台湾林業の不思議
こんな記事を目にする。
台湾産木材使用の体験施設、台北市内で除幕式 国産材の魅力を発信
台湾産木材をより身近に感じてもらおうと、国産材を使用した体験施設「从森」が台北市内に設置され、22日、除幕式が行われた。来場者は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を通じて、国産材製品の魅力を体験できる。
別にどおってことない、日本でもよくある、ローカルニュースなんだが……台湾で台湾産木材を使って施設をつくることにニュースバリューがあるんだ、という点に目が止まったのだ。
台湾といえばタイワンヒノキなどを思い出して、森の深い山々を想像するのだが……、いや事実、かなりの森林率を誇る(59・18%)のだが、林業は極めて低調だ。ほとんどない、と言ってもよいほど。
台湾で消費する木材の99%が外材だなのである。ある意味、自らの森林は温存してきたということになるだろうか。なぜ、そんな政策を選択したのか。
2017年を「国産材元年」とし、建築物への国産材使用などを促進してきた。27年には国産材自給率5%の達成を目指している。これまでの自給率は0.5%にとどまり、2022年末時点で辛うじて1%超となった。
台湾を日本が領有した際の森林率はわからないが、実はかなりはげ山が多かったことが知られる。玉山、阿里山も、草原が広がっていた。それは原住民が焼き畑をやっていたからという説と、清国時代にひどい伐採をしたからとも言われている。日本も森林資源開発をして、阿里山などかなり伐ったのは事実だが、実は当時、台湾は日本から木材を輸入していた。そして造林を進めている。だから日本が台湾の森林を食いつぶしたという議論は、正確ではない。
戦後、国民党がやってきて、ひどい伐採を続けたらしい。よりはげ山を増やしたのだろう。そうした状態から、再び政策を改めて伐採禁止と、造林推進とともに森林保護策を取るのは、意外と最近の話となる。その政策転換の事情はよく知らない。
ただ林業も縮小したのだろう。近年、ようやく造林木を使えるようになったから林業復活をめざしている。ところが、そこに入ってくるのが、日本の安い木……。日本の木材が、台湾林業を圧迫しているらしい。
今回、台湾産材の建築を誇るところを見ると、台湾産材を本格的に使おうという気運になってきたということかな。
それにしても、写真の施設は、日本の古民家を思わせるな。
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