、温暖化ガス削減……さまざまな言い方をされる地球環境問題の解決法。そこにすぐ取り上げられる森林。実際、これらの解決法に森林を活かすことの国際決議(気候変動枠組み条約)がされているのだが、肝心の森林の扱い方には疑問ばかりだ。

何が間伐をしたら森林吸収分を認めるだ、木材使って脱炭素だ。木材は燃やしても理論上は炭素を排出しない? そんなデタラメを言っていて、本当に二酸化炭素排出削減にはならないし、気候変動も止まらない。

多少とも真っ当な思考をできたら有り得ないことぐらいわかるだろう。間伐は木を伐って減らすことだし、木材を建築などに使って蓄積するのも伐った木の体積の3割程度で、それも永久保存ではなく長くても数十年程度で寿命を迎えて廃棄されて二酸化炭素が排出される。燃やせば確実に二酸化炭素を排出する。それと同じ量を吸収できるのはしっかり植林しても数十年後だ。

と、ずっと警告を発していた、というよりがなり続けてきたが、批判ばかりでなく本当に炭素を固定する方法を考えてみた。

そこで思いついたのは、木炭。木炭は、樹木のうちの炭素成分を固めてしまえるし、それは放置しても水に溶けないし細菌・菌類に分解もされない。確実な炭素の固定だ。燃やすといけないが、水分を含ませたらまず燃えない。木炭にして保管すればよいのだ。粉炭でよいから焼き方もそんなに難しくない。無人自動炭焼き窯もある。

そもそも現在の化石燃料は過去の樹木を石炭石油にして固定していたのだから、木炭に近いではないか。また現在の森林が蓄積している炭素の大部分が土壌ということも重要だ。地表の草木の体積なんかの10倍ぐらいの炭素量が土壌に含まれる。腐葉土もあるが、山火事や火山噴火の名残などの炭素もある。

木炭の保管場所には、土壌に入れてしまうのがもっとも合理的だ。土壌の鉱物と地下水位によって安定させられる。

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狙うは農地。土壌に木炭の粉を漉き込んで炭素量を増やせば、土壌改良材として生産能力が向上する期待もできる。木炭は、長く土壌に滞留して透水性や保水性を高めるし、肥料を長く保つ保肥力の向上効果も指摘される。加えて木炭に含まれるミネラル分が、土壌に供給される可能性。そして木炭にある微小の空隙はバクテリアや菌類が住み着く場、バイオリアクターとなりやすい。

農地の生産性を拡大しながら、炭素固定もできるのならもってこいではないか。黒ボク土も、炭が混ざって黒くなっている。

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真砂土の中の黒い点は……。

実は、すでに土壌に入れるべき炭素量が計算されていた。二酸化炭素として大気中に排出される炭素量は、年間で約100億トンと推定されている。そのうち植物の光合成や海水に吸収されるのが約57億トン。残り約43億トンが毎年増えていく計算になるそうだ。これを相殺するには、木炭43億トンを土壌に入れたらよい。

莫大な量に思えるが、実は世界中の土壌に含まれる炭素量は、9000億トンと推計されている。それをほんの少し増やせばよいだけではないか。

フランス政府が2015年のCOP21で提唱した「4パーミル・イニシアティブ」は、土壌の重さの0.4%(4パーミル)分の木炭を毎年土壌に入れましょう、という発想だ。

そうそう、こんな記事もあった。

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農地だけでなく、宅地に埋めたら除湿になる。いや、海に沈めてもよい。水質浄化にもなるではないか。埋め立て工事に使えばどうだろう。炭を地下深くまとめて埋めておけば、もしエネルギー危機になったら、国内の炭鉱として掘り出して使える(笑)。

馬鹿げた補助金をばらまくなら、その金で木材を蒸し焼きして木炭をつくり(その過程の熱で発電でもすればよい)、粉にして農地に漉き込む。

なかなかよいアイデアだと思うなあ。日本では山梨県の果樹園などでやっているそうだ。国を挙げてやれば、安全保障にもなるよ。

 

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

木炭による炭素固定と真逆な方法?

木炭で炭素を固定したら
これと真逆なことをしている?のが
某飲料メーカーの自販機
カルシウムの粉末で自販機周辺の
二酸化炭素を回収
ここに疑問を持った人がいて(それも複数)

"CO2を食べる自販機"を考察する【夏休み自由研究23】
いとをかし太郎さんがnoteで

カルシウムが水酸化カルシウムだとしたら
それは炭酸カルシウムが主成分の山を削って
1度二酸化炭素を飛ばしてから水酸化カルシウムにして
新しくここに二酸化炭素をくっつけて
水酸化カルシウムを作るのに、数日高温状態に
その燃料と二酸化炭素はどうやって


地球環境問題。
重くて難しい問題ですね。
色々なアイデアはあるけれど、それが地球のシステムに受け入れられるか?
(試してみないことには分かりませんが。。。そんな余裕があるのかどうか)
私は根本的な原因を解決しない限り、何をやっても無駄なような気がしてなりません。(悲しい話です。。。)

アマゾンの原住民は土壌改良をほどこしていてテラコッタには陶器破片と炭素がいれられているというはなしがありました。チャールズ・マン『1491』の最後部分だったか。

まったく脱炭素は難しいのです。排出を減らすために、逆にエネルギーを使って排出してしまうケースがありますからね。

でも木炭を埋め込むのは、古典的な土壌改良技術であり、何も難しくないと思いますよ。炭焼きも自燃するし、その熱を人間が利用することもできる。

竹炭もいけそうですね。これだとイネ科だから再生はやいとかないかな。

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